200話 意識
俺はその記憶に混乱した。
物凄い数の情報が一気に流れ込んできており、それらを処理するのにかなりの時間がかかった。
その間に俺の中のナニカ、モルフィスはかなり移動していたようだ。
俺の体には3つの意識があるようだった。
俺の意識とモルフィスの意識、そしてその2つの意識が混ざったものだ。
途中から俺の考えがおかしくなっていき行動もおかしかったのは2つの意識が混ざった時の事なのだろう。
今はあの謎の箱から流れてきたモルフィスの意識が強く、俺の意識を跳ね除けている状態だ。
だが、それでも完全に混ざった状態の今ではモルフィスが何をしようとしているのかが分かる。
それは、現人神の残党の抹殺、そして教会のみんなの捜索、そしてこの世界の破壊だ。
モルフィスはもう精神的におかしくなっているのか、最大の目的があやふやになってきている。
後悔や自責の念からとりあえずみんな平等に殺さなくてはと思っているようだった。
モルフィスの意識がおかしくなっている以上、俺が俺に対して不利益な方向へ向かってしまうのは確定している。
世界の破壊など俺は願っていない。
陽夏にコナー、そしてゆうちゃんとみんなで仲良く暮らすのを願っているんだ。
その為にも、今は一旦状況を整理しよう。
今何が起こっているかを把握していれば何か行動を起こせるかもしれない。
あれだけの記憶がいきなり流れてきているので、俺も少なくとも混乱はしている。
俺はどういう経緯で今俺の意識は乗っ取られているのか、そして、この謎の箱の正体を知った。
それに隠されていた事実は俺をかなり動揺させている。
この謎の箱は恐らくあのダンジョンと同じ様なものなのだろう。
原理などは分からないが、あのダンジョンはこちらの世界に転移してきた教会のみんなや現人神達なのだろう。
そして、それを探索していくごとにたまに居た人。
あの人達は俺の記憶によればソルとセイラだった。
そして、それを倒していく事に陽夏とコナーはそれぞれに似た能力を獲得していった。
陽夏ならばウェポンマスターであるソルと同じ様に武器を使う能力。
そして、コナーには未来視を手に入れていた。
そして、もう1つ手に入れていたものがある。
それが記憶だ。
2人ともまだはっきりはしていなかったが、俺の事、つまりモルフィスが出ていたり、その行動から2人がソルとセイラの記憶を手に入れていたのが分かる。
ソルはよくモルフィスが仕事をしてる時に遊びに来たりしていたし、セイラはモルフィスの事を盟友と呼んでいた。
この事からダンジョンを進めば能力と記憶が手に入るということが分かる。
つまり、ダンジョンは能力と記憶、そして体の一部をバラバラにしてこちらに送ってきていると考えられる。
そして、俺の持つ謎の箱も開けることによって魔力が手に入る、つまり能力が手に入っている。
夢殺の能力は箱を開けた時にでも手に入っていたのだろう。
ダンジョンの能力はある一定の人にしか獲得出来ないというのも、俺の箱はコナーなどには開かなくなっていたし、あの箱の恩恵を受けられるのは俺だけだったのだろう。
ダンジョンの形が違うのは完成系かプロトタイプかの違いという事だろう。
だが、そうなると1つの疑問が生まれる。
異世界に転移するということはある程度転移した先で動けなくてはならない。
だが、こんな形になってしまえば動く事も出来ない。
俺のように誰かに拾ってもらって開けてもらうのも手の内かもしれないが、最初の方の面倒くささからして俺みたいな超暇を持て余した引きこもりみたいなやつに偶然拾われない限り何処か誰にも目につかないところで一生過ごす事になるだろう。
完成系でそんな様なことをするとは考えられない。
そこで、俺はひとつの事を思い出す。
コナーはあの箱について無限の力があると言っていた。
つまり、魔力が無限に出ているという事だ。
普通そんなことはありえないのだが、多分モルフィスがここに来る機械を使った時の体が原因なんじゃないのかと俺は思っている。
モルフィスが世界を塵に変えたとき、思ったよりも世界を巻き込むのが遅かった。
それは何故かと考えた時、俺はひとつ考えついた。
それは、魔核融合魔法同士がぶつかって更に大きなものになったのではないかという事だ。
魔核融合魔法は普通球状に大きくなっていくため、それ同士がぶつかり合うことはありえない。
だが、俺の知識によると、どうやらあの世界では地球とは真逆で、無限に続く地面の中にぽっかりと空いた穴があの世界なんだそうだ。
重力は地球とは逆になっていて、そのせいで大きくなっていった最終的に魔核融合魔法はぐるっと回って魔核融合魔法同士で衝突、その勢いはどんどん強くなるが、同じ魔法ではあるが無属性、つまり全ての魔法が入り交じった魔法なため、魔法の増幅反応が起こり、その魔法が無限に増えていったのだと思う。
だが、それがどう関係しているのかと言うと、モルフィスの体が塵の状態で存在していたのが原因だと思うのだ。




