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198話 終焉3



身体中が俺の脳とは裏腹に逃げるよう指示する。


しかし、俺はそこから動かない。


動いてはいけないという強い意志を持って俺はそこに立ち止まっていた。


直後、俺の体を嫌な感覚が包んだ。


身体中の細胞の一つ一つが単純なる破壊の意志を持った魔力によって執拗に攻撃されている感覚を覚える。


それは体の表面から内部まで続き、今まで感じたことの無いような耐え難い痛みを生んだ。


しかし、俺は中々死なない。


…………何で死なないんだ?


俺は確実に死ぬはずだ。


俺は確かに物凄く強くなったが、それでも死にはするはずだ。


現に痛みは感じるし、体も欠損する。


日曜の現人神に攻撃された際には動けなくなるまで体が無くなってしまったりもした。


多分あれ以上攻撃されていたら俺はきっと死んでしまっていただろう。


なのに、今それよりも高威力な魔法をくらっているというのに、俺は死なない。


おかしい。


体は動かない、というか体の感覚も無ければ、脳が動いて思考しているという感覚すらない。


なのに俺は今考えられている。


絶対に何かがおかしい。


まさか、死後の世界はこうなっているとでも言うのか?


体は動かせないが、思考だけは出来る。


そんな世界に俺は閉じ込められるということなのか?


思考も出来れば周りの状況も確認できる。


しかし、何も出来ない。


こんな苦痛他に無いはずだ。


ちょうどいい。


俺はびっくりするほど大きな罪を背負っている、この程度では贖罪にもならないかもしれないが、焼け石に水だとしても少しでも償いをしたい。


俺はそんな世界の中、自責の念を感じながら周りを観察し続けた。


周りの速度は明らかに遅くなっているようだ。


俺を覆い尽くす魔核融合魔法の速度が俺の思っている速度よりも明らかに遅い。


俺が発動した時には大体30分程で世界を埋め尽くすはずだったのだが、今はもう1週間はたっている。


しかし、魔法を使った本人だからこそ分かるが、俺の魔法はまだ世界の四分の一にすら到達していない。


しかし、着実に世界は終焉へと近づいているようだった。


地表は全て塵と化し、それ以外に残っているものは無くなるはずだ。


こうなってしまったのだから俺は責任を負う気持ちでそれを見守った。


残っていた建物が、生き物が、人間が、全て塵と化していっていた。


俺の感覚的に一年が経った頃、ようやく俺の魔法は世界を覆い尽くしたようだった。


まぁ、まだこれからだ。


魔核融合魔法は最大限にまで拡がった後、広がった時間に比例してそこに残り続ける。


そのため、今回広がった時間に比例するということは…………途方も無い時間がかかるという訳だ。


しかし、俺は諦めずにそこに存在し続けた。


俺の感覚で10年、20年と時は過ぎ去っていく。


その後、何年経ったのかは分からない。


その頃には俺の精神はとうに崩壊していて、何度も自殺を繰り返そうとするが、身体もなければ何をする事も出来ない俺にはそんなことが出来るはずもなく、結局は消えた世界を眺める事しか出来なかった。


そして、そこから更に途方も無い時間が流れ、遂に俺が使った魔核融合魔法は消えてなくなった。


そんな時、俺の体の感覚が戻った。


初めは何が起こっているのか分からなかったが、徐々に俺の感覚が戻っていくにつれて、単純に嬉しいという感情と、俺だけが生き残ってしまった悲しみ、そして皆への罪悪感が同時に脳へと流れ込んできた。


その瞬間、俺に思考が戻る。


そうやって俺はどんどんと感覚を取り戻していき、遂には体の全機能が戻ってきた。


俺は周りを見渡す。


一面地獄絵図だった。


全ての者が塵となったとしてもその塵が地獄絵図を生み出していたのだ。


それはその土地が元の姿を取ろうとしているのか、分からないが、どこまでも哀れなものだった。


それを見ると、段々と俺の意識が消えかかる。


…………体は戻った訳では無いようだ。


ただただこの塵を生み出したのが俺だったからその塵が俺の形を作っているだけなようだ。


それでも、俺がこの世界で唯一生きているものだ。


だが、もういいだろう。


もう、死んでもいいはずだ。


俺は俺を殺す為の何かを探す。


俺は手に何かを持っているような感覚がした。


これは、ソルの持っていた短剣だろうか?


何となくそんな気がした。


やっと終わりだ。


俺はそれを首に突きつける。


俺は俺がみんなにやった事を俺にもやるんだ。




しかし、俺は死ななかった。


俺の意識はまだここに存在している。


なんで、その言葉が頭を占める。


それでも俺はそれが俺を殺すことが出来ると信じて突きつけ続ける。


しかし、一向に意識が無くなる様子は無い。


俺はそれで死ぬ事を諦めて、周りを調べる。


どうにかして俺を殺すことが出来る物があるかもしれない。


そう思い、俺は半分諦めながら塵しか無くなったその場所で何かを探し続ける。


しかし、俺の予想は裏切られる。


何かがあった。


俺がそこに急いで向かうと、そこには謎の金属で出来た謎のものがあった。

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