196話 終焉
「ね、ねぇ、どうだったの!? …………って、何で裸?」
3人の現人神の1人が俺にそう問う。
しかし、俺は無言でその3人に歩み寄る。
3人は俺の異常を感じ取ったのか、素早く俺から距離をとる。
「まぁ、裸はいいとして…………その様子じゃ、ダメだったみたいね?」
「あぁ、しかも絶対に行けない場所に逃げられた。」
「そう…………じゃあ、もう和平の選択肢は無いのね?」
「…………。」
俺は逃げようとする3人の現人神を追う。
3人の現人神の速度は俺よりも少し遅い。
俺は迷わず手を伸ばす。
しかし、風魔法のようなものを使われて少し後ろにたじろいでしまう。
そして、その瞬間、俺の視界を赤黒い物体が占める。
まずい事が怒っていることに気がついた俺の頭はすぐにその魔力を吸収する指示を出す。
魔力を吸収すると、その物体は止まった。
よく見るとこれは超高温で燃えている気のようなものだった。
くっ、これはあいつらの能力か?
俺はその木の魔力を吸い付くし、その木を破壊して前へ進む。
少し前にはあの3人らしき人影が見える。
俺はその3人を追いかける。
裸で走るのは少し防御面としてと良くないので、土魔法など色んな魔法を組み合わせて簡易的な服を纏う。
こんな服程度じゃほとんどの攻撃は防げないだろうが、無いよりはマシだろう。
3人は先程のように燃える木を飛ばしたりして攻撃してくるが、その程度なら難なく回避出来る。
外に出るということは即ち回避する場所が増えるというわけだ。
室内でも普通に周りの壁を壊して外に出ることは出来ないのだが、やはり固定概念というのは強いもので、壁からは外に出られないという考えがまだ俺の中にはある。
そうなっているとやはり瞬間的に行動する時には壁から出ようというこのにはならなくなってしまうのだ。
身体能力を使っての行動でもそうだが、1番は魔法だ。
魔法は想像が大事なものなため、固定概念などがあれば威力はガタ落ち。
最悪不発に終わることも多々ある。
だからこそ外に出られたらそういうものに邪魔されなくなるため縦横無尽に回避出来るという訳だ。
伸びてきた木々の上に乗り、そこを駆ける。
それが伸びてきたのはあいつらからなので、ここを乗っていくと大元まで辿れるのだ。
木からは植物のようなものが生えてきて俺を攻撃しようとするが、足の回転速度をあげてそれを華麗に躱す。
木を生やしていた現人神は俺が来ているのを悟り逃げていく。
俺はそんな3人を追いかけていくが、3人の中でも身体能力は違うようで、1人が明らかに疲れてきて動きが悪くなっていっている。
俺はそれを狙って追いかけていく。
俺が追いかけ続けると、その1人だけはどんどんと体力を消耗していって遂には疲れてゆっくりしか走れなくなっていた。
その程度の速度に俺が触れ無い訳もなく、直ぐに捕まえてしまう。
腕を掴むと、その現人神は怯えた様子を見せた。
しかし、俺は構わず魔力を吸収する。
「いやぁ、やめてぇ!」
現人神は泣き叫びながら俺から逃げようとするが、魔力も失われていき、力も無くなっていっていたので、俺から逃れることは出来ない。
それにしても吸収される体外魔力が明らかに少ない。
今までの戦闘で体外魔力を使い切ってしまったのだろう。
少し残念だったが、それでも体内魔力は物凄い量があったので、すぐには吸収しきれない。
そのうちに逃げていた他の2人の現人神が俺がやっている事に気づき、戻ってくる。
2人は炎の玉を放ったり、強風を吹かせて俺の事を妨害する。
俺はほとんどの魔力を吸収しきったため直ぐに離れる。
この魔力的にこの現人神は水曜の現人神の様だ。
なぜなら、水曜の現人神ははっきりとは分からないが、植物を成長させる魔法を持っているらしかったが、そういうスキルに関する魔力が大量に手に入ったためだ。
俺に魔力を吸収された水曜の現人神は力無く地面に座り込む。
俺はそんな抵抗する力を失った水曜の現人神に容赦なく炎の初歩的な魔法を撃つ。
魔力も節約しなければいけないためそこまでの魔力はこもっていなかったのだが、それだけで水曜の現人神は焼け死んだ。
生きている2人の現人神はその様子を見て顔色を変える。
「「…………殺す!」」
2人は1人の現人神が死んでからようやく全てを捨てて俺を殺すことにしたようだ。
大量の魔力を惜しみなく消費して俺を攻撃してくる。
だが、もう遅い。
2人のうちの1人が使う炎の魔法水曜の現人神が持っていた流水の魔法で完全に消し去ることが出来る。
その攻撃に対しての魔力消費としてはかなり効率が悪いが、攻撃を消せるだけで助かる。
もう1人の攻撃は俺に対しての殺傷能力は無く、ただ風を吹かせたりして俺を妨害することしか出来ていなかった。
多分先程までは植物を生み出したりせいぎょしたりしていたのだろうが、水曜の現人神が居なくなったため植物を成長させることが出来なくなったのだろう。
そんな2人では俺に勝てるはずもなかった。
俺は2人の腕を掴み、魔力を吸収する。
その時、2人とも号泣していた。
そんな2人を魔力を全て吸い尽くしたあと、サクッと殺した。




