194話 機械
入った部屋の中には日曜の現人神どころか誰も居なかった。
3人の現人神は慌てた様子で部屋の中を探し回る。
「居ない!? なんでっ!?」
「おかしいよ! 確かにここに閉じ込めたはず…………!」
「このままじゃ…………!」
3人の現人神は部屋の中を隅々まで確認する。
1人の現人神が机の下のカーペットを見た時、その下が空洞になっていて、トンネルのようになっており、それがずっと続いていた。
「もしかして、ここから逃げたの!? もう力は残ってなかったはずなのに…………。」
「…………そうみたいだな、で、どうするんだ?」
「…………とりあえずここを辿ってみるしかないけど…………。」
まぁ、こいつらを責めてもどうしようもない。
どうせ日曜の現人神が見つからなければこいつらと戦うんだ、こんな所で怒っていてもしょうがないだろう。
まぁ、見つかって教会のみんなが戻ってきたとしても世界を作り直すためにこいつらも全員殺すからどっちにしろだ。
「い、今すぐ見に行くからちょっと待ってて!」
「いや、俺が行く。」
「えっ!?」
「お前らが行ったらそのままどこかに逃げるかもしれないだろ? お前らと日曜の現人神がグルだったらそのままお前らは逃げてそして教会のみんなを人質にして生き残ろうとするかもしれないだろ? そうなったら困るからな。ここから先は俺一人でいかせてもらう。」
「…………たしかにそうね、分かったわ。」
俺はそれ以上話は聞かずにその穴の中に入る。
入口は狭かったが、入ってみるとなかなかの広さがある。
どうやったのかは分からないが、近くの壁は金属なようなもので固められているようで、少し光沢を持っている。
しかし、少し先はすぐに暗くなっていっている。
それでも俺はその中を進んでいく。
特に道中危険なものはなかったため、素早い動きでその穴を駆け抜けることが出来た。
穴はびっくりするほど長く、どこまでも続いているように感じた。
しかし、それでも流石に終わりはある。
終わりの場所は唐突に現れた。
ここまで来ると光など届かない。
魔法を使って光源を用意するのも良いが、それをしていたらスピードが落ちてしまう。
それだったら大体で進んで行った方が早い。
しかし、走り始めてかなりの時間が経った頃、突然俺は何かにぶつかった。
これは…………魔力の籠った壁のようだ。
コンコンと叩いてみるが、非常に固く、この状態ではかなりの威力で攻撃しなければ壊せなさそうだ。
まぁ、俺には関係ない。
俺は壁の魔力を吸い取り、その壁を殴り壊す。
その瞬間、その奥から眩い光が漏れ出す。
【陽閃光】
くそっ! 出待ちされた!
俺は本気で結界魔法を使いつつ、その魔力を吸い取る。
結界魔法は強度を増やすために前方のみに展開している。
しかし、威力は落ちるものの、その横からもその閃光は漏れだし、俺の体を容赦なく焼く。
大量の魔力を得て人間離れした肉体を手に入れたとはいえ俺は人間だ。
どうやっても攻撃を食らったらダメージを受けてしまう。
俺はその都度魔力を吸収して、その魔力で体を治す。
しかし、その間に結界にもヒビが入り出す。
とんでもない威力だ、どこまで俺が防ごうとしても、その威力に勝てていない。
遂に俺の体外魔力が尽きる。
俺が作り出している程度の魔力では養えない程今は体外魔力を消費している。
パリィンという音を立てて俺の結界が割れる。
俺は咄嗟に手を前に構え、ガードをするが、その手ごと焼き尽くされていく。
今にも意識が飛びそうなほどの痛みに耐えながらただただ魔力を補充して死なないように生命の維持をする。
「はぁ、はぁ、耐えた!」
光はやっと消えてなくなった。
そして、その光を撃ち出していた元凶を見る。
「…………日曜の現人神!」
やっと見つけた!
それで、みんなはどこなんだ!?
俺がその部屋の奥を探すと、教会のみんなと見覚えのない2人組がよく分からない金属で出来た部屋に居た。
「みんな!」
俺はみんなの元に駆け寄ろうとするが、体が動かない。
損傷が激しすぎる、このままではみんなを助ける前に死んでしまう。
俺は空間に漂う微量な魔力と俺自身が生み出している魔力の全てを吸収して、体を回復する。
見覚えのない2人組は何やら機械のようなものを弄っている。
そして、その機械のようなものを教会のみんなや、自分たち、そして日曜の現人神に付けている。
「お前ら何やってるんだ! 今すぐやめろ!」
俺がそう叫ぶが、あの二人組は辞める気がない。
俺が動けずに固まっていると、あの二人組の小さい男の子に見える方が話し始めた。
「久しぶり…………かな? まぁ、あったことは無いけどね。」
話し方からしてどうやら、こいつは土曜の現人神のようだ。
「何から説明すればいいかな…………。そうだ、君は、異世界と言うものを知っているかな?」




