191話 日曜の現人神を探して2
俺は一瞬その数の多さに圧倒されるが、すぐさま考えがポジティブな物に変換される。
殺せる敵の数が多ければ多いほど俺は強くなる事が出来るんだ。
そう考えればこんなに敵がいることはむしろ僥倖だ。
2人の現人神と戦うのだ、少しだけでも戦力が上がるのならばいい事だ。
俺は軍隊と真っ向から向き合う。
前には体よりも明らかに大きな盾を持った兵士が、そして後ろには剣を持った兵士と、弓兵や魔法兵のような後衛職が隠れていた。
盾はギッチギチに固められていて、隙を見せない。
俺には浮遊魔法などがあるため、それで空を飛べばその中に突っ込んで行けるかもしれない。
しかし、そんな事をしては奴らの思う壷だろう。
空を飛んでいる時は少なくとも速さは落ちてしまう。
そうなれば流石に俺は蜂の巣だろう。
「総員、放て!」
そんなこんなで攻め際を伺っていると、軍隊の中の何処かで誰かがそう叫んだ。
その瞬間、俺の方向へと大量の矢や大量の魔法が飛んできた。
俺はそれを避けようとするが、よく見ると均等な感覚で広範囲に様々な攻撃が飛んできており、とても避けられそうでは無い。
俺は仕方がなく結界魔法を使ってその魔法を防ぐ。
俺は上位の魔法は使えないため、どうやっても魔力によるゴリ押しになってしまう。
そのため、攻撃を防ごうとするだけでも過剰な魔力を使ってしまうのだ。
「俺はこれから現人神と戦わなきゃいけないってのに…………消費した魔力はお前らから貰うからな!」
俺は絶え間なく放たれる攻撃を防ぎながら、盾を持った兵士に近づく。
強い武器は大抵魔力を込められているため強いのであって、素材としての強度には限界がある。
なので、こういった武器で俺と戦う場合はその実力を発揮できないまま破壊されてしまうのだ。
俺は盾に籠っている魔力を吸収する。
「くっ!? 重いっ!?」
そうか、盾には軽くなる魔法でも使われているのか。
軽くすればその代わりに強度が落ちたりしてしまう。
逆に重くすれば強度も上がったりする。
これ程の大きさの盾を持ち運べる程度まで軽くしてその上で強度まで保つというのは中々の職人技だ。
そんな技術がこの国の強さを物語っている。
だが、申し訳ないが、その技術も俺には敵わない。
俺は魔力を吸収した盾を勢いよく蹴る。
少なくとも強度は下がっているはずだ。
盾を蹴ってみると、破壊は出来なかったが、ヒビを入れることは出来た。
もう一度その部位を蹴ると、盾は粉々に砕けた。
2発か。
この弾幕の中で何発も何発も攻撃している余裕は無い。
ならば俺が出来る最善策は…………。
「正面突破からの虐殺だよなぁ!」
俺は何人かの盾を破壊し、それを持っていた兵士の魔力を吸収し無力化。
即座に殺害し、そこを押し進む。
その瞬間剣を持った兵士も攻めてくるが、俺との間に遮蔽物がないのなら俺のスキルの効果内だ。
俺は向かってくる剣を持った兵士の魔力を吸収して無力化、そして盾を持った兵士と同じく瞬時に殺害。
そのまま周りの攻撃は気にもせずに押し進む。
そしてついに弓兵や魔法兵などのような後衛職のところにまで到達した。
あいつら仲間の死体を盾にしても構わず突っ込んでくるからかなりの恐怖だったが、まぁ、何とかなった。
近距離では後衛職は戦えまいとたかを括りせめて苦しまずに殺してやろうと思っていたそんな時、思ってもいなかった自体が起きた。
それは、後衛職がフレンドリーファイアを気にせずに矢や魔法をバンバン飛ばしてきたことだ。
マジでこいつら狂戦士すぎだろ!?
もちろん外れた攻撃はかなりの数が他の兵士に当たっている。
それでも攻撃をやめる気配は無く、魔力を吸収して威力を抑えるにしても少々きついほどに大量の攻撃が俺に降り注いでいた。
近くに居るので逆に広範囲に放っていた攻撃が一方向に定められたおかげで弾幕量が増えている。
はぁ、もう仕方がない。
このままでは俺が死んでしまう。
俺はひとつのビー玉ほどの玉を作り、地面に置き空へと飛び上がった。
敵兵達はそれを好機だと思ったのか、執拗に俺を攻撃してくる。
しかし、俺もやられっぱなしでは無い。
俺はひとつの魔法を使った。
「お前らすまないな。」
かなり勿体ないが、命には帰られない。
こいつらの魔力は諦めよう。
俺は下に置いてきたビー玉。
魔核融合魔法の玉を起動した。
今までよりも小規模な爆発だが、それでもここにいる奴らを全滅、そこまでいかなくても重傷を与える事は出来るだろう。
範囲もちょうどさっきまで戦っていた範囲くらいだが、できるだけ真ん中に集まるように俺が飛び上がり集中を集めることで俺に攻撃が行くように仕向けたため、被害は更に広がるだろう。
魔核融合魔法は今まで戦っていた土地を全て塵に変えた。




