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177話 過去7



中央教会の長が外に出ていったあと、俺達は全員ため息をつく。


セイラは今も尚憤慨していた。



「ちょっと、なんなのアイツ!? 私も商人だからポーカーフェイスは得意だけど、流石に盟友のことを馬鹿にされたら許せないよ…………。」


「ははは、ありがとう、けど本当に大丈夫、僕が君たちに比べて劣っているのは事実だからね…………。」



これは元々わかっていたことだし、特にダメージもない。


しかし、セイラはそれをキッパリと否定した。



「盟友は劣ってなんか居ないよ、君と同じ働きをできる人はここには誰一人居ないんだ、君の事を劣ってるなんて思ってる人ここにはいないよ? そうだよね!」



セイラがみんなに問いかけると、みんなはそれに同調した。


みんなのその言葉に胸がじぃんと熱くなる。



「みんな…………ありがとう、俺これからも頑張るから!」


「「いや、もうちょっと休んで!?」」




◇◇◇◇




数日後、いつも通りに仕事をしていると、また誰かが来た。


俺は嫌な予感を感じつつも、出迎えると、またもやあの中央教会の長だった。


俺は嫌だなと思いつつも丁寧に対応する。


しかし、今日の中央教会の長はこの前の高圧的な態度とは打って変わって丁寧な態度だった。



「こんにちは、モルフィスさんはいますかな?」


「え、えぇ、モルフィスですが、どうかしたのですか?」



そんな態度に戸惑いつつも俺は中央教会の長を向かい入れた。



「まずは先日の非礼を詫びたい、まさか貴方様の持っているスキルがそれ程いいものとは知らず…………。」


「はぁ、どういう事ですか? 何かの間違いでは?」



俺のスキルがいい物だった?


そんなはずは無い。


俺はそんないいスキルを持っている訳では無いし、何かの間違いだろう。



「いやいや、貴方様は伝説級の夢想というスキルを持っていらしたのですよ。」


「夢想?」



そんなスキル聞いたことが無い。


まぁ、聞いた事の無いスキルというのはこの世に溢れている。


だから別に聞いた事の無いスキルを俺が持っているというのは特におかしいことでも無い。


だけど伝説級?


俺がそんなものを持っているとは思えない。



「夢想というスキルは…………まぁ、本当に伝説のスキルすぎて知られていないスキルらしいのです。だからこそ知らないのはおかしくないかと。」


「そ、そうですか、しかし俺がそんなスキルを持ってるとは思えないのですが…………。」


「はい、私もそんなことは無いと思ったのですが…………いや、変な意味じゃなくてですね?」



…………こいつ、態度が良くなったと思えば全然良くなってないじゃないか。


俺はジト目で睨みつけようとするのを抑えて話を戻す。



「それで、どういう事なんですか?」


「はい、前回の結果を日曜の現人神様に見せたところ、夢想というスキルは大変有用なスキルなため今すぐここに連れて来いとの事でして…………。」


「そうなんですか、それで、俺が持っているスキルというのはどういったのもの何ですか?」


「それは私にも分からないのです、とりあえず着いてきて貰えませんか?」



俺は初めは断ろうかと思った。


特に日曜の現人神様の為に働く義理は無いし、そもそも俺の仕事が残っている。


俺の仕事は今後1週間先までギチギチに詰まっており、休みなどない。


それに、この仕事は俺にしかできないものでもあるし、俺が居なくなってしまえばだいぶ困ったことになるのだ。


しかし、そこで俺はこの前この中央教会の長が言っていた事を思い出した。


こいつがその気になれば俺達を全員潰すことだって可能なんだ。


しかも、それがさらに上位の存在である日曜の現人神様ともなれば何をされるか分からない。


俺のひと時の仕事と教会のみんなを天秤にかけると確実に教会のみんなに傾く。



「…………分かりました、でも、ほんの少しだけ時間をください、仕事などを他の誰かに引き継ぎますので…………。」


「…………できるだけ急いでいただけると助かります。」



中央教会の長は明らかにソワソワしだす。


多分今すぐに連れてこいと言われているみたいだし、早く連れていかないとこいつの身分的にもまずいのだろう。


こうなったら思いっきり時間をかけてやろうか? とも思ったが、そんな事をしてしまえば俺にも被害が出てしまいそうなのでやめて置いた。


俺は今日は急用ができたので休むという旨を書いた紙と俺がやっていた仕事を教会にいる人達に頼む為の紙とそのやり方を書いた紙を用意した。


それをちょうど教会に居たソルに渡す。



「えー? にぃにどっか行っちゃうの?」


「あぁ、これに書いていることをやって欲しいんだけど頼めるか?」


「うん! 私だってもう立派なお姉さんだからね! このくらい楽勝だよ!」


「そうか、じゃあ頼んだぞ!」



俺はソルの頭をわしゃわしゃと撫でる。


この子は歳の割には少し子供っぽい気もするが、それもこの子の魅力のうちの一つだ。


この子は教会のみんなで可愛がっている。


この子がウェポンマスターなんて呼ばれてるなんて信じられないくらいだ。



「準備出来ました。」



俺は中央教会の長にそう伝える。


すると急いだ様子で中央教会の長は俺を馬車に乗せた。

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