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176話 過去6



周りがそれだけ頑張っているのを見ると自分ももっと頑張らなければという考えになり、俺はどんどんと労働を加速させていった。


皆に少し心配されながらも頑張った。


そんな俺をセイラも盟友と認めてくれ、教会のみんなからも慕われてした。


そんな事もあり、俺達の教会から出た子達は奇跡の子と言われていた。


そんなある日、俺の教会に訪問者が来た。


いつもの援助を打診する人か、仕事を依頼しに来た人かと思い、出迎えると、そこには煌びやかな格好をした男が入ってきた。



「ここは奇跡の子が生まれる教会ということで合ってるかな?」



男は少し高圧的な態度でそういった。


褒められる態度では無いが、明らかに位の高そうな人なので、丁寧に対応する。



「はい、そうですが…………何か用事ですか?」


「うむ、私は中央教会の長をしているものだ。」



中央教会、その名前には聞き覚えがある。


中央教会とは日曜の現人神様のお膝元の中にある教会で、全ての教会を統治しているところらしい。


教会はそこら中にあるが、その中でもトップクラスに大きいところだ。


何かしたり、支援を求めたりする時にはここに申請をしなくてはいけない。


しかし、ここはスラムなので、何かを申請したりしてもそこまでの対応を行ってもらったことは無い。


ただ一つだけ受理されたのは、ここに孤児などを迎え入れるということだけだった。


それ以外の援助などは来た試しがない。



「中央教会の長様ともあろうお方がどうしてこんなところに?」


「あぁ、こんな所に私も来たくは無かったのだが…………どうやらここでは良い人材が多く輩出されているらしいじゃないか、その原因を調査して来いとの命令が下されてな。そうでも無かったらこんな小汚いところには来たくもないわ。」



俺はこいつを思いっきりぶん殴ってその高そうな衣服を全部はぎ取って換金してやろうかとも思ったが、そんな事をしてしまえばどんな仕打ちを受けるかも分からないので、握しりめた拳を隠した。


良い人材が多いというのはみんなが頑張っているからの話で原因などは考えられなかった。


その旨を伝えるが、その中央教会の長とやらはそれだけでは納得しなかった。



「とりあえずここに居るものを全員ここに集めろ、話はそれからだ。」


「…………はい。」



ここに集めろと言われても、みんなは仕事中でバラバラの所にいる。


それでも、何処にいるかなどは分かっていたので、そういう所を回って行った。


全員が集まり切るまでにはかなりの時間がかかったが、全員を集め切ることが出来た。



「はぁ、遅いな。やはりスラムの住人は鈍臭いなぁ?」


「…………。」



みんなその言葉にムカついて手が出そうになっていたが、予めこの人の立場も知らせておいたので、みんな踏みとどまってくれた。



「…………それで、これから何をするのでしょうか?」


「うむ、お前らにこれをやる。」



そう言って中央教会の長は俺たちの前にバンっと板のようなものを置いた。



「これは?」


「聞いて驚くなよ? これは最新技術を用いた鑑定装置で、これに触れるだけで触れた者のスキルなどを読み取れる装置だ、お前ら貧乏人にはどれだけ頑張っても触れないものだぞ?」


「…………。」


「くくく、驚いて声も出ないようだな? とりあえずお前達にはこれで自分のスキルを見てもらう。何かそこにこの教会の秘密が無いか調べるためだ。お前らは貧乏人だからスキルを調べる機会も無いと思うが、これを機に調べられるんだ、感謝しろよ?」


「…………分かりました、ありが……とうございま、す。」



俺は知るか、死ねカスと言ってしまうのを我慢してそう返した。


中央教会の長は満足気に近くにあった椅子に座った。


俺はその椅子は後で丁寧に掃除しようと思いつつ、みんなに順番に板に触るよう指示を出した。


中央教会の長はその度に少し驚いた様な顔をしていた。



「その若さであれ程のスキルを…………だが、そこまでの秘密は無かったな…………やはり偶然なのか?」



中央教会の長は思案していたが、特にめぼしい情報は無かったようで、うーんうーんと唸っているだけだった。


そして、最後に俺の番が来た。


俺はその板に触れた。



「…………ふっ、お前は普通なんだな? 教会の長ともあろうものが最年少の少年よりも弱いとは…………笑いものだな?」



…………やっぱりか、確かに俺は周りに比べて劣っていた。


狩りもできなければ商売の才能もものづくりの才能も無かった。


それでも俺は頑張っていたのだが…………まぁ、しょうがない結果だ。


俺はそう諦めようとしていたが、その時、セイラが前に出た。



「ちょっと! 流石に失礼すぎるんじゃない!? モルフィスはスキルがなくたって優秀な教会長よ!? さっきの言葉取り消しなさいよ!」


「ほぅ、私に口答えするか…………どうなるか分かっているな?」



まずい、中央教会の権力は絶大なものだ。


それはルーキーの冒険者を潰す事や、新星の商人を潰すことだって容易い。



「おい! セイラ、俺はなんとも思っていないから! ほら! 謝れ!」


「け、けど…………。」


「いいから! お前だけじゃなく他の奴らにも被害が及ぶんだ!」


「う、うぅ、ごめんなさい…………。」



俺が説得すると、セイラは渋々謝った。



「ふん、私としても未来視のセイラを潰すのは不服だ、今回は許してやろう、だが、ゆめゆめ忘れぬ事だ、私はお前ら全員の生殺与奪の権を握っているのだからな?」


「くっ、分かってます、申し訳ございませんでした…………。」


「…………やはり、こんなところにはくるべきでは無いな。」



中央教会の長はそう言い放ち外へ出ていった。



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