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174話 過去4




まず、ガイアとレアの事だ。


ガイアとレアはどちらもスラムの生まれで、早くに親を亡くしオルクスに拾われたらしい。


当時は2人とも俺のように痩せ細り怯えていたらしいが、今はもう元気になっている。


かく言う俺も数ヶ月だった頃には2人と同じように元気になっていた。


これも全てみんなのおかげだ。


俺は毎日みんなに感謝しながら生きていた。


しかし、俺には一つだけ解せないことがあった。


それは、日曜の現人神様への祈りだ。


オルクスは日曜の現人神様は俺たちを幸せにしてくれているからしっかりと毎日祈りを捧げなくてはいけないと言っていた。


俺はオルクスの言う事だからと毎日欠かさずに祈りを捧げてはいるが、その行為の意味が分からなかった。


なぜなら、日曜の現人神様が俺たちを幸せにしてくれているのなら、何故スラムという場所が生まれ、俺達のような人達が出てしまうのか疑問だったからだ。


日曜の現人神様がそんなに高位な存在なら、スラムに居るような人達にも救いを与えてくれるはずだ。


しかし、それな事は起こらず、今もスラムはあり続けている。


だからこそ俺達のことは救ってくれなかった日曜の現人神様の事を信仰することには疑問があったのだ。


ガイアやレアも同じような事を思っていたようで、一応真面目に毎日祈りは捧げるが、オルクスが言うからしょうがなくと言った様子だった。


セイラはスラムの出では無いので、特にそう言った疑問は無かったらしいが、そこまでの信仰は無いらしい。


だが、それでも俺たちは日々真面目に暮らしていた。


みんなお金などがある訳では無いのでスキルなどが分かるわけでは無かったけど、各々得意な事をやって生きていた。


ガイアとレアは武器を使うのが上手かった。


ガイアは盾、レアは剣を使うのが上手く、度々2人で狩りをしてお金を稼いだり、日々の食糧を取ってきてくれたりした。


2人は他の人達よりも成長が早く、同業者からも神童などと言われるほどの成長を成し遂げていた。


そして俺は家事全般が得意だったので、主にみんなの洗濯や掃除、料理などを担当していた。


豊かな生活ができていたとは言えなかったが、それでもみんなと穏やかに暮らせていたことは俺にとってかけがえのないものだった。


そんなある日、事件は起こった。


戦争が起こったのだ。


日曜の現人神様と月曜の現人神様が何故かは分からないが、争い始めたらしい。


俺たちの所に直接攻めてきたりすることは無かったが、物価の高騰や、治安の悪化など、間接的に俺達にも影響が出ていた。


幸いな事に食糧などは殆ど自給自足出来ていたので、俺達が飢えに苦しむ事は無かったが、畑を荒らしに来る人や俺たちの持ち物を盗んでいく人も現れ、かなり困っていた。


そして、俺達は所謂戦争孤児となった人々も何人か受け入れたりもしていた。


オルクスも誰でも受け入れるという事が出来るほどの財力も無ければ、そこまでのスペースもこの教会には無かった。


なので大人や自分達だけでも生きていけると判断した人たちは受け入れを拒否していた。


オルクスはいい人ではあるが、聖人君子ではない。


自分と俺たちの事がまずは最優先なんだ。


それでも、教会内に投げ捨てられた幼子や、親を失い生きることが困難になった子供などは何人か受け入れていた。


その分俺たちの生活は苦しくなってしまったが、それに文句を言う人はこの教会には居なかった。


俺達だって拾ってもらった身だ。


今度は他の人たちを助けたいと思うのは自然な事だった。


やや経って戦争はおわった。


とは言ってもここまでお達しが来ることは無いので、風の噂で知っただけだ。


もっと日曜の現人神様のお膝元である街ならば直々にお達しが来たり、新聞などでその情報を知ることも出来るらしいが、あいにくここは辺境のスラムだ。


こんなところまで来てお達しを出す人はそうそう居なかった。


少し経つと戦争の余波も収まり、今まで通りの穏やかな日々が帰ってきた。


スラムにいる以上、上質な生活は出来ないが、それでも教会という場所の特性上、そこを襲う人も少ない。


襲ってもガイアやレアによって撃退されていたので、俺達は安心安全な暮らしをしていた。


戦時中に引き取った子達も健康な生活を送っていて、すくすく育っていった。


オルクスは俺達と同じようにその子達にも色んな事を教えてあげていた。


俺はここでもやはり少し嫉妬してしまったが、その感情は表に出さないようにしていた。


どれだけ嫉妬をしていたとしても相手は子供達ばかりが俺が10歳なのに対して、子供達は2歳から6歳。


そんな子供たちに嫉妬するのは恥ずかしいと考えたからだ。


それからも俺達は平和に生活をしていき、子供たちも大きくなった。


そんな時、事件は起こった。


早朝、誰よりも早く起き日曜の現人神様への祈りを毎日欠かさず行っていたオルクスがその日は居なかったのだ。


いつも2番手で祈りを捧げていた俺は嫌な予感を感じ、急いでオルクスの部屋へ向かった。


すると、俺はベットの横に胸を抑えて蹲っているオルクスを見つけた。

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