172話 過去2
その日にオルクスはその場所の案内をしてくれた。
この場所は日曜の教会という場所らしく、日曜の現人神というものを祀っている場所らしい。
オルクス曰く、この世界は七曜の現人神という神様たちが管理しているらしく、ここら一体は日曜の現人神様が管理しているらしい。
うちの父は神様を信仰などしている様子は無かったので少しも知らなかったが、これはかなり一般的な事らしい。
「じゃあ、これから祈りの捧げ方とかは教えよう、とりあえずモルフィス君の事をみんなに紹介したい、良いかな?」
みんなというのが何なのかは分からなかったが、オルクスにかなり気を許していた俺はこの人がやる事なら悪い事では無いだろうと思い、こくりと頷いた。
オルクスは優しく笑い、俺の手を引いた。
そして、扉を開いた時、何人かの人がなだれ込んできた。
「おやおや、盗み見などせずに堂々と見に来れば良かったものの…………あぁ、祈りをサボろうとしていたのですね? ダメですよ? ちゃんと祈りはしなくては。」
「…………うぅ、分かったよぉ。」
1人の女の子がそう言ってとぼとぼと祈りを捧げに行った。
「俺はもうしたぜ! 俺は真面目だからな!」
「ははは、知ってますよ、偉いですね。」
そう言ってオルクスはその男の子の頭を撫でた。
俺は少し嫉妬した。
「ええっと、ぼ、僕はしなくてもいいですよね?」
「うーん、ついでにしていってしまいなさい、ここに住んでいないとはいえ貴方も信徒なのですから。」
「で、ですよねー。いってきまーす!」
そう言ってその女の人も日曜の現人神様の象の前で祈りを捧げていた。
俺は戸惑いながらもオルクスにしがみつく。
「この人達、誰?」
俺はオルクスに震えながら聞いた。
「この人達は、君の家族になる人達ですよ。仲良くしてくれますか?」
「…………。」
仲良くすると言っても、知らない人達といきなり仲良くなるなど、怖くて出来なかった。
そんな俺を目の前にいた男の子は興味深そうに眺めていた。
「オルクス! こいつ誰だ!?」
「…………言葉遣いが悪いですよ?」
「…………誰ですか?」
「そうですね、この子は今日からここで暮らす子ですよ、昨日酔っ払いの男にここで預かってくれと頼まれましてね…………やはりあの様な人は子供を産むべきでは無いんですよ。ともかく、この子はモルフィスという名前です、仲良くしてやってくださいね?」
「はーい!」
男の子は元気よく返事をする。
そして、すぐに俺の元に近寄ってくる。
俺はオルクスの陰に隠れた。
「なぁなぁ! お前どこから来たんだ!? その身なりからしてスラムだろ!? ということは俺と同じで…………。」
「こらこら、モルフィス君が困っていますよ、もう少し落ち着いてください。ごめんなさいね、モルフィス君。この子も悪気がある訳では無いのですよ、許してやってください。」
俺はこくりと頷いた。
男の子はハッとした顔をして、申し訳なさそうな顔をして俺に話しかけてきた。
「うぅ、ごめんな? 久しぶりに人が来たから嬉しくて…………。」
「…………大丈夫。」
「あ、ありがとう! 俺はガイアだ、よろしくな!」
ガイアはそう言って遠慮がちにそっと手を差し出した。
俺はその手を怯えながらもゆっくりと握る。
すると、ガイアは嬉しそうな顔をしたので、俺も少しいい気分になった。
「じゃあ、ガイア君、少し畑の様子を見てきてくれるかな?」
「分かった!」
オルクスがそう言うと、ガイアは外へと走っていった。
「どうですか? 仲良くなれそうですか?」
仲良くなれそうかなれそうじゃないかで言えば、仲良くなれるとは思った。
しかし、どうやっても人への恐怖が少しあり、不安だった。
それでも俺はこくりと頷きた。
「そうですか、なら良かったです。」
オルクスは優しく微笑む。
その時、オルクスの元へ先程まで祈りを捧げていた女の子が駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、出来たよ! 褒めて!」
「えぇ、えらいえらい。」
オルクスがその子の頭を撫でると、その子はえへへぇと顔を緩めた。
俺はやはり少し嫉妬した。
女の子は次に僕の方へと寄ってきた。
「えっと、モルフィス君だよね? 実はさっき祈りを捧げてる時にちょっと聞いてたんだ。私はレアって言うの、よろしくね!」
「…………。」
レアはガイア同様に手を差し伸べてくる。
俺はガイアとも同じ事をしたので、慣れていたのかすぐに握手をすることが出来た。
そうするとレアも嬉しそうにしていた。
その時、その後ろからレアよりも大きな影が迫る。
俺はすぐさまオルクスの影に隠れる。
「ちょ、待ってよ! そんなに僕が怖い!? 真打登場だって言うのにさぁ。」
その影の正体である女の人が項垂れる。
その女の人は女の人にしては小柄だったのだろうけど、その時の俺からしたら大きかったため、少し怖かった。
しかし、ここにいる人が怖い人じゃないということは分かっていたため、恐る恐る前に出る。
「あぁ、良かった、ちゃんと出てきてくれたぁ。」
その女の人は少し涙目になりながら俺と背丈を合わせて向かい合ってくれた。




