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170話 凪6



「…………は?」



俺はその様子を見て呆然としていた。


さっきまで異形の化け物の姿をしていた凪がいきなり普通の人間の姿になったら呆然とするのはおかしくないはずだ。


だが、何が起こっているのか分からない以上、警戒はしなくてはいけない。


もしかしたら更に上位の姿になったという可能性だってある。


もしそうならば俺の勝利は無くなったも同然だ。


それでも俺は戦い続けるが、もしかしたら、凪は普通の姿に戻ったという可能性だってある。


それなら…………俺は勝てるかもしれない。


俺は凪を観察した。


凪は目をぱちくりさせ、手を握ったり離したりしていた。



「おい、凪なのか?」


「…………晴輝、さん?」



凪ははっきりとそう答えた。


凪はもう俺の事を食料だとは捉えていなかった。


…………今更正気を取り戻したようだ。


凪は俺の事を見てかなり戸惑った様子だった。


俺は黒鉄を構え直す。


その姿を見て、凪は慌てた様子で両手を上にあげる。



「ちょ、ちょっと待ってください! 争う気は無いです!」


「…………何を今更!」



今までの事を見るとどうやっても争う気がないようには見えない。


それに、争う気に見えなくとも俺は凪を恨んでいる。


そっちに争う気が無くても俺は争う気があるんだよ。


俺は凪を切り付けた。


しかし、凪はその攻撃を軽々と防いでしまう。


攻撃が当たっていない訳では無いのだが、ほとんど傷が付いていないという状態だ。


くそ、やっぱり強くなってる。


だが、俺はこいつを殺す、俺が死んだとしてもだ。


俺は何発も攻撃を繰り返す。



「分かってます、晴輝さんが俺の事を殺したいほど恨んでいるのは。それでも、あなたの為にも僕の話を一旦聞いてください!」


「…………嫌に決まってるだろ、お前は分かってない、お前は俺たちにどんな事をしたのか1ミリも分かっていない!」



今更攻撃を辞めるなど出来ない。


凪の話なんて聞きたくない。


俺は今すぐにでもこいつを殺したいんだ、今更話を聞いてくれなんてふざけているとしか思えない。



「…………分かりました、じゃあ僕はもう抵抗しません、だから、僕が死ぬまでの間だけ話を聞いていてください!」


「…………。」



凪は本当に正気に戻ったのだろうか?


凪は俺の攻撃に抵抗しないとは言っているが、本当かは分からない。


凪は俺の前で大きく手を開いて無抵抗を示している。


俺は疑いつつも黒鉄を刺し込む。


黒鉄は凪の腹を貫いた。



「こふっ…………。」



凪の口から血が流れ出す。


凪は口から血を流しながらも話続ける。



「…………話……ますよ?」



俺はその言葉を無視して凪を刺し続ける。



「…………この箱にはもう関わらない方がいいと思います、あの魔力は明らかにおかしい。あの箱を開け続けたら晴輝さんも魔力中毒になってしまう!」



凪はそう叫ぶ。


魔力中毒か、俺は1回だけ魔力中毒になってしまったことはあるが、もう治し方はわかるし、箱がその原因になるとな思えない。


それに、そんなこと言われたって、俺はあの箱に頼りきってるんだ。


凪は俺に危害を加えるためにそう言っているに違いない。


俺は黒鉄をグリグリと押し付け、凪の腹部を傷つける。


凪はその度に悲痛な叫び声を上げ、口から血を吐き出していた。


それでも凪は話続ける。



「本当に! 僕がこうなったのもダンジョンの魔力のせいなんです、だから!」


「うるさい、死ね!」



俺は凪の腹から黒鉄を引き抜き、そのまま喉元に突き刺す。


凪はそれだけで喋れなくなってしまう。


いい気味だ、俺をハメようなんてそうはいかない。


こいつははどう頑張ってもゆうちゃんの仇だ。


何があろうとも許すことは無い。


凪は悲しそうな顔をするが、それでも頑張って喋ろうとする。



「…………ァ、ァ゛…。」



俺はその凪の喉元に更に黒鉄を突き立てる。


それでも凪は抵抗はしない。


頭に血が登らなくなっているのか、凪はどんどんと顔が青くなっていく。


喉元からは勢い良く血が吹き出している。


あぁ、やっとだ、やっとこいつを殺せる。


俺は笑いながら凪を殺すべく何度も何度も刺していく。


凪はそのまま動かなくなった。


周りには生きている人を殺した証である血が飛び散っている。


しかし、凪はまだ生きているようだ、もう頭も体と離れ離れになっているはずなのに、まだピクピクと動いている。


それでも、もう殺したも同然だ。


俺は、俺はゆうちゃんの仇を取れたんだ。


俺は大きくガッツポーズをし、喜びの叫び声をあげる。


復讐は、果たされた。


俺は地面に力無く倒れ込む。



「…………そうだ、こいつの力を奪っておくか。」



こいつの力を取り込むなど嫌な気持ちはあるが、背に腹はかえられない。


ゆうちゃんを取り戻す為には力が必要だ。


俺は凪へと手を伸ばした。

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