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164話 凪の痕跡




その後、俺の体はまた乗っ取られてしまった。


その時に俺はもはやだいぶ離れた位置に居たので、俺の中のナニカももう戻るよりも先に進んだ方が人を殺せると判断したのだろう。


俺は来た道を戻ることはなく、そのまま進み始めた。


人々が住んでいないであろう場所を通り抜けると、大きな川にでた。


地図を確認すると、ここが中国との国境だろう。


こう考えると俺は物凄い距離を跳んだんだな。


北朝鮮も面積で言えば中々にある。


それを一跳びで超えてしまうなど明らかに人間の技を超えている。


最新の技術で飛ばすものの耐久力を度外視して飛ばせばこのレベルの速度が出るのだろうか?


もはや化学などと言っていられる時代ではなくなっているため、検証などはできないが、それでも俺はおかしな速度で跳べている。


俺はその川を念動力を使って飛んで渡った。


渡った先には特に何も無かった。


…………おかしいな、ここを渡った先には物凄い都会という訳では無いが、ある程度の規模の街が広がっているはずだった。


俺はそこでそこの住民を殺して回る予定でいたんだが、これではそんなことは出来ない。


残念だ。


…………俺の意識はもうダメだ。


さっきのでもう俺の思考すら闇に侵されている。


このままでは俺は本当に殺人鬼と化してしまう。


止めようにも止められないし、自殺しようにもすぐに治ってしまう。


万策尽きたと言った感じだ。


俺はそのまま進んでいくが、そこにも何も無く、ただただ平原が広がっている。


…………おかしい。


ここら辺が平原になっているなんてありえないはずだ。


山すらない、ただただ雑草が生い茂っているだけだ。


別に中国に詳しい訳では無いのだが、地図を見るにこんな地形が広がっているようには見えないのだ。


俺はさっさとここらの人たちを全員殺してゆうちゃんを取り戻さなくてはいけないのに人が居ないのでは何も出来ないじゃないか。


俺はその平原を進んでいくが、やはり何も無い。


まるで人間が住んでいたかった頃の平原のようだった。


それでも俺は進んでいく。


何があろうとも別にゆうちゃんを助け出せるならそれでいい。


そのためにも俺は人が居るところを探して行った。


しかし、中々見つからない。


ただ、所々にダンジョンが見える。


しかし、そのダンジョンからはモンスターが出てきておらず、周囲にはモンスターは居なかった。


こんな辺境なのに誰かがダンジョンを無効化したのだろうか?


こんな所まで来てダンジョンを無効化したということは、このダンジョンには余程いい物があったのだろうか?


いや、そんなレベルじゃない。


少なくとも中国まで来ているうちにはモンスターに出会っていない。


つまり近くにあったダンジョンはほとんどが無効化されているということだ。


そこまでいい物が出るダンジョンが並んでいるとは思えない。


居住地が近くに無いにも関わらず、全部のダンジョンを無効化する意味が分からない。


平原のような場所にポツンとダンジョンがそびえ立つ姿はかなり異様だった。


俺はその理由を探るためにそのダンジョンに入っていた。


そこで、俺は戦慄した。


そのダンジョンは、()()()()()()()()()()のようになっていたのだ。



トレントのダンジョンはあの凪が何かをしてこのような真っ白い空間が広がるようになってしまっていた。


つまり、このダンジョンには凪が来ていたということだ。


それに、良く考えれば海でもモンスターにあっていなかった。


海の中やその近くのモンスターのダンジョンも凪が無力化していたという事なのだろう。


となると、この近くにあいつは居る。



「殺す。」



俺の口から、俺の意思でその言葉が出る。


俺の消えかけていた意識が急激に覚醒する。


ゆうちゃんの仇、必ず取らなければいけない。


勿論ゆうちゃんを取り戻すのが最優先だが、近くに凪が居るのならば俺はそいつを殺さずには居られない。


あの時は俺は何も出来なかった。


もはや何が起こっているのか分からないままゆうちゃんは殺されてしまった。


しかし、今の俺は違う。


あの頃に比べたら信じられないほど強くなった。


今ならあの凪にも余裕で勝てる。


そんな自信があった。


それに制御はできていないが、俺の中のナニカも俺の力の1部だ。


俺が死にそうになったら今の俺の意識が体をコントロールしているとしても力を貸してくれるはずだ。


俺は周りには誰も居ないが、黒鉄を構える。


凪は何時どこから来るか分からない。


何時でもあいつを殺せるように準備をしておかなくては。


俺は凪を探して走り出した。

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