137話 奪い返す
俺は山道をを駆け抜けて行った。
ホテル街から目的の場所へ行くためには山道を通って行く必要がある。
普通なら舗装された道路を走って行くべきなのだが、俺の場合そのまま森を突っ切って行った方が早い。
だから俺は森を突っ切って行った。
というか孤独に耐えられなくて森の中で木を避けながら進む事で何も考えずに進む事が出来るという事もある。
兎にも角にも俺は進み続けた。
俺はその都市には行ったことが無かったが、俺が走っていると日が明ける頃にはその都市周辺まで近づく事が出来きた。
ここにゆうちゃんが居る。
そう思うだけで少しは気持ちが楽になった。
それと同時にどす黒い感情が溢れ出す。
陽夏が、コナーが、それ以外のみんなの優しさがその黒い感情をまだ堰き止めている。
そうでもしなければ俺はもうその気持ちに飲まれて暴れだしてしまいそうだ。
俺は何とか理性を繋ぎ止めながらその都市へと入っていく。
都市へ入る時の看板は未だに以前と同じ様な様子を残していたため何処に居るのかが何となく分かる。
こんな時にコナーが居てくれれば。
そんな思いが心をよぎる。
だが、その思いを振り切る。
そんな事思っても何にもならない。
ただ虚しいだけだ。
俺は自らの手で道を切り開いていく。
コナーから貰った地図を使い大体で進んでいく。
敵はそこら辺の道にはまだ居なかった。
確かにまだここら辺は都市とは言えど何も無いところなので仕方がないだろう。
敵が出てこないというのはいい事なんだが、何故かガッカリしてしまうな。
俺はある程度舗装された道を音を出さずに出ていく。
都市と言うだけあってか道はかなり綺麗だ。
ホテル街も中々に綺麗になっているが、それとは次元が違う。
不自然な程に綺麗だ。
多分あのカルト集団共が綺麗にしたのだろう。
あいつらの片鱗が見えるだけでイライラしてくる。
俺は進む足を早める。
早くあいつらを殺してゆうちゃんを救出しなくては。
俺の頭はそれだけに染まっていく。
コナーが言うにはあいつらの本拠地はこの都市の中央部にあるらしい。
今はそこから離れているので敵が居なくてもしょうがないか。
というか、敵どころかモンスターすら居ない。
近くにはダンジョンの姿は所々に見えるが、そこら中にモンスターが溢れているという事は無かった。
それすらも俺のストレスを貯める要因になっている。
モンスターを殲滅するだけでもストレス解消になると思うが、それが出来ない。
これも全てあのカルト集団共が悪い。
あぁ、本当にイラついてきた。
俺は近くの電柱を殴りたい気分になったが、すんでのところで留まった。
今ここで思いのままに振舞ってしまえばゆうちゃんを助け出す前に俺のところに人が寄ってきて俺を攻撃しだしてしまうかもしれない。
そうなってしまうと非常にめんどくさい。
並大抵の敵程度なら俺だけでも十分に対処出来るが、あのサイコキネシスを使う男が出てきでもしたら俺は勝てないかもしれない。
しかもここの戦力があのサイコキネシスを使う男だけだとは限らない。
故に俺は慎重に行かなくてはならないんだ。
とはいえここからずっと慎重に進むというのには無理がある。
そこまで慎重にし過ぎると目的地に着くまでもう何日もかかってしまうだろう。
ゆうちゃんがよく分からない奴らの元に居るというだけでも不安なんだ。
早く助け出さなくてはいけない。
だからそこまで時間をかけている余裕は無い。
俺は注意はしつつも、大胆に街中を進んで行った。
すると、しばらくして目の前に人影が現れた。
俺は近くの家に身を隠す。
その人を観察していると、どうやら家の中に忍び込み中のものを盗って居るようだった。
その人は痩せ細り、目には隈ができていた。
恐らくあのカルト集団の一味だろう。
だとすれば…………。
俺はそーっとその人の後ろに忍び寄り、首元に刀を突きつける。
そしてそのまま首を切った。
「はは、ざまぁ見やがれ。」
俺はそいつにそう吐き捨てて刀に着いた血を払う。
こんな弱々しい奴だとしても何かがあった際には敵勢力の1部となって俺に攻撃してくるだろう。
だから俺はこいつらを1人残らず殺さなければいけない。
だから決して俺の憂さ晴らしに殺した訳では無いんだ。
そこで俺は気づく。
こいつに案内させれば良かったのでは無いかと。
俺は首と胴が離れ離れになった人だったものを見詰める。
明らかにもう息をしていない。
死んでないなら治してやる事も出来たのだが…………。
まぁ、やってしまった事はしょうがない。
さっさと進むか。
俺は新たな人が現れるまで進み続けた。
新たな人は意外にもすぐに見つかった。
という事はもうそろそろあいつらの本拠地も近いという訳か。
俺は新たに現れた人も先程の人と同じ様に切り捨てた。
もうこいつに聞いたりする必要も無い。
ならば殺すしかないだろう。
俺の足が自然と軽くなっていく。
後ちょっとだ。
後ちょっとでゆうちゃんを奪い返せるんだ。
そう思うと俺の気分も晴れ渡っていった。




