131話 襲撃6
一見俺達の戦いは俺達が優位に進んでいるように見えた。
こちらでは俺たち以外に人的被害は出ていない。
全員きつい思いはしていているとは思うが、それでも俺が片っ端から治していくため死には至らない。
もはや生き地獄の様だが、これもこの街を守るためだ。仕方がない。
そんなみんなの頑張りもあり、そいつらは俺達の所には入って来ていなかった。
みんな初めは少し躊躇していたが、洗脳されていない事を知ったからかどんどんと躊躇が無くなっていく。
まぁ、それを知らなかったとしてもあいつらは狂ったように突っ込んでくるので、そんな躊躇している気にもならない。
ここら一体が血の海になり始めた時、異変は起こった。
「…………何が起こってるんだ!?」
俺は混乱する。
何故なら、今まで普通に戦っていた仲間が次々に倒れ始めたからだ。
どうなっているのか分からないが、全員切り裂かれてしまっている。
俺はそいつらが死んでしまう前に急いで回復をするが、切り裂かれた人達はそれで動揺してしまい、明らかに攻撃の手が止まってしまっている。
まずい、このままだとあの集団に押し入られてしまう。
元凶を探さなくては!
俺はその切り裂かれた人々の元へ駆け寄る。
「何があった!?」
「分からねぇ、気づいた時には体が…………。」
「そうか…………。」
その人はもう精神が限界なのか、立ち向かおうとしてはいたが、体が震えていた。
なんなんだ?
見えない攻撃でもされたのだろうか。
分からないが、元凶はここら辺には居ないのか?
辺りを探すが、特にそれらしい人ば見つからない。
が、切り裂かれている人を追っていくと不可解なものが目に入った。
それは糸だった。
実際には糸なのかは分からないが、きらりと光るその糸状の物が辺りの人を切り裂いていた。
俺はその場所へ向かう。
「くっ!?」
その糸の元へ駆けつけるが、それに近ずいた瞬間、俺はその糸に切り裂かれそうになった。
俺はそれをすんでのところで受け止めようとする。
しかし、その糸は俺の刀をするりと躱し、俺の体を切り裂かんとした。
俺は切り裂かれる寸前で体を完全に治し、その糸を体の中に閉じ込める。
糸は物凄く小刻みに振動しているようだ。
それによって切り裂いていたのだろう。
非常に痛いが、その糸を動かさなくする事に成功した。
その糸を手で掴むと手が血まみれになってしまうだろうし…………。
これをどうしようか考えていると、糸が振動しなくなる。
ちょ、まてよ、この糸どうすれば良いんだよ、まだ俺の体の中に入ったままだぞ!?
そう思って居るとあの集団の中から1人の痩せた金髪の男が歩いてきた。
「へぇ、ここまで生き残ってる街だけあって強い人がいっぱいいるんだね、凄い回復能力を持っている人達ばかりだ。その中でも君は凄いね。」
その男は俺を指差し笑いながらながらそう言った。
「人に指を指すな、不愉快だ。」
「あぁ、ごめんごめん、じゃあそれは返してもらうよ。」
お腹で激痛が走る。
くそ、やられた。
俺が体を治すよりも先に糸を取り出されてしまった。
その糸はその男の方向は飛んでいく。
「この糸は特別製だからね、返してもらうよ。」
その男はその糸を手で掴む。
どうゆう原理なのかは分からないが、その男が持っている間は振動などはしていないようだ。
俺はその男を睨みつける。
明らかに周りにいる烏合の衆とは違う。
確実に実力者だ。
「……………お前はなんなんだ、お前らの目的はなんなんだ!?」
「えぇ、さっきから言ってるじゃないか、救世主様と眠り姫を探すのが目的だよ、我らを救ってくださる救世主様を独占しようだなんて、本当に君達は欲深いね。」
「だからなんなんだ、そんな奴ら俺らは知らないぞ!」
「奴らって、不敬だなぁ。そんなに白を切ろうったってそうはいかないよ? ここにいるのは分かってるんだよ、早く出さないなら…………君達は皆殺しかな!」
そう言ってその男は笑い出す。
本当にこいつらは狂っていやがる。
いもしない人を探して皆殺し? ふざけた話だ。
そんな事は絶対にさせない。
「お前が誰なのかは知らないが、俺達を傷つけるって言うなら、許さない。」
俺は黒鉄を構える。
「ははは、短気だね、まぁ、救世主様が取られるのを防ぐためだったらしょうがないか…………。僕も本気でいかせてもらうよ!」
俺はその男に切りかかった。




