127話 襲撃2
説明を終えたコナーと俺は佐々木と陽夏と合流した。
「それで何処に来てるのかは分かってるのか?」
「うん、そこは抜かり無いよ。」
「流石だな、じゃあここから指揮はお前に任せれば良いんだな?」
「うん、大丈夫。」
コナーはさっきの一瞬で敵の位置や数の殆どを把握したのか…………やっぱりこいつが一番チートだよな。
コナーは俺や陽夏の事をすごいすごいと言うが、実際1番強いのはコナーなんじゃないかと思う。
その後俺は話を黙って聞いていた。
特に話すことが無かったと言うのもあるが、1番は周りに人が多かったという事だな。
こんな人だかりの中で喋るなど俺にはできない。
しかも、周りの人はこちらの事をかなり凝視しているので、そんな中で喋れば俺はそのままダメになってしまいそうだ。
そんな俺は気にせずに2人は会話を続ける。
佐々木はコナーに俺と同じく遊撃手を任命されていた。
確かに佐々木のスキルは暗殺などにはピッタリだろう。
なので、敵の司令部の様な人を殺すには適任なのだろう。
なんというか…………ゴリ押しで突き進んでいく俺よりもスマートでかっこいいような…………。
まぁいいか、どっちにしろやる事は一緒なんだしな。
そこで優劣をつけるというのは無粋という物だろう。
陽夏は俺達とは違い、相手が敵と確定した時に敵を全員殲滅してもらう役割を担う事になった。
相手が敵では無いとしては陽夏の火力は強すぎるので普通に戦うのではなく、優しく意識を刈り取っていったりしなくてはならない。
それだと陽夏も動きにくいだろうし、真価は発揮出来ない。
今回ばかりは陽夏の真価は発揮されないままで居てくれた方が良いんだけどな。
兎に角陽夏はその高い戦闘力を遺憾無く発揮出来る所に配置するようだ。
その後、コナーはてきぱきと他の人達にも作戦を説明していった。
時間はほとんど無いのだが、そこはコナーの凄いところで、非常に分かりやすくかつ効率的にみんなに指示を出して行った。
いつもののほほんとした雰囲気はそこには感じられなかった。
「はは、びっくりしたか? あんななりでもあそこまで出来るんだ、だからこそみんなついていってるんだろうな。」
「あぁ、そうだな。」
コナーの頼もしさはこの目で見てきた。
もう俺はコナーの事を子供扱いなど出来ないだろう。
まぁ、見た目は可愛い子供って感じだけどな。
「…………。」
コナーが一瞬こっちを睨んだ気がした。
勘鋭すぎだろ…………。
そんな気は本当に気のせいだったかのごとくコナーはその後もてきぱきと説明を続けていた。
俺達はコナーの説明が終わった後、最後尾にコナーと一緒に着いて行った。
辺りが緊張感に包まれる。
なんせここの人達もここまで大きな人間の襲撃など経験した事は無いのだろう。
皆息を飲んで来る時を待っている。
「お、おい、なにかきこえねぇか!?」
1人の男が叫んだ。
その声にみんなが反応し、耳を澄ませる。
何かが聞こえる。
その音は近ずいてくるにつれ、大きく、明瞭な物へとなっていく。
その音が聞こえ始めて10分ほどたった頃、やっとその音が何なのか聞こえるようになってきた。
「何を言ってるんだよ、意味がわからない…………。」
俺達は明らかに動揺していた。
その音は非常に大きな足音と、色んな人の声がまざりあった救世主を此処にという言葉だった。
そして、初めのうちは大きな足音だと思っていた足音は、近ずくにつれて人々が一糸乱れぬ動きで歩いている為に鳴っている音だと気づき始めた頃にはもうみんなの顔は恐怖で染まっていた。
しかし、誰も諦めた顔はしていない。
誰もがその音の方向を眺めている。
相手の集団の前方集団が見え始めたのはその直後だった。
俺は、いや、俺達はその姿を見て戦慄した。
そこにいる人々は確かに屈強な体つきをしているものが多かった。
皆かなりの戦闘力を持っている様な風貌をしていた。
しかし、その顔を見るとおかしさが伝わってくる。
その顔の目は虚ろな目をしており、目の周りには深い隈ができている。
しかし、口だけは笑顔をつくっており、同じ言葉を永遠と繰り返し言い続けている。
背筋がゾワッとするような感覚を覚えた。
その人達は本当に生きているのかすら曖昧な程の風貌を全員していた。
ある人は極度に痩せ細り、歩く事さえままならない状態に見えるにもかかわらず、周りと全く同じ動きをしている人さえいた。
全身を血だらけにしてなお周りと同じ動きをする者もいた。
明らかに異常だった。
俺達はその集団に向けて、武器を構える。
しかし、その集団は一定の場所までこちらに来ると全員がピタリと止まった。
足音や声が消え、静寂に包まれる。
嫌な静寂だ。
先程までの不気味な音の響きは無くなったのにも関わらず、この静寂があの集団への恐怖と緊張を引き立てているような気がする。
その時だった。
その集団の真ん中に隙間出来るように一斉にその人達が動く。
一糸乱れぬ動きの先にはスピーカーのようなものを持ったこの中では珍しく綺麗な容貌をした女の人がこちらへと進んできた。




