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114話 夢の記憶



「あ、起きたよ君達ー。」


「うおっ、起きたのか。」



コナーが音もなく起きてきたので、俺はびっくりしてしまった。



「なんだよ、幽霊にでもあったような反応して、僕は全然ぴんぴんしてるよ?」


「あぁ、すまん、あまりにも静かに起きたもんだかびっくりしちまってな。」



コナーが声をかけてくれなかったら俺はコナーが起きた事に気づけなかっただろう。


俺は刀で何が出来るのかを試すために下の階に降りていた陽夏を呼び戻す。



「あ、コナー起きたのね、大丈夫?」


「うん、もう今は痛みも何も無いよ。まぁ、体調が良いとは言えないけどね。」



コナーはいつもの笑顔は崩さない。


しかし、どこかその笑顔も硬いような気がした。



「それで、何か思い出した?」


「うん、さっきよりかはね。」



俺の予想は当たっていた様だ。


あの足を触ると一気に記憶が流れ込んでいるのだろう。


だとすればあの足から流れ込んできている記憶っていうのは自分自身の記憶では無いのだろうか。


まぁ、とりあえずコナーの話を聞こう。



「起きていきなりで悪いが、その記憶について話してもらってもいいか?」


「うん、大丈夫だよ。」



起きてばっかりだから本当はもうちょっとゆっくりさせたいが、コナーも早くあの液体の事を見たいだろうし、早く終わらせたほうが良いだろう。



「んーと、何から言ったら良いかな…………そうだ、その記憶の中で晴輝君みたいだけど、晴輝君じゃない人に会ったんだ。たしか、モルフィスっていう名前だったかな。その人との記憶が思い出せたんだ。」



またモルフィスか、その名前は陽夏の時にも出てきた名前だ。


陽夏もその人の事を俺だと言っていたし、一体そいつは何者なんだよ。



「あ、あとその人は僕の事をセイラって言ってたよ、その時の僕の名前だったみたいだね。」



セイラ…………この前陽夏も自分の名前が違う名前で呼ばれていた。


記憶は少し違うということは、ダンジョンごとに記憶は違うということなのだろうか。


…………だめだ、比較対象が少なすぎる。



「それ以外に何か無かったのか?」


「うーん、特に…………あっ、そう言えば君の事を()()と言って握手していた気がするんだ。よく分からない言語で話していたのに意味は伝わるなんて凄い奇妙な感覚だったけど、その時は特に何も感じ無かったから、あんまり印象に残らなかったから言ってなかったけど、よく考えたら不思議だね。」


「あー、それって教会みたいな場所か?」


「…………そうだったかも。あんまり覚えてないけど、そうだったかもしれない。え? なんで分かるんだい? エスパー?」


「いや、ちょっとな。」



まただ、また陽夏の時と同じ事が起こっている。


やはりこれは陽夏の時と同じ事が起こっていると考えて良さそうだな。


だが、それが分かった所で特に何も吸収などをしていない俺と関係があるというのがよく分からない。


現に陽夏は今回特に何も起こっていないようだし、俺が何かやったとは…………。



「…………夢食(ばく)か?」



今は昇格して夢喰(ばく)になっているが、その能力で俺はあの女の人達を吸収していた。


もしかしたらそれによって陽夏やコナーみたいに何かを吸収したことによって記憶が流れ込んできているのかもしれない。


それなら俺も陽夏やコナーと同じ事が起こっている可能性はある。


しかし、俺は陽夏やコナーとは違い、()という形でその記憶が俺にもたらされているという違いがあるため、一概に同じ事が起こっているとは言えないだろう。


だが、少なくとも関係はしているだろう。



「僕の記憶の話は以上だよ。じゃあ、あの液体を調べても良いかい!?」



コナーは興奮気味に呟く。


やはりコナーはあの液体を調べたくて仕方がなかったようだ。



「あぁ、程々にな。」


「やった! やっと調べられる!」



調べられると分かった瞬間のコナーの動きは素早かった。


さっきまでそこに居たはずなのに、もうあの液体の近くまで飛んでいっていた。


そして、変な声を上げながらあの液体を調べていた。



「はぁ、これは長くなりそうね。」



コナーはずっとブツブツと言いながら液体を眺めていた。


そしてその液体に指を突っ込んだりして笑っていた。


うん、ちょっと怖いな。


しかし、しっかりと真面目に時間は気にしてたようで、1時間程たった後戻ってきた。



「はぁ、本当はまだまだ調べたいところだけど、今日はこのくらいにしておく事にするよ。」



コナーは名残惜しそうにそう言う。


いや、もう1時間は経ってるんだが?


コナーの時間感覚がこんなに狂っているとは…………。



「それで、あの液体はなんだったんだ?」



なんだかんだ言って俺もあの液体の事は気になっていた。


あの液体がやばいものだったらあれに手を突っ込みまくった俺はやばいからな。



「えっとね、結論から言うとあれは生き物だったよ!」


「えっ。」



俺はその言葉を聞いて絶句した。

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