112話 次はコナー
それからまたウルフが出てきた時も同じようにウルフに立ち向かった。
次からは陽夏も弓を使うことに慣れたのか、ほぼ百発百中で矢を当てることに成功していた。
「っよし! 当たった!」
陽夏は当たるために無邪気に喜んでいる。
別にそれ自体がおかしな事では無い。
こんな事が出来る人だって居る。
けど…………。
「お前習得早過ぎないか!?」
陽夏は一番最初にミスをしたっきりこれといったミスはしなくなった。
というか、最初から習っていたかのような動きだった。
あれ、これまさか俺に伝えてないだけで昔弓道部に所属していたとか!?
「え、陽夏昔弓道とかやっていたのか!?」
「え? いや? そんな事無いよ?」
「じゃあなんでそんなに弓が使えるんだよ、上手すぎるだろ!」
「あー、それが何かこの前の記憶が何とかしてくれてるみたいなのよ。」
「記憶が?」
そういえばこれが使えるのが元々あの記憶が出てからの話だ。
なので弓術もその記憶に含まれていたのか?
「うん、何となくだけど使おうとした時に何か使い方が何となく分かるのよ。剣術とかのスキルを手に入れた時と似たような感覚ね。」
「そうなのか、弓術みたいなスキルでも手に入れたりしてないのか? コナー、調べてみてくれ。」
「おっけー。」
そう言って陽夏を見る。
「うーん、特に無いみたいだね。弓術っていうスキルはあるけど、陽夏ちゃんは持ってないみたいだね。」
そうか、ならやはり記憶によるものなのか。
「じゃあ、コナーも何か使えるようになってたりするのか?」
「僕はまだかなー。その腕みたいなやつを吸収したら何か起こるんじゃないかな?」
「確かに、陽夏が使えるようになったのもそれからだもんな。」
つまり、コナーが何か使えるようになる時はそれ以降というわけか。
ますます上に進むしかないな。
それからはしっかりとウルフに対処していき上に登っていった。
ゴブリンのダンジョンと同じようにスキルを手に入れられる石である夢の石も手に入った。
ゴブリンのダンジョンとそこまで手に入るスキル構成的には変わりは無かった。
ゴブリンのダンジョンでもウルフのダンジョンでも初期的なスキルだった。
コナーもそういうスキルのレベルが物凄く高い訳では無いので、夢の石を使う事によってかなり身体能力が向上したようだ。
そしてコナーがそれを使ってもやはり石は治ったので、鞄に入れ持ち帰ることになった。
コナー曰く前の石は街を守っている人で適任な人に渡されたようだ。
これでかなり防衛能力が上がったと言っていた。
今回持ち帰る事によりさらに上がるだろう。
しばらくすると、またあの機械だらけの部屋に着いた。
やはり俺の仮説は当たっていた様で、最後の部屋から数時間経つとその部屋に着くことが出来た。
「わぁ、ここが君達が言っていた部屋か…………本当だ、凄い雰囲気だね。あの洞窟のような所からここが出てくるとなんだか秘密の研究所みたいでちょっとワクワクしないかい? 僕だけかな?」
「あぁ、分かるぞ、ちょっと心躍るよな。」
「あんた達何言ってるのよ、早く行きましょ。」
別にそんなこと言わなくたって良いじゃないか。
俺達みたいな男の子はこういうものが好きになっちまうんだよ!
まぁ、そう思ったが、そんな事言っても何にもならないので、素直に陽夏に従って機械の部屋へと進んだ。
部屋の内装はゴブリンのダンジョンとほとんど同じで、機械だらけの部屋の真ん中に金属の筒と赤いボタンがあり、非常に異質な雰囲気を醸し出していた。
「それで、このボタンを押せばいいのかい?」
「あぁ、そうなんだが…………まずは周りを見て回ろう。」
「おっけー。」
まぁ、周りを見まわらなくてはいけないと言うのはある。
いくらゴブリンのダンジョンと似ているからと言って全く同じ部屋だとは限らない。
似ているだけで全く違う事が起こる部屋だって言う可能性だって大いにありえる。
だからそれを調べなければいけないという事もある。
だが、それが全てでは無い。
俺が一番に試したいのは、コナーがあの時の陽夏のようになるのかだ。
あの時は陽夏も俺も少しおかしかったが、今回はコナーが何かを吸収し続けているため、今回はコナーがおかしくなるのでは無いかと考えている。
そうなると、コナーがおかしくなってボタンを押してしまうはずだ。
「コナー、今の所ボタンが押したくなったりはしてないか?」
「うん、別にそんな事は無いよ?」
「陽夏は?」
「私も無いわ。」
よし、まだ2人とも大丈夫そうだな。
コナーがおかしくなると俺は考えているが、また陽夏がおかしくなってしまう可能性だってあるし、俺がおかしくなってしまう可能性だってある。
だからこそ注意深く周りを観察していなければならない。
それから少し探していると、案の定コナーが俺に話しかけてくる。
「ねぇ、もし今僕がボタンを押さなきゃいけないって感じてるとしたら、君は僕を止めたりするかい? 僕がおかしくなっているって思うかい?」
「…………押したいのか?」
「あぁ、今回は僕がおかしくなる番みたいだね、分かってるんだけど、このボタンは押さなきゃならない、本当にそう思うよ。」
「やっぱり今回はコナーだったか。まぁ、前回は特に押す時に何か起こったりはしていなかったし、押すだけならいいぞ。」
「分かった。じゃあ、押すね。」
コナーはそういうとボタンを押しに向かった。




