110話 見えない
俺は教会のような場所に居た。
体は俺の指示では動かない。
そのまま俺は書類のような物を書き続ける。
こんな作業俺なら嫌になるはずだが、不思議とそのような気持ちにはならなかった。
黙々と作業を続けていると、大きな音を立てて扉が開かれる。
扉の先には黒髪の女の人が立っていた。
俺はその人に何かを言い、立ち上がり、その人の元へ向かっていく。
その女の人は俺に何かを言った後、自慢げに胸を張った。
オレはその女の人の頭を撫でようとしたが顔を真っ赤にしたその女の人に阻まれてしまう。
その女の人はぷりぷりと怒っている。
俺が何かを言うと、その女の人はブツブツと何かを呟きながらぷいっとそっぽを向いた。
それでもなお俺が何かを言い続けると、その女の人は、やれやれと言った感じで肩をすくめ、手を差し出す。
俺はその差し出された手を握る。
すると、その女の人の顔が笑顔に染る。
その顔を見て俺は不思議と幸せな気分になった。
俺はそのままその女の人と一緒に外に出ていった。
◇◇◇◇
「晴輝!」
「晴輝君!」
俺が目を覚ますと、陽夏とコナーが視界に入った。
あれ、俺は何をやって…………。
「痛っ。」
「大丈夫!?」
「大丈夫かい!?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。」
そうだ、俺は倒れてしまったのか。
まぁ、あそこまで耐えられただけでも上出来だろう。
あれ以上は耐えられる気がしなかった。
あれは仕方がなかった事だった。
それにしてもまだ頭の痛みが引かない。
俺はその痛みを治して痛くなくする。
うん、完璧だ。
痛みは完全に引いた。
それに、少しの時間気絶いていたためか、情報もしっかりと処理できたようだ。
さっきの力のことはしっかりの俺の頭の中に入っている。
「と言うか、コナーも起きたんだな。」
「うん、お陰様で体調は万全だよ。」
「それは良かった。」
よく良く考えれば俺が気絶している間にコナーの容態が悪化していたら危なかったな。
何事もなくて良かった。
俺がホッとしていると、陽夏が険しい表情で俺に問いかける。
「それで、何があったの?」
「あぁ、この前箱を開けてた時にスキルの限界が解除された事があっただろ? あの時と同じ事が起きたみたいだ。2回目だし耐えられると思ったんだが…………まぁ、無理だったみたいだ。」
「そういう事だったのね、じゃあ、別に今何か悪いことが起こってるとかでは無いのよね? 今晴輝は平気なのよね?」
「あぁ、ピンピンしてるぞ。」
「そ、そっか、良かったわ。一時はどうなる事かと思っちゃったよ。」
「あぁ、本当にすまない、不安にさせただろ?」
1人にされるの事辛さは俺が1番分かっているつもりだ。
1人は辛い。
そんな思いを陽夏にさせない為にも頑張って気絶しないようにしたが、結局俺は気絶した。
陽夏には本当に悪い事をしてしまったと思っている。
「別に晴輝が謝ることじゃないわよ、不可抗力でしょ?」
「いや、けど俺がもっと気をつけていれば…………。」
「もぉ、別にいいって言ってるでしょ! 晴輝が無事ならそれでいいの!」
「そ、そうか、ありがとう。」
俺は陽夏の圧に押されてしっかりと謝ることができなかった。
後で何かで恩返しするか。
俺が陽夏と話終えると、次はコナーが話しかけてきた。
「晴輝君、君今本当に体調良くなってるんだよね?」
「え? あぁ、万全だぞ?」
コナーが謎の質問を投げかけてくる。
万全も何も、コナーの力があれば見れるじゃないか。
「何か、さっきから君の事がよく見れないんだ。スキルとかはだいたい分かるんだけど、他の部分が所々分からないというか…………。とにかく何か心当たりは無いのかい? 例えば新しく限界突破したスキルの効果とか、そういう事とかないかな?」
俺が新しく限界突破したスキルは蠱惑だった。
その怖くが限界突破して、美しいというものになった。
使い方は主にものを美しく見せること、つまり、自分の容姿を美しくさるのは勿論、相手の容姿を美しくしたり、戦い方を美しくしたりなど、多種多様な使い方がある、
しかし、そんな見えにくくする効果は無い。
どちらかと言えば見えやすくするスキルだ。
その事をコナーに伝えると、おかしいなぁ、とうなり何かを考え出してしまった。
「それ以外には夢食が夢喰になったみたいだけど、効果は特に変わってないみたいだし………。うーん、何なんだ?」
「それ以外に何か変わった事とかも無いんだけどな…………。」
俺達はそこで考え込んでしまう。
しかし、考えても考えても答えは出ない。
「あぁもう、分かんないや、とりあえず先に進めって事なのかな?」
「そうなのかもな、これ以上考えても答えが出るとは思えないしな。」
俺達はそう言ってまた先に進もうとした。
「あっ、ちょっと待って!」
先に進もうとしたが、そこでコナーに引き止められる。
「そういえば言ってなかったけど、さっきあの目を吸収した時にまた記憶が戻ったかもしれないんだ!」
「なんだって!?」
それ今いちばん大切な情報じゃないか、忘れないでくれよ。
コナーの記憶というのは今からの謎を解き明かすための鍵となっている気がする。
俺は進むのをやめ、コナーの話を聞くことにした。




