109話 美
俺達と女の人が睨み合う。
「コナー、何とか出来そうか?」
「うぅん、分かんない。けど、出来る限りはやるよ。」
コナーの顔はその弱気な発言とは裏腹に不敵な笑みを浮かべている。
頼もしいな。
コナーならやってくれるんじゃないか、そう思わせてくれる笑みだ。
「晴輝君、何があっても大丈夫な準備はしておいてくれないかい? 出来る限りはやるけど、何が起こるかは分からないからね。」
「あぁ、そこのところは任せてくれ。」
全てをコナーに任せる訳にもいかない。
コナー1人に負担をかけるというのは違うからな。
それでも今回はコナーに頼るしかないので、俺は俺に出来ることをやらなくてはいけない。
俺は何時でもすぐに目を治せるように全員の目を瞬時に治せるように準備しておく。
これならいきなり目を潰されても大丈夫なはずだ。
俺が準備を終わらせた事を悟り、コナーが能力を使う。
【鬼眼-閉-】
コナーの目が赤く光る。
その輝きはあの女の人にも繋がり、女の人の目を閉じさせた。
女の人は動揺したのか、よく分からない言語で叫んでいる。
「ぐっ、来るっ!?」
コナーが急に目を抑えた。
まずいな、コナーが何かの技を受けたみたいだ。
俺はすぐさまコナーの目を治す。
が、治しても治しても傷ついていく。
「くっ、こうなったら僕からも迎え撃つしか無いみたいだね。」
コナーは短くため息をついた。
【鬼眼-潰-】
コナーの目が閉じている状態でも分かるほど赤く発光する。
俺は何が何だか分からず、コナーの目を治し続ける。
直後、コナーの目から夥しい量の血が吹き出す。
「ふっ、晴輝君、あとは頼んだ……よ…………。」
ばたりとコナーの体が崩れ落ちる。
「コナー!?」
俺も陽夏はコナーに駆け寄る。
俺はコナーを必死で治す。
うん、気絶しているだけで、大丈夫そうだ。
女の人の方を見るとそちらも地に伏している。
それにしても無茶しやがって、俺達に散々危険な事は避けろと言っておいて自分は危険な事ばっかりして…………。
…………まぁ、俺達も似たようなものか。
俺は未だコナーに張り付いている陽夏を引き剥がす。
「陽夏、コナーは大丈夫そうだ。ただ気絶しているだけみたいだ。」
「ほ、本当!? 良かったぁ、コナーも晴輝もなんでその年代の人達は無茶ばっかりするかなぁ、なんかそういう教育でも受けてたの?」
「…………それはすまんな。」
別に俺達は同じ教育なんて受けていない。
と言うか俺はそもそも普通に教育を受けていないので、そんな事が起こるわけ無い。
それでも、確かに俺とコナーは似ている所はあるのかもしれないな。
性格や体型とかは全然違うし、価値観も全然違うだろう。
だけど、何かそういう所じゃない根っこの部分のようなものが近しいものがあるのかもしれないな。
ともかく、コナーは少し無茶しすぎた。
一旦少し休んでもらう事にしよう。
どうやらもう危機も去ったみたいだしな。
俺は女の人の近くによる。
この女の人は気絶をしているというより、瀕死と言った感じだな。
一応息はしているが、びっくりするほど弱弱しい物だし、体も青ざめている。
よくこの状態で生きていられるなと思うほどだ。
俺は女の人の鞄から目を取り出す。
それをコナーの横に起き、もう一度女の人の元に戻る。
俺は女の人の頭に手を乗せ、いつも通りスキルを使う。
【夢食】
【スキル《夢食LV10》を入手しました】
【スキル《夢食LV10》がスキル《夢喰LV1》に昇格しました】
【スキル《蠱惑LV10》を入手しました】
【Пибрни дииативнй вати 【美】】
俺の頭にとんでもない量の情報が飛び込んでくる。
しかし、同じ事を1度経験している俺の判断は早かった。
素早く脳みそを治す。
直後激しい頭痛が起こる。
情報の一つ一つが俺の脳みそを破壊せんとばかりに暴れ回っている。
1つの脳みそが処理出来る許容範囲を易々と超えたその情報量を処理するために俺の脳は自己を犠牲にして情報を処理しようとする。
そしてそれを俺が治し続けると言う構図が俺の中で繰り広げられていた。
「ちょ、晴輝まで!? 大丈夫なの!?」
「ぐうっ!?」
ちょ、陽夏、黙ってくれ!!
その言葉1つが俺の脳を破壊してるんだよ!
だが、そんな事を伝える為の脳も今は使えない。
常に痛みに耐えながら、緻密に脳を治していく。
情報量の多さはその時その時で変わるので、いつピークかが分からないというのもきつい要因の一つだ。
だが、それでも俺は耐える。
このまま倒れてしまえば陽夏1人にしてしまう事になる。
こんな所に1人だけで居させるなんてさせる訳にはいかない。
だからこそ俺は脳をフル稼働させて脳を治す。
すると、段々と情報量が減ってくる。
それと共に痛みも少しづつ減っていった。
「ふぅ…………。」
俺はため息をついた。
痛みはある程度去った。
しかし、今のはなんだったのか…………。
そこで俺は気づく。
今それを考えてしまうと処理された情報が一気に出てきてそれ全てを理解しようと脳が働く事に。
「…………すまん、陽夏…………。」
「ちょ、え、晴輝!?」
俺は陽夏のその言葉を聞いたのを最後に意識を失った。




