108話 目潰しの女の人
陽夏とコナーが起床し、俺達はまたダンジョンを進み始めた。
なんだか最近ずっとダンジョンにいる気がするな。
まぁ、ただただ最近ずっとダンジョンに潜り続けているだけなんだがな。
次の回からのウルフはさらに強化されていて、未だに一撃で倒せる事には変わりは無いのだが、少しづつ余裕がなくなって来た。
しかし、コナーのお陰で奇襲を受けることは無く、逆に奇襲を仕掛けられるのでまだまだ大丈夫そうだ。
そんな感じで進んでいったので、次の女の人に会うのにはそう時間はかからなかった。
今回は前回の事もあり、警戒して進んでいく。
ウルフを殲滅し、残りはあの女の人だけになる。
俺達はその女の人を警戒した。
しかし、女の人は普通に逃げていってしまった。
その後鞄を地面に置き、オロオロとしている。
「この人は…………大丈夫みたいね…………。」
その女の人はさっきの女の人とは挙動が違っていた。
さっきの女の人は俺達に気が付いても逃げようとはせずにある程度の距離を保って警戒していた。
対して今回はすぐに逃げてしまった。
多分これがあの目の力を使う女の人と使わない女の人の違いなのだろう。
とりあえずコナーが鞄の中に入っていた目を吸収する。
その後その女の人が近ずいてくるので、俺は夢食を使った。
【夢食】
【スキル《蠱惑LV9》を入手しました】
【スキル《運送LV9》を入手しました】
【スキル《超回復LV6》を入手しました】
【スキル《超回復LV7》を入手しました】
前回超回復をかなり使ったからか、今回はこれのレベルがかなり上がった。
これのレベルの上がり方はよく分からないが、多分最近使ったスキルなどのレベルが上がるのだろう。
「ねぇ、晴輝君、確か君たち記憶を思い出したと言ってたよね?」
「あぁ、言ったぞ? それがどうかしたのか?」
俺達は塔を登っていく度に何かの記憶が蘇ってきた。
今回俺はそこまで蘇ってはいないが、少なくとも何かは感じていた。
妙な既視感。
これはどこのダンジョンでも同じなのだろうか。
「君達が言っていた記憶っていうのが僕にも出てきた様だよ。結構不思議な感じだね。自分の中に自分以外の記憶がある様な感覚だ。だけど、その記憶も確実に自分のものだっていう感覚もある。何なんだろうね、これ?」
コナーが興奮気味にそう言った。
俺はそこまでの記憶は無いが、コナーは俺よりもさらに記憶が戻っているのだろうか。
「陽夏ちゃんもこんな感覚だったのかい?」
「うん、多分そんな感じかな? どんな記憶とかは分かるの?」
「うーん、まだ分からないかな。」
「そっか、まぁ、もう少し進めば分かるのかな?」
「多分ね。」
ゴブリンのダンジョンではあともう1階分の女の人が居るだだっ広い部屋を抜けるとあの機械の部屋に出た。
そこで陽夏はかなりの記憶が思い出すような感覚があったようだし、コナーもそこで何かが起こるかもしれない。
「さっ、進みましょ! こんな所で考えてばっかじゃ何も始まらないわよ!」
「うん、そうだね、そろそろ進もうか。」
俺達はまたダンジョンを進み始めた。
今の女の人の部屋を抜けた先のウルフもそこまでの労力を使わなくても倒せる様だったので、どんどん進んで行った。
ここまで順調だと何か起こってしまいそうで怖いが、今の所そんな事は起こらず、また次の部屋に着いた。
「うーん、今回もあの目潰ししてくる女の人が出るのかな?」
「かもな。」
「じゃあ、次は僕も目の力を使ってみるよ。どうにか攻撃を防げたりしないか試してみるからさ。」
「おぉ、頼んだ!」
コナーのその一言はとても頼もしかった。
確かにあの目潰しをされたとしても俺は大丈夫だ。
陽夏やコナーもかなりキツそうではあるが、死ぬ訳では無いし、はっきりいってそのまま攻撃されたとしても大丈夫なのだ。
それでも、痛いのは嫌だ。
それに俺よりも痛みを感じているはずである陽夏やコナーの方が嫌だろう。
だからこそ、それを防げるかもしれないというコナーの言葉は頼もしかった。
「じゃあ、突入するよ!」
俺達はそのまま階段を登った。
一発目に陽夏が強力な一撃を放ち、近くのウルフ達を薙ぎ倒す。
相変わらずの威力で半分以上のゴブリンが倒される。
その横から俺が出ていき、ウルフを倒していく。
その時にコナーの支援によりウルフの動きが明らかに悪くなるため、楽に倒せる。
そして目の動きを奪っているからか、ウルフ達が混乱して他のウルフとぶつかったりもしているので、自滅も含めてどんどんとウルフの数が減っていく。
あっという間にウルフは全滅した。
「みんな気をつけて! あの女の人逃げない!」
俺達の間に動揺が走る。
俺達は女の人を睨む。
その視線に女の人はビクッとするが、それでもなお逃げはしない。
やはり戦うしかないのか。




