表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/216

107話 温かい桃



夢食(ばく)




【スキル《夢食LV9》を入手しました】



【スキル《蠱惑LV8》を入手しました】



【スキル《運送LV7》を入手しました】



【スキル《運送LV8》を入手しました】




運搬が昇格したスキルの運送のレベルなどが上がったようだった。


運送は今の所運搬の上位互換のような存在で、まだ特に他の能力は分かっていない。


女の人が吸収されると俺の手に着いていた血は消えてなくなった。


こうやって血などが出る所からこの人達は人間なのかそれともモンスターなのかが分からない。


人間がモンスターとして出ている可能性もあるし、この人達はただモンスターという可能性だってある。


この人達は殺されても安安は死なないし、首一つだけでも生き残る。


しかし、首を切られると体が消えること等は完全にモンスターの特徴と同じであるため、ますますよく分からない。


だが、俺達が人間を切ってきたと思うのも嫌なので、モンスターを切ってきたのだと考えることにしよう。



「はぁ、油断してたわ、まさかあんな攻撃を受けるなんて…………。」


「そうだね、対策しようも無い事だけど、もっと緊張感を持っていればこんなに混乱しなくてすんだかもね、本当に晴輝君が居てよかったよ。」


「本当だよ、まぁ、俺も気は緩んでいたが、死んでしまっては俺でも治すことは出来ないんだからな?」



俺がそう言うと、2人は神妙な面持ちでこくりと頷いた。


うん、素直でよろしい。



「ねぇ、今のでどっと疲れちゃった。一旦休まない?」


「そうだね、僕もちょっと疲れたよ。」


「そうか、じゃあ睡眠を取るのも兼ねて休みを取るか。」



俺達は一旦そこで休憩を取るとこにした。


ここまで上がるのにも中々の時間が経っているし、俺のスキルの効果などもあって体力的にはまだ大丈夫かもしれないが、それでも定期的に休憩はとった方がいい。



「じゃあ缶詰でも食べるか……………。」


「ちょっと待って!」



コナーが俺の手を止める。



「これをかけて食べると良いよ。」



そう言ってコナーは何かの薬を取り出した。



「何の薬だこれ?」


「いいからかけてみてよ!」


「お、おう。」



コナーがそういう時はろくでもないことばかり起きている気がするんだが…………。


まぁ、いいか、食べ物に毒を入れる訳でも無いしな。


俺はその薬を缶詰にかけた。


その瞬間、ジュワーと煙が上がる。


それと共に缶詰が熱くなっていくのが分かる。


俺はたまらず缶詰を床に置いた。



「ふっふっふっー、凄いでしょこの薬。物を温めることが出来る薬だよ! ずっと冷たい物を食べるのも嫌だろうし、温かい物を食べてもらおうと思ってね。」



コナーはその薬を陽夏にも渡す。


コナーがあの栄養剤のようなものも持ってきているので食べ物を食べる必要は無い。


というか、俺はそもそも食べ物を食べる必要など無いのだが、やはり美味しいものは食べたい。


食欲はなくとも、お菓子が食べたくなるのと同じだ。


何をやるにしても嗜好品が無くてはやる気が出ないものだ。


少なくとも俺達はそうだ。


それでも冷たいのは仕方がないと思っていた。


温めるための物を持ってくるのはいいが、如何せんかさばってしまう。


だからこそこの薬は貴重だ。


かけるだけでものが温まるなんて最高じゃないか。


俺は食べていた()()()()を持ってそう思った。


…………いや、別にいいよ? 温かい桃だって美味しいよ?


けどさ、せっかく温かいならもっとあのたこ焼きとかさ、魚系とかそういうのがいいじゃん。


なんで桃にかけさせたん?


え、嫌がらせ?


俺は少し疑心暗鬼になったが、コナーを見ると特にそんな様子は無く、ただただ胸を張って自慢をしているようだった。


あっ、この人こういう所は抜けてるんだな。


コナーの意外な弱点が見れたようで少し嬉しい半面、温かくなった桃を見て俺は虚無っていた。


まぁ、食べますけどね?



「…………うまっ。」





◇◇◇◇




俺の横では陽夏とコナーが寝息をたてている。


このふたりが並ぶとなんだか兄妹を見ているようだ。


まぁ、どちらかと言えばコナーが弟に見えるけどな。


ここで起きているのは俺だけだ。


こういう時に俺の寝なくてもいいというスキルが有用になってくる。


確かに睡眠を取らずに一日中作業をし続けられると言うのは物凄く便利な事だ。


しかし、それは時間をかければいくらでもできる。


時間よりも価値があるのが命だ。


俺のこのスキルは命を守る事が出来る。


寝ている時に襲撃でもされたらかなり危険だ。


寝ている時まで気を張り詰める事などできないし、できたとしても睡眠の質が驚くほど落ちる。


そこで俺のスキルを使えばみんなが寝ている間にずっと皆のことを守り続ける事が出来る。


何かあればとりあえず俺が盾となり、その間に2人を起こしてそれから戦うとかでもいいだろう。


なのでとにかく俺は起きて周囲を警戒していなければいけないのだ。


この部屋にはモンスターは居ないが、何が起こるか分からないからな。


だからこそ、監視をするのはいい。


だけど、なんか少し寂しいのは事実だ。


なんだか自分がどんどん人間じゃ無くなっていくような…………いや、馬鹿な事は考えるな。


俺はれっきとした人間だ。


日本で生まれ日本で育ったれっきとした人間だ。


…………変な事を考えるのはよそう。


俺はまた警戒を続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ