105話 目潰し
それからダンジョンを進んでいくと、ウルフのダンジョンはゴブリンのダンジョンと同じ様に変化して言った。
あの女の人が居ただだっ広い部屋を抜けると次からは普通に出てくるモンスターが強くなり、出てくるアイテムも良い物になっていく。
そしてまたある程度進んだらあの女の人が出るだだっ広い部屋が出現した。
ゴブリンのダンジョンとは出てくるモンスターもアイテムも内装も違うが、そこが同じだったのである程度余裕を持って進むことが出来た。
しかし、唯一違ったのが、殆どの女の人が俺達を襲って来なかった事だ。
前までは少なくとも最初の方は襲って来たのにも関わらず、今回は全然襲ってくる様子が無かった。
俺やコナーは特になんとも思っていたかったが、完全に戦いたがっていた陽夏は襲ってこないと分かる度に落胆していた。
まぁ、前回のゴブリンのダンジョンでは激闘を繰り広げていただけあってか、今回のダンジョンは刺激が足りないというのは分かる。
それに陽夏位の年齢だと1番刺激が欲しい時期だろう。
俺はもうそんな年齢はとっくに過ぎているし、なんならその頃に何か刺激を求めていた記憶なんて無い。
それに楽しいのとこをした記憶だって一切ない。
俺には虐められていた記憶しか…………。
うん、変な事考えるてたら自分で自分を痛めつけるようなものだ。
変な事はよそう。
そんなこんなでかれこれ四つ目のあのだだっ広い部屋へと辿り着く。
かなり強化され、非常に鋭い爪とがっしりとした体付きをしたウルフや、細身で華奢だが、非常に素早い動きをするウルフなどが現れた。
しかし、それも普通のウルフと比べたらの話だ。
超強化された俺達にかかればそいつらを殲滅する事など造作もない事だった。
陽夏は退屈そうだったが、とりあえずは我慢してもらうしかないだろう。
陽夏もホテル街と為には仕方がないことだと理解しているためか、特に文句を言う事は無かった。
「ふぅ、ラスト!」
俺が最後のウルフを倒した。
ウルフを倒し切ると、女の人が出てきた。
俺達はゆっくりと近づいて行く。
女の人は震えながら後ずさっていく。
そんなに俺たちが怖いのか?
まぁ確かに美少年と美少年を俺みたいなおっさんが連れている集団など異様でしか無いが、そこまで怖いものじゃないと思うけどな…………。
まぁ、ダンジョンの外から来た者と言うだけで畏怖の対象なのだろう。
しかし、いつもこの人達は途中で心変わりでもしたのか、ゆっくりと近ずいて鞄の中の目を俺達に渡し、そして最後には俺に吸収されに近ずいて来るのだ。
今回もそうなのだと思い、ある程度近くまで行き、そこで待つ。
いつもならあと数十秒待てばあの女の人は近ずいてくる。
俺達はそれを待つが、その時は一向に近ずいてくる様子がなかった。
「あれ、どうかしたのかな?」
「うぅん、今までの行動もよく分からなかったからな、今回は奪い取ったりでもしなくちゃいけないのかな…………? けど、あんなに怯えている人を攻撃したくは無いよね…………。」
「そうだな…………。」
俺達はどうしたらいいのか分からず、ただただその女の子を見つめていた。
その瞬間、目が赤く染まる。
突如襲い来る鋭い痛み。
周りでは陽夏とコナーの悲痛な叫びが聞こえる。
くっ、油断していた。
あの女の人の力だろうか。
分からないが、とりあえず俺は目を治す。
……………くそっ、なんだこれ、全然治らない。
常に痛みを伴いなが、俺の目を襲う痛みに俺は抗いつつ、目を開く。
痛い、痛いが、視界は確保出来た。
一応治し続けていれば治らないことも無いようだ。
俺は周りに居た陽夏とコナーも治す。
俺の治療は程々にして超回復に任せた。
超回復は治した所を強化したりもしてくれるため、俺の目はある程度大丈夫なはずだ。
俺が治した瞬間、コナーはすぐに目を見開く。
コナーはもう大丈夫と言って俺の治療を断る。
流石コナーだ。自分はいいから陽夏を治してくれという事なのだろう。
すぐに治ったのはコナーの能力のお陰もあるかもしれないが、少なくとも本人もめちゃくちゃ痛いはずだ。
実際今でもコナーの顔は苦悶の色に染まっている。
それでもコナーは周りを見回し始める。
俺は女の人のことはコナーに任せ、陽夏の目を治す。
やはり治りにくい。
これは毒とは違うが、治しても治してもまた目がダメになっていくような感じだった。
「コナー女の人は!?」
「えっと…………死んでる?」
「…………どういう事だ?」
「分かんない…………っ、とりあえず僕も治してくれないかい? 何か女の人はもう大丈夫みたいだからさ。」
「分かった。」
よく分からないが、女の人は自爆技でも使って俺達を攻撃したのだろうか。
まぁ、確かにあの状態で俺レベルの治す能力が無ければ確実に帰れなくなって餓死してただろうな。
そう思えば自爆技としては優秀な物なのだろう。
コナーよりも陽夏の方が重点的に治しているが、陽夏はまだ治りきっていないようで、目を押さえて顔を歪ませていた。
そのまま俺は2人を治し続けた。




