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104話 未来予知



女の人は一直線に俺に向かって近ずいてきた。


その女の人は俺に向かって手を出した。


俺は魔法かなにかを撃つ構えかと思い黒鉄で防御しようとしたが、特に魔法などが打ち出されたりはしなかった。


どうやら手を差し伸べて握手を迫っているようだった。


意図が分からなすぎて混乱が深まる。


俺は陽夏とコナーに助けを求めるべく視線を送った。


陽夏は首を傾げて微妙な顔をしていたため、特に何か分かっている訳では無いようだ。


しかし、コナーは何か分かっているようで、不敵な笑みを浮かべていた。



「へぇ、成程ね…………。」


「コナー? 俺はどうしたらいいんだ?」


「あぁ、えっとね、そのまま握手して、夢食(ばく)を使えばいいよ。」


「信じていいんだな!?」



コナーはいきなり的確な指示を出してきた。


そうか、そう言えば前回は頭に手を当てたりして夢食(ばく)を使いあの女の人達を吸収したりしてきた。


今回の女の人もそうすれば吸収出来るのかもしれない。


トリガーは身体の接触だろうか。


コナーが握手をすれば使えると言っているので、そういう事で良いだろう。


俺は差し出されていた手をそっと握った。


その手は恐怖を感じているのかはたまた緊張しているのか分からないが、かなり震えていた。


その女の人を観察してみるが、その女の人は気まずそうに目を逸らして何かを呟いた。


なんて言っているのかは分からないが、多分急かしているのだろう。


俺はそれに従い女の人を吸収する。




夢食(ばく)




【スキル《夢食LV6》を入手しました】



【スキル《蠱惑LV4》を入手しました】



【スキル《運搬LV7》を入手しました】



【スキル《運搬LV8》を入手しました】




頭の中で声が鳴り響き、スキルがレベルアップする。


これは本当に何が起こっているのか分からないが、ただ、レベルアップする事はいい事なので、気にしないでおこう。



「へぇ、これがその能力の力なのか…………うん。スキルのレベルもしっかり上がってる。化け物レベルのスキルだねその夢食ってスキルは。」


「まぁ、そうだな。って、そんな事よりもさっきはなんであんなに的確に指示が出せたんだ?」



俺からしたら夢食の効果よりもそっちの方が気になる。


握手をすれば夢食が発動するなんて俺ですら知らなかったし、それを持ってもいないスキルのはずなのに急に指示が出せるはずがない。


この前見てもらった時だってそこまでの詳細まで分かっている様子ではなかった。


なのにそんなにすんなり指示が出せるのは少し不自然だった。



「あ、それ私も思った! コナーは元々的確な指示とか出せる人だったけど、さっきのは明らかにおかしいくらい的確だった!」


「ふっふっふっ、君達気付いてしまったんだね。」



コナーが胸を張る。


うん、ちょっと可愛い。



「そう! 僕の能力が強化されたみたいなんだよ!」


「な、なんだってー?」



コナーの言い方につられて俺もオーバーなリアクションをしてしまった。



「みんな知っての通り、僕は未来予知をできる能力があったでしょ? それが強化されたんだよ!」



待ってくれ、チート能力すぎないか?



「まぁ、自由自在に見れるわけじゃ無いけど、自由度は上がったよ。例えば精度は下がるけど今までよりも未来の事が見れたり、精度を下げて1分後の事を見たりすることが出来るようになったんだ。さっき的確な指示が出せたのはこれのおかげって訳だね。」


「うわぁ、チートじゃない。」



いや、それはお前も大概だけどな?


これでさらに俺との差が着いてしまったな。


俺と比べてこの2人は優秀すぎる。


スキル的には俺の方が勝っているのだろうが、それ以外が圧倒的すぎる。


多分スキルを手に入れる前からの能力が違うんだろうな。


まぁ、こんな事を考えていてもしょうがない。


俺は俺の出来ることをしよう。


今回で運搬のレベルだって上がったし、便利にはなったはずだ。


それでも最近俺の戦闘能力があまり上がっていないのも事実だ。


何とかしなくてはな。



「まぁ、連発は出来ないけど、戦闘でも使える様になったら強いだろうから、この能力を磨いていこうと思うよ!」



コナーはそう言う。



「じゃあ、もうそろそろ進むか? それとも少し休むか?」


「私はまだ行けるけど、コナーはどう?」


「うーん、僕もそんなに疲れた訳じゃないけど、一応休んでおきたいかな。ダンジョンも久しぶりだし出来るだけ万全の状態にしておきたいからさ。」


「そうか、じゃあ少し休むか。」



俺は鞄を地面に下ろし、地面に座った。


湿った地面の上に座るとぐちゃりとした嫌な感覚がズボン越しに広がる。



「こんな事になるならレジャーシートでも持ってくれば良かったね。」


「そうね、何か敷物でもあれば…………あ、そうだ、あの毛皮みたいなのがあるじゃない!」



おぉ、確かに良いアイデアだ。


あの毛皮はそこまで厚いものでも無かったので、適しているかもしれない。


俺は何枚かだけ入れて置いた毛皮を鞄から取り出し、床に引いた。



「これはこの為にあったのかな?」


「かもな。」



俺たちはそうやって少し休んだ後、またダンジョンの攻略を再開した。

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