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102話 ウルフのダンジョン



陽夏とコナーが準備を終わらせたので、早速ウルフのダンジョンへと出発した。


ウルフのダンジョンに入った時俺は驚愕した。


何故ならそこはゴブリンのダンジョンとは違い、洞窟のような場所になっていたからだ。



「ふふふ、驚いているようだね。ダンジョンによって内装は結構変わるんだよね。けど、どのダンジョンも階段を登って先を進むのは変わらないよ!」


「そうだったのか。」



確かに全てダンジョンの内装が同じようなものなのも少し違和感があるよな。



「それにしても本当にここは湿度が高いわよね、髪とかベタベタになるから嫌なのよね。」



陽夏はそう言って手をパタパタと振る。


俺は陽夏程髪は長くないのでそこまでだが、やはり陽夏程の髪の毛があるとキツイ時もあるのだろう。



「一応体拭くものとかは結構持ってきてるから、ベタベタしてきたりしたら使ってね。髪にはちょっとあれかもだけどね。」


「え、本当!? ありがとう!」



流石コナー。こういう事も見越して準備していたのだろうな。


俺はもはや必要なものなど武器くらいなのでそこまでの思考には至っていなかった。


これが大人の余裕ってやつなのか?


コナーの有能ぷりに感嘆しながらも、俺たちはダンジョンを進んで行った。


そうやっていると、早速ウルフが出てきた。


出てきたウルフは一体だけで、特に何か強くなっているとかでもなかったので、一発で倒す事が出来た。



「うん、まぁ、こんなもんよね。今までのゴブリンがちょっと強すぎただけでこれが普通よね。」



陽夏はそう言って自分を納得させようとしていたが、明らかに落胆している様子だった。



「別にいいじゃないか。敵が弱ければ安全にサクサクと進めるんだからさ。」


「まぁ、それはそうよね…………。」



とはいえ陽夏が言っている事も分からなくもない。


ここまで手応えがないと探索が作業的になってつまらないというのはある。


しかし、今はそんな事を言っている場合では無い。


出来るだけ早くここのダンジョンの機能を停止させたいのだ。


どうせどうしようもない事だし、陽夏には我慢してもらうしかない。


俺たちはウルフを瞬殺しながらダンジョンを進んでいく。


ウルフのダンジョンでは今の所謎の薬(コナー曰く粗末な毒物らしい)と毛皮のようなものしか出てきていない。


コナーがいるといるものと要らないものの捨拾選択が容易になる。


今の所要らないものしか無いので殆ど鞄の中には入れていない。


コナーのお陰でかなりそこが楽になった。


そして陽夏が最前列に達ウルフをなぎ倒して言ってくれるため、俺は完全に荷物運び要員となっていた。


数体同時にウルフが出たとしても陽夏にかかれば何故か一振で解決出来てしまうので、俺やコナーが出る幕も無いのだ。


コナーは何かの力を使ってウルフを見えない位置から見つけ出したり、階段の位置を調べたりしてものすごい勢いで駆け上って行った。


この速さで行けるならもうとっくに女の人に近しい存在に会っていてもおかしくないと思ったが、本人曰く、ゴブリンとウルフのダンジョンに板挟みにあっており、それの対処にほとんどの時間を使っていたため、ダンジョンを攻略する余裕がなかったらしい。


それに今コナーが死んでしまってはホテル街はかなり壊滅状態になってしまうため、迂闊な事は出来なかったらしい。


そう考えると、やはりコナーは凄い存在だったんだと改めて実感する。


それからも数時間ほどぶっ続けでダンジョンの中を進んでいくと、コナーはいきなり立ち止まった。



「君達、ちょっと待って。」


「ん? どうしたの?」


「上に淒い数のウルフが居るよ。これが君達が言っていたあの女の人の部屋なのかな?」


「…………あぁ、そういう事か、多分そうだろうな。何処かに誰かいたりしないか?」


「ちょっと待って…………うん、居るね。背の低い女の人が居るね。20歳ぐらいかな? 特に武器とかは持ってないように見えるね。」


「そうか…………まぁ、警戒して進もうか。」



背の低い女の人か。


この前の女の人は少なくとも背は低くはなかった。


だから別人と考えるべきなのか…………。


まぁ、とりあえず言って見れば分かることだ。


コナーの案内のもと階段へと直行する。


階段を登ると、いつも通りモンスターが夥しい量居た。


前まではゴブリンだったが、今回はウルフになっている違いがあるくらいだろう。


最前列に居た陽夏は刀に魔力を集め、それを放った。



【七月流火】



いきなり来た侵入者にそんな高威力の技を放たれてウルフ達が無事なはずは無く、その一撃だけでそこに居たウルフ達はほぼ全滅していた。



「なによ、手応え無いわね。」


「いや、お前が強すぎるんだよ。ほら見ろ、コナーなんか引いてるぞ?」


「ち、違うよ! ただ綺麗だったから見惚れてただけで…………。」



って、こんな話をしている場合では無い。


俺は周りを見渡した。


すると、少し遠くへ走っていく金髪の小柄な女の人が見えた。


その女の人は逃げているようだったが、ふとした瞬間に立ち止まり、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。



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