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08 命拾い

領主バーンの大声と共に騎士達がバタバタと駆けつけてくる。エルザとルミナスはあっという間に取り囲まれた。


「ほぉう、やれるものならやってみろ。お前達なぞ相手にならんぞ」

エルザが不敵な笑みを浮かべる。


「えぇい!黙れ黙れ!さっさとこの無礼者を始末しろ!」

バーンが大声で命令するが、騎士達はたじろいでいる。


「し、しかしバーン様、こやつらはあの怪物を簡単に倒してしまった者達です」

騎士の言葉にバーンはハッとする。


「お前達の命など簡単に奪えるぞ。そんなに死にたいなら望み通りに殺してやる」

エルザから放たれる尋常ではない気迫に、バーンも騎士達も恐れおののいている。


ふと、バーンは何かを思い出したように一瞬だけニヤリとした。


「わ、わかった!待て!ならばこうしよう。領地の外れに鉱山がある。そこの鉱山で最近妙な怪物が現れて鉱石の採掘ができないのだ。その怪物を倒してきてはくれまいか」


「は?勝手に喧嘩を売っておいて、さらに怪物退治まで頼むとはどういう神経をしてるんだ」


「違う違う!もしその怪物を倒せたならお前達は無罪放免、この領地から好きに出ていって構わない。だが、倒せなければそのままそこで息耐える。これは賭けのようなものだ」


冷や汗を垂らしながらもバーンの顔は笑っている。

「それだけ強いと豪語するなら、こんなこと位簡単であろう、のう?」


「そんな面倒なことしないで今ここで全員抹殺して領地から出ていくことも可能だが」

エルザが飄々として言うとバーンも騎士達もひえぇっと悲鳴をあげる。


「だが、その怪物に俺達は興味があるからな、その話に乗ってやる」

「命拾いしましたね」

にっこりと頬笑むルミナスに、バーンも騎士達もその場に膝から崩れ落ちた。






街に戻ると、騎士達に連行されたエルザ達を心配するザイド達の姿があった。


「あっ、エルザ様~!」

エルザ達の姿を見つけたリールが長いツインテールを揺らしながら駆け寄ってくる。


「大丈夫でしたか?突然騎士達がエルザ様を領主の所へ連れて行ってしまったと聞いて皆驚いていたんですよ」

心配そうにエルザを見上げるリールに、大丈夫ですよとルミナスが声をかけるが、その声は全く聞こえていないようでエルザのことばかりを見ている。


「あれ……?私のこと見えていないんでしょうか」

ルミナスが不思議な顔をしていると、ザイドが後ろからため息をつきながら声をかける。

「そいつはそういう奴なんだ、すまん、気にしないでくれ。そんなことより、一体領主はあんた達になんの用があったんだ」


エルザが領主との間に何があったかを説明すると、ザイド達はうんざりした顔をする。

「あんの領主野郎、本当にどこまでもクソだな」

「それで、本当に行くのかい?あそこは今本当に危険な場所になっていて誰も近寄れないんだよ」


心配そうに聞く街の人達に、エルザはリールの頭をポンポンと優しくなでながら言う。

「俺達なら大丈夫だ。何も問題ない」

横ではルミナスがにっこりと微笑んでいる。


「まぁ、昨日の怪物の倒しっぷりを見ても大丈夫そうな気はするが……」

ザイドが腕を組んでうーんと唸る。

その横ではエルザに頭を撫でられたリールが嬉しさのあまり目を輝かせて放心している。


「すぐに行くのか?」

「あぁ、さっさと行ってさっさと(全部)終わらせたい」

(そしてさっさと魔界に帰ってゆっくり平穏に過ごしたい)


「そうか、すぐにと言っても食料や薬草とか持ち物の準備には少し時間がかかるだろ。準備が終わったら店に声かけてくんねーか」

ザイドが言うと、エルザはふむ、と頷いて了承した。




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