61 天使の秘密
ドサッ
魔族の両手が砕け散ったことで、カインは地面に崩れ落ちた。すかさずラインが駆け寄りカインを抱えてバーゼイルのそばから離れる。
「カインに汚い手で触るんじゃないわよ!このゲス魔族!」
リールが杖を魔族に向けながら叫ぶ。
「ほおお、これはこれは天使のご加護を得たお嬢ちゃんか。そのまっすぐな勝ち気な瞳、気に入らねぇなぁ」
その言葉が言い終わる前に、リールの目の前が爆発する。
「リール!」
カインが悲痛な声で呼びかけると、砂埃から現れたのはリールを庇って短剣を構え立ちはだかるユイだった。
「この子には絶対に指一本触れさせないし、怪我もさせない。絶対に」
自分を庇うユイを驚きと喜びが入り混じった顔でリールが見上げている。その姿を、エルザは心なしか微笑みを浮かべ見守っていた。
「なんだ、そういえばお前も魔力持ちか。それなりに本気な攻撃じゃないと通じないってわけね、めんどくせぇな。手っ取り早く絶望なり憎悪なりが引き出せれば簡単なんだけど、な!」
そう言うと突然、ザイドの目の前にバーゼイルの姿をした魔族が現れザイドの腹に拳が入る。次の瞬間、ザイドは吹っ飛んだ。
ドオオオオオン
「グアッ、ゲホッゴホッ」
壁にぶち当たり、その衝撃でザイドは口から血を吐き出した。ぜいぜいと息を切らすが命に別状はない。
「チッ、お前も天使様のご加護を受けてるからその程度じゃ死なねぇか。つまんねぇな、お前が死ねば天使様がどうなるか見ものだったんだが」
クククと口の端に弧を描きながら魔族は笑う。
「ザイド!」
すぐさまルミナスが駆け寄り、治癒魔法を施す。
「だい、じょうぶだ、俺のことなんか気にせず、早く、あの化け物を、なんとか…」
ゲホゲホとむせながらも立ち上がり、ザイドはルミナスとエルザを見つめる。だが、エルザは魔族を真顔で見つめたまま、微動だにしない。
「まだ動けないよな、こいつらにきちんと説明してあげなきゃいけねぇもんなぁ。この状況を作り出す肩代わりをしてる天使様のことをよぉ」
ニヤニヤと笑いながら魔族は両手を広げて言い放つ。その言葉に、ザイドやリール、カイン、ラインもユイも不可解な表情をしてルミナスを見る。
「おい、ルミナス、どう言うことだよ。肩代わりしてる天使ってまさか、ルミナスのことじゃないよな?」
ザイドが不安げにルミナスを見つめると、ルミナスは少し悲しげな表情でザイドを見つめ、それから他の仲間たちを見て悲しそうな顔で微笑んだ。
「そうです、怪物が生成されるために必要な魔力の供給の肩代わりをしていたのも、そのせいでザイド達の街に怪物が現れてしまったのも、私の根源の一つが原因です」




