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05 祝杯

ドオオオオン。

エルドラが振り下ろした一撃で怪物は頭から左右に真っ二つに割れて倒れた。


エルドラの足元には怪物の首にあった首輪のようなものが二つに割れた状態で落ちている。黒紫に光っていた箇所も真っ二つに割れていた。


「……怪物が、倒されたぞ!!!!」

戦っていた街の人々から歓声が上がる。


「まじかよ……」

勝利と無事を喜び合う街の人々の中で、ザイドだけは呆然とエルドラとルミナエルを見つめていた。


「すごい……あれはきっと勇者様だわ……」

そしてもう一人、エルドラを羨望の眼差しで見つめる魔法使いの少女がいた。





「乾杯~!!!!」

カチーンとジョッキがぶつかり合い、人々は美味しそうにお酒を飲み始めた。


「あんた達のおかげであの怪物は倒せたしこの街は助かったんだ。ここは俺たちの驕りだから気にせず好きなだけ飲み食いしてくれ」

ザイドが言うと、周りの人間達も皆同様に頷いている。


「そういえばあんた達の名前、聞いてなかったな。何て言うんだ?」

ザイドの質問に、エルドラとルミナエルは目を合わせる。


「ええと……」

「俺はエルザ、こっちはルミナスだ」

人間に転生した以上、魔王と天使の名前を人間に教えることはできない。そもそも、真の名を人間の前で口にすれば何が起こるかわからない。それほどまでに二人の名前は強力だった。


「エルザにルミナスね。よろしくな」

ザイドはニッと笑うと、ルミナスはペコリとお辞儀をする。


「エルド……じゃなくてエルザ、見てください!これが食べ物というものですね」

お腹が空いていたルミナスは机の上に並べられた料理を見て目を輝かせる。他の人達が食べる様子を見て、おもむろに真似をして食べてみる。


「はわぁぁ!美味しいですよ!これが美味しいという感覚なのですね!!!」

「なんだよ、まるで初めて食事したみたいな言い方だな。そんなに旨いか」

片手を頬に当てて嬉しそうに頬笑むルミナスを見て、ザイドは驚いた顔をした。


「あぁ、いや、こいつはいつでもこうなんだ。それにこの街の料理は初めて食べるから」

 エルドラ、もといエルザがそう言って誤魔化すと、ザイドもへぇなるほどね、とそれなりに納得した様子でまたジョッキの酒を口へ運ぶ。


「そんなに喜んで食べてくれるなら作りがいもあるってもんだ。そういや、お前さん達は幾つなんだ?見た感じ若そうだけど、酒は飲める年齢なのか」

 店の店主が追加の料理を運びながら訪ねてくる。


「……二人とも成人済みで飲める年齢だ。俺は大丈夫だけどこいつは弱いから飲ませない方がいい」

 エルザの言葉にルミナスはガッカリする。


「(どうして私は飲んじゃダメなんですか)」

「『俺は魔王の体質的に酒も毒も耐性がある、それはこの身体になっても変わらない。だが天使だったお前は全く耐性がないだろう。むしろ天使だったお前がたとえ人間であっても身体や精神体に害のあるものを接種すれば結果が目に見えている)」

 テレパシーで会話しながら、エルザはルミナスを横目に酒を飲み始めた。


「あんた達、一緒に旅をしてるようだけどどういう間柄なんだ?美男美女で二人っきりみたいだけど、そういう関係なのか?」

 酒も程よく回りはじめた輩がニヤニヤと聞いてきた。すると周りの人間達も興味深そうに二人を見る。


「あー…いや、俺たちは兄妹なんだ」

 咄嗟に嘘をつくエルザにルミナスは思わず咳き込むが、エルザは飄々としたままだ。


「それにしたって似てないな、美男美女ってところはお揃いだけど」

「あ、あぁ、血のつながりのない兄妹なんでね。元々身寄りがなくて施設で家族同然に育ったんだ。でも住んでいた村が戦場になって命からがら逃げ出して、そこから二人で生き延びてきた。戦争孤児ってやつだ」

 さも本当のようにポンポンと口から出まかせを言うエルザに、ルミナスは唖然としてしまう。


「……なるほどな、似てない理由も腑に落ちたよ。大変だったんだな」

 ザイドが神妙な面持ちでいうと、ルミナスはそんなザイドを見て天使だった頃の過去の記憶を手繰り寄せ、思わず瞳を伏せる。


「じゃあ、お二人は別に親密な仲と言うわけではないのですね!」

 突然、どこからともなく少女の嬉しそうな声が聞こえてくる。


「なっ、リール!お前、お子様がこんな時間に何やってんだよ!さっさと帰って寝ろ!」

 ザイドが目を丸くして叱る先には、ツインテールの小さな少女がいた。










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