52 つかの間の休息
それぞれが思い思いに休息を取っていた頃、ルミナスは一人洞窟の外の木陰の下に座り休んでいた。近くには小川が流れ、風がそよそよと吹いて心地よい。自然の中にある純粋なエネルギーに触れることで、元天使であるルミナスは英気を養っていた。
ふう、とルミナスはため息をつく。
(少し力を使いすぎてしまったでしょうか)
天使だった頃は力は無限にあるため使いすぎなどあり得なかった。人間になった今でも特別な措置で天使の力は無限に使うことができる。だが、イレギュラーなこととはいえ今回人間となるのが初めてのルミナスにとって力の調整には慣れていない。
(それに私の力の減りが著しいのにはあれもやはり関係しているのでしょうね……)
原因が何なのかはわかっている。だが、自分の力がこんなにも扱いづらくなっていることに動揺を隠せない。
「ルミナス」
神妙な面持ちで考え事をしているルミナスの耳に、優しい声が聞こえてくる。
「ザイド!」
ザイドの顔を見た瞬間、ルミナスは思わず笑顔になっていた。
「ぷっ」
「な、何がおかしいのですか?」
突然吹き出し笑い出すザイドに、ルミナスは疑問の声をあげる。何がそんなに面白いのだろうか?
「クックックッ……いやぁ、悪い悪い。眉間に皺寄せてすげぇ怖い顔してたかと思ったら、突然笑顔になったから。コロコロ変わって面白いなと思って」
面白そうに笑うザイドの様子に、ルミナスもついつられて笑ってしまった。楽しげに笑う二人その周辺には、草木も二人と一緒に笑っているかのように揺れ、小鳥やリスなどの小動物達も寄ってくる。
「あ、そういえば何か私にご用ですか?」
ふと思い出したかのようにルミナスが聞けば、さっきまで楽しげに笑っていたザイドは急に黙り込んでしまう。
「?」
「あ〜いや、その、とても言いづらいんだけど」
ザイドは目線を逸らし、頭をゲシゲシとかいている。
(何でも物怖じせず発言するあのザイドが言いづらいとは一体どういうことでしょう?思い当たることは何もないですが……?)
キョトンとした顔で見つめてくるルミナスを見て、ザイドはだんだん顔を赤らめ始めた。
「ザイド、顔が赤いですよ?まさか風邪でもひきましたか?あ、治療してほしいんですね、わかりました今すぐに…」
「いいいいいいや、違う違う!風邪なんてひいてないから!」
ルミナスが立ち上がってザイドに駆け寄ると、思わずザイドは後ずさる。
「?では何でしょうか」
ザイドの目的がさっぱりわからない。わからない以上、ザイドからの返答を大人しく待つしかなさそうだ。
ふう〜っと一つ深呼吸をして、ザイドはルミナスを見つめて言った。
「抱きしめてもいいか?」




