43 足止め
カイン・リールとユイが対峙しているすぐ近くでは、エルザ・ルミナス・ザイドとラインが対峙していた。
「あっちはもうおっぱじめたみたいだな。俺達もさっさとやっちまおうぜ」
そう言うとラインは片手を空へ向けて突き上げた。
「っとその前に。さすがに三対一じゃこっちの部が悪い」
突き上げた片手に黒紫の光がシュウウウと渦を巻いて集まっている。
それはどんどん集まって、大きな塊になっていくと、そこから地面へ次々と小さな塊が勢いよく降りていく。
地面に着地した塊は、縦に細長く伸びたかと思うと人の形のように変化した。そして次々にルミナスとザイドに襲いかかっていく。
「ちっ、なんだよこいつら邪魔くせーな!」
ザイドは双剣で切り、ルミナスは弓で射止めていく。だが倒したすぐそばから次々と沸いて出てくるかのように塊が襲ってくるのだ。
それを見たエルザが剣をひと振りしようとしたその時、エルザの剣をラインの大鎌が受け止めた。
「あんたの相手は俺だよ」
剣と大鎌を介してエルザにラインは睨みをきかせる。
「お前を倒さない限りはあの塊がいつまでも沸いて出てくるというわけか」
ラインを見つめながらエルザは静かに呟く。
ラインの片手にあった大きな黒紫色の光を放つ塊はいつの間にか地上にあり、どうやらそこから小さな塊が次々と沸いて出てくるようだ。大きな塊をルミナスが光の矢で射抜こうとするが、どういうわけか跳ね返されて届かない。
「あんたのお仲間が力尽きるか俺がやられるかどっちが先だろうな?」
ニヤリとしながらラインは後方に飛び着地すると、両面が黒紫色に光りラインの体全体も光り出した。
「うおおおお!」
ラインは大鎌をひと振りすると、大鎌から大きな風の刃がエルザへ向かって飛んで行く。
それをエルザは片手で受け止めると、エルザの片手の袖があっという間に切り刻まれる。だがエルザ自体は無傷のままだ。
(ちっ、やっぱりこいつは俺達が倒せる相手じゃねーな)
ラインは冷や汗を一筋流しながらバーゼイルとの会話を思い出していた。
「足止めをする?」
話は少し前に遡る。エルザ達が水の精霊達と会話していた頃、バーゼイル達は古城の一室で会議をしていた。
「そう。君達には魔力を与えたからじゅうぶん強い。そこらへんの剣豪や騎士だったら一瞬で倒せるだろうね。でもあいつらは無理だ、絶対に倒せない」
バーゼイルは両肘を机の上に置き、両手の指を顔の前で組んで眼鏡越しにラインとユイを見つめながらそう言った。
「そんなに強いのかよ、これから来るっていうやつら」
ラインは不満げにそう言うとバーゼイルはにっこり笑った。
「強いよ。僕が端正込めて産み出した可愛い子達を次々に倒して魔力を回収してる。それにカインに魔力を与えてジェッギーニを殺させたみたいだしね」
バーゼイルの言葉にラインとユイは驚愕した。
「カインが?あのジェッギーニを?ジェッギーニだって確かあんたから魔力を得てたんじゃなかったのか」
「まぁ確かにジェッギーニには強化のつもりで魔力をちょっとだけ与えてはいたけどね。でも元々あれは強い御仁だったし。あのカインがジェッギーニを殺れるなんて面白すぎるだろ」
くつくつくつと楽しげに笑うバーゼイルへ、ラインもユイも冷めた目線を向ける。だから、と二人をゆっくり見つめながらバーゼイルは言葉を続ける。
「簡単には倒せないはずなんだ。でも倒すために俺は取って置きのモノを用意する。その用意が整うために二人には時間稼ぎをしていてほしいんだよ」
(時間稼ぎっていっても、こいつに関してはそんなに長くはもたねーぞ。さっさとしてくれよバーゼイル)
エルザへ大鎌の刃を次々に放つが、エルザは避けるか受け止めるだけで一向に反撃する様子が見えない。
「おい、お前なんで反撃してこねーんだよ!」
ラインが噛み付くように叫ぶと、エルザはふと何かに気づいたようにラインの背後を見て口角を上げた。
「俺はそっちに用がある」
ラインの背後の地面には大きな大きな魔方陣が浮かび上がっていた。




