42 同郷
カインが魔力を回収し終わるとほぼ同時に、大きな黒い塊から伸びた腕のようなものを受け止めていたエルザの片手が黒紫色に光り出した。
エルザの片手が光り出すと、黒い大きな塊から漏れ出ていた黒紫色のドロドロした光がさらに発光し、エルザの片手に吸い込まれていく。
黒紫色の光が全て回収されると、大きな黒い塊はあっという間に塵と化して風に飛ばされて行った。
「うっわ、まじかよ。本当に全部回収しちゃった」
声のする方へ一同が視線を向けると、そこにはいつの間にか赤い短髪の男ラインと、茶髪の少年ユイが立っていた。ラインは長い柄のついた大きな大きな鎌を片方の肩に担いで持っている。
「まさかバーゼイルの言ってたことが本当だったとはな。しかもカイン、お前まじで俺達のこと裏切ってたのかよ」
ラインがカインを見つめながら言うと、カインは苦々しい顔をしながら目をそらした。
「なんだよ、こいつらと知り合いなのか」
ザイドとリールは驚いた顔をしているが、エルザとルミナスは表情を変えない。
「まぁ、ジェッギーニを殺ってくれたことには感謝してるよ?あいつまじで最低だったもんね」
にこにこと屈託のない顔でユイが言うと、思わずカインは顔をあげる。その顔はその時の光景を思い出して蒼白になっていた。
「お前が裏切ろうがなんだろうが別に構わねぇよ。俺達は俺達のやるべき仕事をするまでだ」
ラインがそう言いながら鎌を構える。
「私は…同郷のお前達と戦いたくはない」
カインがそう呟くと、ラインは冷ややかな瞳でカインを見る。
「は?何言ってんだよ。同郷だろうがなんだろうが別にお前は対して俺達と関わってねーだろ」
「一緒にいたのは収容されてからそれぞれジェッギーニとバーゼイルの配下にされるまでのほんのちょっとの期間だけだったしね。悪いけど僕達は君に思い入れなんかひとつもないよ」
見えるか見えないかわからないほどの糸が繋がった短剣をくるくると器用に回しながらユイは笑いながらいい放つ。
「と、いうわけで、死んでくれる?」
ひゅんっ!とカインの目の前に短剣が飛んでくるが、間一髪の所でカインはその短剣を避けた。が、ユイが短剣に繋がった糸を引き寄せると短剣がUターンしてカインにまた襲いかかってくる。
「守護防壁!」
リールが唱えるとカインの回りに防御魔法が繰り広げられ、短剣がはね返えされた。
「ちょっと、邪魔しないでよ、ねっ」
言いながらユイはもう片方の手にある短剣も器用に操り、リールへ攻撃を仕掛ける。だが、リールへの攻撃はカインの剣によって妨害された。
「大切な仲間を傷つけさせはしない!」
そう言うとカインは瞬時にユイの目の前に移動し剣を振り翳す。だが、ユイの両面が黒紫色に光り、ユイは片手でカインの剣を受け止めた。
「へぇ、俺達と戦うつもりはなかったんじゃないの?気が変わったんだ?ふぅん、仲間ねぇ」
ユイの体から黒紫色のオーラがユラユラと放たれている。
「お前達も魔力を得たんだな」
剣を構えたカインの瞳もまた、黒紫色に光った。




