40 道案内
目の前の大きな光の固まりに、エルザは声をかけた。
「ポぺラトス。ここに降り立つことを許可してくれて感謝する。しかも仲間に土産までくれるとは」
『なに、おやすいごようだ。それにそこの人間は我々のことをいつも大事に思い丁寧に扱ってくれているようだからな。各地の地の精霊から伝わっている』
地の精霊に誉められ、またもやザイドは照れて頭をかく。
『それよりも人となりし元魔王よ。頼みがある』
地の精霊からの呼びかけに、エルザだけでなく全員が目線を向けた。
『知っての通り、近くの古城はとある人間が研究のために使っている。そこではどうやら魔力を使って得体の知れぬ不可解なものを造り出しているようだ』
その話に、エルザはじっと耳を傾ける。
『その不可解なものは雄叫びをあげ暴れまわり、そんなものが何体も何体も現れている。そのせいで周辺の土地の生物達の均衡が乱れはじめた。我々としてははた迷惑な話でもある』
「その不可解なものの力の根元について詳しいことは?」
『それを探しにきたのであろう。それは古城の地下に閉じ込められている。無理やり魔力を放出されているようでな、暴走しないようにと天使まで幽閉しておるようだ、美しい歌声が聞こえてくる。自由を奪われ縛られて難儀なことよ』
精霊の言葉に、ルミナエルが息を飲む。
『人間がどうやって魔族や天使を幽閉できたのか、魔力を奪えるのか、不可解なものを造り出せたのかはわからぬ。だが、本来静かで穏やかであったこの土地がこれ以上荒れてしまうのは阻止してもらわねば困るのだ』
「これ以上荒れていけば精霊の居場所もなくなり、自然のバランスも崩れはじめると」
『すでに崩れはじめている。一刻の猶予もならぬだろう』
「話はわかった。俺達も目的は怪物を倒し魔力を回収すること、魔族と天使の解放、そしてこんなおかしなことをなぜ人間ができるようになったのか解明することだ」
エルザの言葉に、一同は目を合わせて頷く。
『それでは古城までの道を案内しよう』
大きな光の塊から、小さな光がポウッとひとつ飛び出し、エルザ達の周りをクルクルと回っていた。
エルザ達が地の聖霊域から古城へ向かい始めた頃。古城の一室ではバーゼイルが一人の男に話かけていた。
その部屋は薄暗く広く、真ん中に椅子が置かれそこに男がうつむいたままで座っている。
体は光ながら浮かび上がった文字列によって施された鎖で椅子に拘束され、身動きが取れないような状態だ。
床には大きな魔方陣が描かれ、椅子がその中心に座している。
「なぁバーン、あいつらに復讐したくないかい?あいつらさえいなければお前がこんな目に合うこともなかったろうに」
バーゼイルの声に、椅子に拘束された男はぴくり、と肩を動かした。
「憎いだろ?悔しいだろ?元の生活に戻りたいか?俺がそのためにお前に力を与えてやるよ」
そう言って椅子の前から遠退き、魔方陣の外に出たバーゼイルはニヤリとしながら持っていた書物を開いて、そこに書かれてある一説を指でゆっくりとなぞった。
途端に、魔方陣が黒紫に光り電流のようなものがバリバリと音を立てて発生した。
「ぎぃゃぁぁぁぁ!!!!!」
中央の椅子に拘束されたバーンは絶叫しながら電流に打たれている。目は黒紫に光りながら血走り、口からは涎が垂れ流れている。
「ひゃはははは!!!」
椅子に拘束されたまま身もだえるバーンを眺めながら、バーゼイルは恍惚とした顔で笑っていた。




