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36 研究所

「へぇ、面白いな」


ケルベザ国内にあるユリギス領の外れ、そこにとうの昔に廃墟になっていて、人々の記憶にもほぼ残っていないくらいの古びた城がぽつんとひとつ建っていた。


廃墟な見た目とは反対に、城内は綺麗に手入れされている。しかし、城の中というよりもそれはまるで研究所のようであった。


その城の一室で、バーゼイルは匿名で届けられた手紙をしげしげと眺めている。


「あの量の怪物、しかもまだ形は不安定であれ一番新しい子まで倒し、ジェッギーニまで殺るとは。しかも魔力は全部回収されたとなると……」


バーゼイルはクッ、クックックッ……と静かに肩を震わせながら嬉しそうに笑う。


「バーンからもジェッギーニからも美男美女とは聞いていたけど、どんな奴らなんだろう。しかも魔力を回収できるとなると魔族の可能性が高いか、でも人間なんだよな……一体どういうからくりなのか」


手紙を片手でヒラヒラとさせながら、艶やかな銀髪を靡かせる。一見穏やかで爽やかな好青年そうな顔をしているが、眼鏡の奥の瞳は獲物を見つけた獣のようにギラギラと輝いていた。


「牢にとじこめた魔族に教えたらなんて言うだろう、知り合いかな?それともあの魔族よりも上の魔族だろうか。だとすると今までよりもより多くの魔力を取り込むことも可能か……そうするともっとすごいものが造れるかもしれない」


机の上の分厚い本をペラペラとめくりながらぶつぶつと言っているその顔は、嬉しさと緊張で高揚しているのがわかる。


「ここにもきっとすぐにたどり着いてしまうだろうな。それまでに色々と準備しないと」


バーゼイルが意気揚々と思考を練っていると、コンコン、とドアがノックされる。


「どうぞ」


「最新のデータ集計が終わったのでご報告に。それとお茶をお持ちしました。そろそろ休憩になさってはいかがかと」


綺麗な薄桃色の長い髪の毛に聡明そうな顔立ちの美しい女が室内に入ってきた。小柄ではあるが手足もスラリと長く細身で、かつほどよいメリハリがある体つきをしている。オフショルダーのトップスから見える素肌は色白で、長めのふわりとした生地のスカートにはスリットがはいっている。


「調度良い所に来たね、レイズ。近々客人が来るからおもてなしをしようと思っているんだ。そのための会議を開きたい」


差し出されたお茶を受け取って一口飲むと、バーゼイルはレイズの髪の毛をサラサラと弄っている。


「それでは、皆の都合のつく日時を見繕ってお声がけします」


「うん、ありがとう。君がいてくれて本当に助かるよ」


レイズに抱きついてその首筋に顔を埋めると、バーゼイルはすーっと深呼吸した。


「はぁーっ、君という存在は本当に落ち着く」


顔をあげてレイズを見つめると、バーゼイルはにっこりと微笑み、レイズはほんの少しだけ頬を赤らめて微笑みかえした。





「レイズは?」

「バーゼイルの所だろ」


大きく透明な器の中に黒紫の光が煌々と輝いている。その器の前に、白衣を着た赤い短髪の男と明るい茶髪の男が二人並んでいた。


赤い短髪の男は長身で細身だがほどよい筋肉がついた体つきをしている。明るい茶髪の男は小柄で見た目はまるで少年のようだ。


「レイズはいっつもバーゼイルの所に入り浸ってるよね。いいの?本当は嫌なんじゃないのライン」


茶髪の少年がニヤニヤした顔で言うと、ラインと呼ばれた赤い短髪の男はムッとした顔で反論する。


「別に。あいつが好きでそうしてるならそれでいいだろ。いちいち茶化すなよユイ、悪趣味だぞ」


「えぇ~、応援してあげようとしてるだけなのに酷いなぁ」


「……バーゼイルは俺達の恩人みたいなもんだろ。それにあの男が興味を持っているのは怪物だけだ、女になんか興味ないだろ」


「女になんか興味ない奴にレイズが好き勝手されてるのはいいわけ?ダメじゃない?」


ニヤニヤしながら言うユイの言葉に、ラインがカッとなって胸ぐらを掴み殴りかかろうとした。


すると突然、ドオオオオン!と地鳴りが起こる。


「あ~あの音は失敗かな?それとも成功して暴れだしたかな」

胸ぐらを掴まれた状態でユイはヘラヘラとしている。


「どっちにしても回収してデータをまた取らなきゃな」

チッ、と舌打ちをしてラインはユイから手を離した。


「あんまり労働したくないんだけどな~僕」


やれやれ、とため息を着きながら二人は白衣を翻し、部屋を出て外へ通じる道を急いだ。










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