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35 決断

「ずいぶんと楽しそうだな」


ザイドとルミナスが声のする方を見ると、そこにはニヤリとした顔のエルザがいた。


「エルザ!」

ルミナスがパッと顔を輝かせると、ザイドはその姿に思わずモヤっとした感情を抱く。


(いや、別にこいつらの間には何もないって聞いてるしその通りなんだろうけど……あからさますぎるだろ)


ザイドの様子にエルザはさらにニヤリとしながらルミナスに声をかけた。


「カインが酔いつぶれてしまったから部屋まで連れていってやってくれないか。俺ではさすがに気がひける」


エルザの言葉にルミナスはまぁ!と声をあげる。いつものルミナスに戻ったようだ。


「それは大変ですね、すぐに行きます。そういえば一緒にいたリールは?」


「夜も遅いからそろそろ寝ろと言ったら素直に帰ったぞ。もちろんちゃんと家まで送り届けた」


「あいつ……俺が早く寝ろって言うと文句ばっかり言うくせに、エルザの言うことは素直に聞くのかよ」


まったく、とザイドは呆れたように吐き捨てた。




パタパタと小走りで店に戻るルミナスを見届けると、エルザとザイドの間には無言の時が流れた。


(……何を話せばいいのかわかんねぇな)


ザイドの居心地がだんだんと悪くなってきた頃に、エルザが口を開いた。


「ルミナスから話は聞いたんだろ」


エルザの何もかも見透かしたような瞳に、ザイドは一瞬怯む。


「……あぁ。正直半分くらいはまだ信じられないけどな。てゆーか、こんな誰かに簡単に聞かれるかもしれないような場所で話していい内容なのか」


「他人に聞かれないようルミナスがちゃんと防音の結界を張っていたから問題ない」


エルザのさも当然だというような顔に、ザイドはへいへいそうですか最初から何も問題ないってか、と肩をすくめる。


「……お前、ってゆーかあんた魔王だったんだろ。いまいちピンとこねーけど、だからあんだけ強いんだな。その点は納得したよ。でもこんなため口きいてていいもんかどうか未だに迷うぞ」


恐る恐るエルザの顔を見ると、エルザは涼しい顔で答えた。


「別に問題ない。確かに俺は魔界では魔王だが、人間としては今はザイドよりも年下だ」


(そういう割には俺に対して年上を敬う感じが見当たらないんだけどな)


内心こっそり思うザイドを知ってか知らずか、エルザは話を続ける。


「俺とルミナスが探しているものは恐らくバーゼイルが関与しているだろう。だから俺達はバーゼイルのいる場所へ行く」


バーゼイルのいるであろう場所には、きっと他にも怪物がいるだろうし、戦いは絶対に避けられないだろうことはザイドにもわかる。


「人間のザイドに言うことではないのかもしれないが、ルミナスの力をわけられたザイドだからこそ言わせてもらう。一緒に来てくれないか」


エルザの言葉にザイドは身体中に電流が走ったような感覚になった。


「……ええと、いや、むしろ俺なんかが一緒に行って大丈夫なのか?エルザの言う通り、俺はただの人間だぞ」


「わかっている。正直言えば少し悩んだ。だが、バーゼイルの元にいる怪物が何体いるかわからない上にどんな状態の怪物かもわからない。全てを倒して魔力を回収するにしても、ルミナスと二人だけではてこずるだろう」


エルザが悩んだということに、ザイドは多少の驚きと喜びを感じた。


「カインは隷属の契約をしているから必然的に連れていくことになる。だがカインだけでは不安が残る。カインはまだ力に慣れていないからな」


ジェッギーニとの戦いで暴走しかけたカインを思い出してザイドは神妙な面持ちになる。


「……まさかリールも連れていくつもりじゃねーだろな」


「連れていくつもりはない、が、あの子なら勝手に着いてくるんじゃないか。鉱山に行くときみたいに」


ふっ、と笑いながら言うエルザに、あぁ~!と頭を抱えて唸るザイド。


「確かにあいつなら勝手に着いてくるだろうな……」


「だからこそ、尚更ザイドには来てもらわないと困る」


「俺は子守りかよっ!」


ザイドのつっこみにエルザはくつくつと楽しげに笑った。


「ルミナスのことも気になるんだろう」


「……っ!」


突然ルミナスのことを言われてザイドは思わず顔が赤くなる。


「図星か」


「いや、そんなんじゃ……ないわけじゃないけど、ち、違う。そもそもルミナスは天使だったわけだし」


「でも今はザイドと同じ人間だ」


エルザの言葉にザイドは目を見開く。


「……いや、ちょっと待ってくれよ。小さい頃からずっと見守ってくれてた存在が同じ人間になったからって、しかもすげー美人かつ可愛い年下で、恋心抱いちまうとか意味がわかんねーだろ」


何よりも俺が一番混乱してるんだよ、と片手で顔を覆い肩を落としながらザイドは弱々しい声で言う。


そんなザイドを見ながらエルザはふっと笑った。


「別に慌てることはないだろ。ルミナスだってザイドのことは気になっているようだし」


エルザの言葉にザイドはさらに顔を赤らめる。


「ゆっくり考えていけばいいんじゃないか。でも、自分の気持ちに嘘はつくなよ」


それに、とエルザは不敵な笑みを浮かべる。


「どんな形であれ、ルミナスを悲しませることがあれば魔王として長年あいつと関わってきた俺が許さないからな。覚悟しておけ」


エルザの言葉に、ザイドは眩暈がした。







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