アーサーの結婚式。06
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「ふんっ!それで、お前は何を言いたい。…知っているか食べ物の恨みは5代まで続くって言うぞっ!」
パトリック王は不機嫌の極みなのか訳の分からない、ことわざのような不満をぶつけてきた。カインは気づかれない様に小さくため息を吐いていったん心を落ち着かせ続けて話し始めた。
「とはいえ、この新調味料に陛下はとてもご興味をお持ちの様ですのでここにある分は献上させていただきます。少量とは言え10から15食分は作れると思いますので、ご賞味いただければと思いますがいかがでしょうか?」
量産されていないと知りほぼほぼこのまま食べれないだろうと考えていたパトリック王だったが、カインからの思わぬ提案にまさに「へっ?」という表情で一瞬固まり直ぐに孫を見る様なデレデレの表情に変わったのだった。その一部始終を第三者的に見ていたシールズ辺境伯はドン引きである。
「…マジか?これを今、くれると言うのか?やっっったぁーーーーー!」
パトリック王はもう何度目か分からないがソファーから立ち上がり大興奮で踊り始める始末だった。流石に臣下の前で踊るのは不味いので、数名の執事とメイドが即座に止めに入った。それでも十数秒は踊り続けていたので国王としての威厳が駄々下がりしたのはしょうがない事であろう。
「うぉっほん、少々はしゃぎすぎた。それでカインよ、何か褒美を取らせたいが何が良い?今は気分がすこぶる良いから何でも申せ」
「え~っと、いまは特に何も欲しい物がないのですがぁ…」
「お前は無欲だな…それじゃあきん「カイン、貸しにしておきなさい」なっ!」
シールズ辺境伯がパトリック王の言葉を遮り褒美は”貸し”にする様にと援護した。カインは祖父の援護に素直に頷き「それでは、貸し一つで」と即座に返答をしたのであった。”貸し”と言う言葉にパトリック王は一瞬詰まったが、自ら言い出したことなので渋々「わかった」と答えたのであった。
それから、パトリック王が”カレー”の作り方を知らなかったので王城の調理室に移動し総料理長がカインの指示で”カレー”を作った。総料理長は『なぜこんな子供に』と思いながらもパトリック王とシールズ辺境伯が側にいるので素直にカインの指示に従い調理を行った。
指示に従いながら調理が進むとカインの指示の的確さと目の前で立ち上る豊潤で魅惑的な匂いに段々と興奮を抑えられなくなり、「次は、次は」と逆にカインの指示を先回りして聞き出すほどになっていた。小一時間程で2人分の”カレー”が出来上がり湯気と共にあがる”カレー”の匂いに調理室にいる全員がとりこになっていた。
「頂きます…旨い、うまいっ!これだ、これだ!あ~うますぎるっ!」
パトリック王は出来上がった”カレー”を食堂に運ぶのを待ちきれず調理室のいつもは調理人達が軽食や休憩に使うテーブルで食べ始める。そして、大勢の家臣の前なのでかなり我慢をしているが目には涙が浮かんでいた。
「こ、これはっ!陛下、カイン様なんて料理を作り出したのですかっ!ゼ、是非名前と今後も作る許可を頂きたいっ!」
自分の分として取り分けた”カレー”を食べた総料理長は、一口食べゆっくりと咀嚼し飲み込むと目をくわっと見開き消えていく味の余韻をゆっくり楽しんだ後、カインの元に駆け寄り興奮した様子で早口でまくし立てた。
「はい、すでに国王陛下へレシピはお渡ししていますし、材料の栽培が出来ましたらご提供をさせて頂きます」
「あ、有り難い。可能であれば今後もレシピの交換など行わせて頂ければと思います」
ルークよりも年上のおじさんに半泣きで両手をつかまれてお礼を言われ少し引きながら「は、はい」と返答するのが精一杯だった。願いが叶うと分かって総料理長は少年の様にニッコリと笑って「ありがとうございます」と何度もお礼を言って離れて行った。
大分遅い時間になってしまったので王城で夕食をごちそうして貰い(パトリック王達とは別の食堂で)帰宅したのだった。カイン達の馬車が王城の門を出た途端にカインは緊張が解けたのか眠気が一気に襲ってきたのだった。
「お、お祖父様。すみません、もう無理です……スウスウ」
「寝てしまったか…行動や話し方からたまに忘れてしまうがまだ成人前の子供。よく頑張ったなカイン」
シールズ辺境伯は自分の膝に寄りかかり小さく寝息を立てながら眠るカインの頭を撫でながら呟くのであった。そして先ほどまで”カレー”に一喜一憂するパトリック王を思い出し久しぶりに元気なパトリックを見たとほほを緩ませるのであった。
後日パトリック王の”カレー”フィーバーは王妃様の耳に入り、”カレー粉”の管理をされる事になる。執務を一カ月頑張ったご褒美で”カレー”を食べれると言われパトリック王は、今後執務をかなり真面目に行う事になり、カインの元に王妃様からお礼状が届き大騒ぎする事になるのはもう少し先の話である。
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