4回目の年越しの日17
【祝 5,500万 PV】
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サンローゼ屋敷の大会議室は会議用のテーブルが搬出され、ダイニングにある大きなテーブルが中央に運び込まれていた。
テーブルの上には夕方から開催予定の“年越しの日のパーティ”の飾り付けがメイド達の手により着々と進められている。
通常の業務に追加の仕事になるので大変なはずだが、全員一様に笑顔で作業を行っている。
「はぁ~この飾り付けを見ると“年越しの日のパーティ”の実感が沸くわね。今年は戻ってからずっとリファのお世話を手伝っていたからあっという間だったわ」
「そうだよね、今年はお客様がいないからゆっくり出来ると思ったけど…そんなに甘くなかったね」
アリスとクリスが大会議室を覗きながらお互いに顔を見て微笑む。その間にも他の会議室や客間などから椅子が続々と運び込まれていた。
毎年サンローゼ家の“年越しの日のパーティ”は立食パーティ形式なので座ってゆっくり歓談や食事をするために壁際に椅子が並べられる。
「アリス様、クリス様。そろそろぉ…お着替えをお願いします」
アリス達の後ろから若いメイドが少し申し訳なさそうに声をかけてくる。彼女たちも夕方からのパーティに出る前のお化粧直しなどの時間を少しでも確保のため、普段なら静かに待っているのだが今日に限ってはお伺いを立ててくる。アリスもクリスも状況を理解しているので快諾した。
重い空気…ではなく淀んだ空気が漂う領主の執務室で書類仕事をするペンのカリカリと言う音だけがしていた。昼食後から一度も休憩を取らずにすでに3時間ルークをはじめ、アーサー、ベンジャミン、ランドルフ、バルビッシュと文官2人はただひたすらに書類と格闘していた。
「父上、これが私の担当の最後の書類です」
「私も、これが最後です」
アーサーとベンジャミンが担当していた書類をルークに提出する。最終決裁者はルークなので当たり前のことをしているだけなのだが自分の机の上にある書類だけが一向に減らないと感じルークは眉間にしわを寄せる。ルークは気づかれないように小さなため息を吐き2人が提出した書類を先に確認をし始めた。
「ランドルフ様、我々の書類もこれが最後です」
バルビッシュが他の2人の確認が終わった書類に自分のサインをしてランドルフに手渡す。ランドルフはにこやかに「ご苦労様です」と言って書類を受け取ると直ぐに確認を始める。ちなみにランドルフの未処理書類を分類する箱にはまだまだ書類が残っていた。
「よし、問題なしだ。お疲れ様」
「はい、問題ありません。お疲れ様です」
ルークとランドルフの声が重なる。2人のOKを貰えたアーサー達はほっと安堵の表情になり緊張が抜けていく。
その様子をみて息子や部下達にかなりきつい仕事をさせていたのだと改めて認識したルークとランドルフはもう一度
「「お疲れ様」」とねぎらったのだった。
兄姉達がパーティの準備に取り掛かろうとしている頃、カインは愛妹のリファを抱いて約2週間補充できていなかったリファパワーを補充していた。
「はぁ〜、なんて可愛いんだろう。もう天使みたいっ!いや、リファは天使なんだぁ!」
兄バカ300%で腕の中で眠っているリファの顔を見ては何度も繰り返し同じ事を言っては悶えるを繰り返していた。
最初の頃はリファのお世話を担当しているメイド達も“微笑ましい”と見守っていたが、流石に1時間以上続けていると少し冷ややかな視線に変わりつつある。
「カイン?あなた良い加減に準備なさい?今日ヴァイオリンの演奏をするのでしょう?着替えなくてもいいの?まあ、私達はちょっと休憩ができて良いけど」
お風呂から帰ってきたリディアが少し呆れた表情でカインを注意する。しかし、何故かカインがリファを抱くとリファは大人しくそして、暫くするととても安心して眠ってしまうのだ。
基本的に大人しいリファであるが、そこは赤ちゃんなので気分はすぐ移ろい、オムツやお腹が空くとそれは大きな声で泣き始める。
それが、何故かカインが抱いているとずっとニコニコと大人しくそして何時も寝てしまうのだった。
「お帰りなさい、リディア母様。大丈夫です、すでに着替えは済んでいます。この割烹着の下に既に着替えています。…ただもう少ししたら音合わせの為に行かなければいけませんが…まあ、行かなくて大丈夫でしょう。ねぇーリファ〜」
「…“ねぇーリファ〜”じゃありません。貴族たるもの約束を違えるなど許しませんよ。もう少しなどと言っていないで直ぐに行きなさい」
リディアは妹愛を拗らせ始めているカインを叱り、その腕からリファを引き剥がした(実際は優しく抱き上げ)カインはこの世の絶望を味わったような、背景に“ガーーーン”と文字を現しながら憐れみを引こうとするが全く通じずトボトボと後ろ髪を引かれながら部屋を退出した。
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