シールズ辺境伯領の開墾5
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二日後の朝、シールズ辺境伯とカインはがっくりと肩を下ろしながらサンローゼ屋敷の玄関先に止まっている馬車に足取り重く乗り込む。
見送りはルークとランドルフでリディアは見送りには来ていない。ルークは二人の気持ちがとても良く分かるので、同情の目を向けているが一緒にシールズ辺境伯領に戻るアイシャは「仕事を頑張ってまた来ればよいでしょう」と気持ちを切り替えるように諭すのだった。
カインはシールズ辺境伯達とは別の馬車にバルビッシュ達と乗っていた。バルビッシュ達とは3日振りの再会だが、リファとの別れが辛く馬車に乗る時に「おはよう」と言ったきりになっていた。
「「「カイン様」」」
「はいっ!な、何でしょう?」
『あれ?僕今何か話しかけられていたかな?』
「「「妹御様、リファ様のご誕生おめでとう御座います。我らサンシャムロック家一同改めて喜びを申し上げます」」」
「あ、ありがとうっ!凄く嬉しいよ!…あ、ご、ごめんね。リファが生まれたのが嬉しすぎてここ数日皆んなに何もしてあげれていなかった…」
「そんな瑣末な事気にされないでください。妹御様のご誕生ですから、致し方ありません」
バルビッシュ、ガーディ、ララ、サーシャからお祝いの言葉を貰い喜んだ物のここ数日の自分の行動を振り返り反省をして落ち込んだ。
「そんなに気になされないでください、おかげでと言っては語弊がありますが自分もここ数日息子と過ごす事ができましたし」
「そうそう、お屋敷でゆっくり過ごすことが出来たわ」
ガーディとサーシャがフォローをしてくれる。カインは『何て出来た家臣なんだろう』と感情が昂りちょっと瞳がうるうるし始めたが、何とか押し留めた。
カインは再び謝罪と感謝を伝えるのだった。そうこうしているうちに転移場所に着いたのか馬車が止まる。馬車から降りると、サンローゼ領側には次の種蒔きのために耕され、畝まで出来上がった畑が広がっている。
「あ〜、お祖父様の開墾ばかりしていたから自分の小麦畑が何も出来てなかったけど…何も言ってないのになんで完璧に種蒔きの準備が終わっているの?」
「それは、カイン様のお陰ですね。今年の収穫が終わった後、何時もの給金の別に小麦の現物支給をされましたよね?」
「うん、した。サーシャのおかげで大豊作で備蓄予定の2.5倍の収穫になったから売りに出して値段を下げるより、皆んなに還元しようと思って…あれ不味かった?」
「いえいえ、逆でございます。現物支給された小麦を自分達で食べるのは元より、自宅周辺にお裾分けしたら”美味しかった“と大変感謝されたそうで、今まで他領では感謝される事や褒められる事があまりなかった彼らはとても嬉しかったそうです。なので来年も頑張ると張り切っていると報告がありました」
「うわぁー!凄い事になっているね、でも皆んなが喜んだなら良かった。あれ今年の分ってサーシャの【魔法】かけてもらってないんじゃっ!」
「カイン様、ご心配なく。このお休みの間にしておいたわ。えらい?」
「ありがとう!サーシャ!」
カインはサーシャの嬉しい行動に興奮し思わず感謝の言葉と共に抱きしめてしまった。サーシャは急にカインに抱きつかれて体を硬直させたが、直ぐに自分からも抱きしめ返した。
「…カイン様、そろそろ移動をお願いします。皆様がお待ちです」
ララが少し不機嫌な声で連絡してきたのでカインは慌ててサーシャから離れ集合場所に向かった。サーシャはとても残念そうな、物足りなかったと言う表情をしていた。
カイン達はシールズ辺境伯達とザインに遅れたことを謝罪し所定の位置に着いた。そしてザインが呪文を唱え浮遊感を感じると3日ぶりにシールズ辺境伯領に戻ってきたのだった。
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