リディアの出産7
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アイシャがリファを抱き上げ手をかざして診察を行なっている。まだ目が見えていないはずのリファだが、かざされている手に触ろうと一生懸命手を伸ばしていた。
「元気な子だわ、うん大丈夫。異常などは無いわね、女神様達から“祝福”をいただいているからかしら?」
診察を終え以上がないことをリディア達に伝える、最後の方はほぼ独り言の声量で呟いた。リファをベビーベッドに戻すと次はリディアの診察に移り同じように手をかざし「うん、大丈夫」と言って診察を終えた。
「ありがとう御座います、お母様。ご心配をおかけしましたが、多少の疲労がありますが大丈夫です」
リディアの言葉に安心したのかアイシャは我が子を優しく抱きしめた。2人を包む優しい空気にカインは心を温かくしていた。
「さて、カインお待たせ。落とすといけないからソファに座ったままで抱っこしてね」
アイシャはソファから立ちあがろうとしていたカインを制し座るように行った。カインは楽しみで仕方がなく体を上下に揺らしている。アイシャはゆっくりとリファを抱き上げソファまで運ぶ。
カインの隣に座りルークの時のように腕で輪を作るように指示をして、ゆっくりとその腕に乗せた。カインは思ったより軽いリファの体重に驚きながらも幸せの重みを腕に感じていた。
『あ〜かわいい。可愛すぎる〜!ほっぺがほっぺがぷにぷにすぎる、触りたいけど触れないぃ〜』
リファを驚かさないように心の中での叫びを一生懸命声に出さないように我慢をしていた。
カインが心の中で幸せな悩みと戦っている事をリファが気付けるはずがないが、終始にこにこと大人しく抱かれてていた。カインがそんな幸せな時間?を過ごしていると目じりを緩めたシールズ辺境伯が部屋を訪れる。
「アイシャ?なぜリファに会いに行くのに儂を置いて行ってしまうのだ?全く…カイン、儂にもリファを抱かせてくれないか?」
「何をおっしゃられているのですか?ルークと話があると出て行ったきり帰ってこなかったのはあなたでしょうに?ちゃんと手は洗ってきましたか?」
シールズ辺境伯は「もちろん」と答えカインからリファを優しく受け取ると身内にしか見せてはいけないほどデレた笑顔でリファをあやし始める。
カインは心の中で『もう、僕の天使を取らないでっ!』と叫びつつも命の安いこの異世界でもリファが愛されている事を嬉しく思うのだった。
その後しばらくカインとシールズ辺境伯は順番にリファを抱っこしたり、あやしたりと幸せな時間を過ごしていた。しかし、まだ生後1日なので20分もしない内にアイシャよりベビーベッドに戻すように言われると絶望を表す表情になり見えない涙を流したのだった。
「まったく、何を情けない表情をしているのですか?今からそんなんではお嫁に行くときどうするのですか?」
「「リファは嫁には出さん」「リファはお嫁には出しません」
2人の情けない?表情を見たアイシャがお約束の爆弾を落とすと、シールズ辺境伯もカインも真剣な表情でお約束の答えを返す。2人の答えを冗談だと思って聞いていたアイシャとリディアだったが、言い終わった後2人が真剣な表情で握手を交わすのを見て背筋が凍るような視線と共に
「あなた?」「カイン?」「「冗談はほどほどにしなさいっ!」」
「「冗談では…はい。ごめんなさい」」
アイシャとリディアの指摘にカイン達は反論しようと試みたが、あまりにも2人の冷たい視線に大人しく謝ったのだった。そして、そろそろ授乳とお昼寝の時間だとカイン達はリディアの部屋から追い出されたので、トボトボとルークの執務室へ向かった。
「あれ?2人共、リファに会いに行っていたのではないのですか?」
肩をがっくりと落としながら執務室に入ってきた2人にルークが不思議そうに質問をする。ルークは出産で処理が終わっていなかった昨日分の仕事を徹夜したにも関わらずバリバリとこなしていたのだった。
ランドルフからは少し休むように言われていたが、リファの為に頑張ると言って食事以外の休みを取らず仕事をしていた。
「先ほどまではな…」「はぁ~」
シールズ辺境伯とカインの落ち込んだ回答を聞いてルークは首を傾げていた、ルークはシールズ辺境伯に聞くわけにはいかないと咳はらいをしてカインに合図を送り、『何があった?』と目配せをした。
「お父様、聞いてください。お祖母様は、酷いんです。生まれたばかりの可愛い、いや可愛すぎるリファを嫁に出すとかいうのです!」
「はぁ?」
「そうなのじゃ、あんなにもぷにぷにの頬をして、リディアと同じ髪色なのにっ!」
「当たり前ですっ!アリスもですがそんなに簡単に嫁になんぞ出しません!」
「「そうだ、そうだ!」」
シールズ辺境伯、ルーク、カインは良く分からない団結力でリファだけではなく、アリスまでも嫁に出さないと心を一つにするのだった。
執務室の自分の机で業務を行いながらランドルフやメイド達が盛大なため息をついたのはしょうがない事だろう。ちなみにこの事はランドルフからアイシャとリディアに報告がされそれぞれ個別にきつめの注意を受けたのは言うまでもない。
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