リディアの出産4 ~保護者達の夜~
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夕食後、カインと風呂に入り心身ともにリフレッシュをしたシールズ辺境伯領は今日の出来事を思い出しつつ寝酒のワインを嗜んでいた。
孫娘が無事に誕生し母親のリディアも無事であったのはとても喜ばしい出来事であったが、またも神々が関わってくると想定をしていなかったので今後の事を考えると軽い頭痛に襲われていた。
もちろんあの場に居合わせた家人には、口外厳禁を言い渡したが人の口に戸は立てられぬのは世の常でありいつかは知れ渡る事になる。
カインと関係を持てば神々からの“祝福”を賜れると考える者が現れるのは、時間の問題でありそれらの者達からどの様にカインを守っていくかを考え大きなため息をつくのだった。
「あら、あなた?孫娘が誕生した良き日にため息など、どうされたのですか?」
アイシャがお風呂を終え就寝用のゆったりとした洋服に着替えシールズ辺境伯の隣に座る。同行しているアイシャのメイドがアイシャ用に甘めのワインを配膳し直ぐに壁際まで下がった。
「孫娘の誕生はとても嬉しいのだが、神々からの“祝福”について考えていたのだ。世界樹の森の村の件や音楽の日の制定の件などカインの周りにいると神々からの恩恵を受けられると考える者共が出てくるだろうと思っての」
アイシャはシールズ辺境伯の考えを聞いて「確かに」と呟きワインを一口飲む。そして少し考えこみ言葉をつづけた。
「そうですね、神々は信仰の対象であり、畏怖すべきでありカインの周りで起きる事のように会話を行ったり加護や祝福を容易に授かったりすることは今まではないですからねぇ…」
「そうなのじゃ、神々とコンタクトを取れる人物など聖人か聖女くらいだったのじゃ。それをいとも簡単に…心の中で御礼をしたら呼ばれたといわれてはなぁ」
「ふふふ、本当ですね。あの子はいつも私達の予想の斜め上を行きますものね、でも変わらないのは私達の大切な孫息子です。カインのおかげでこうして元気に若返られたのですからその時間をカインの為に使って守っていけば良いと考えませんか?」
「…アイシャの言う通りじゃの。カインが成人するまで儂らがしっかりとあの子を守れば良いだけじゃな。よし、とっととウィリアムに家督を渡してそちらの方に注力しようではないか」
シールズ辺境伯の突然の引退宣言にもアイシャは優しく微笑みながら同意をし、静かにシールズ辺境伯の手を握るのであった。シールズ辺境伯は繋がれた手を
優しく握り返し「一緒に頑張ろう」とアイシャを抱きしめた。
▽▽▽
リディアはベッドの上で赤ちゃんを腕に抱きスヤスヤと眠る顔を微笑みながら眺めていた。ルークは同じ部屋のソファに座り先ほどからずっと唸りながら考え事をしている。
「あなたのお父様はまだ、名前を決められないようでしゅよ~、困りましたねぇ、早くお名前であなたを呼びたいでしゅねぇ~」
ルークはリディアの口調は赤ちゃん言葉でゆるゆるだが、赤ちゃんの名前を誠意検討中のルークにしてみれば真綿で首を絞められる様なプレッシャーを感じていた。
生まれるまで名前を考えていなかった訳ではなかった、現に昨日までは男の子と女の子でそれぞれ3案まで絞った名前を用意していたが生まれてきた赤ちゃんの顔を見て
どうも違うと思ってしまったのだ。
「もう少し…もう少し待ってくれ。中々ぴったりと思う名前にならないのだ、生涯使い続ける名前なのでちゃんと決めたいのだ」
「ふふふ、そんなに気負わなくても大丈夫。ゆっくり考えていいわ、でも明日の朝までは決めてね」
口調も内容もとても優しくリディアは答えているが、期限はビシッと伝えるのであった。ルークもリディアの気持ちも意図も理解しているのでかなり厳しい状況だが「分かった」と答えるのであった。
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