アンセムは鳴り響く4
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ヤクニが戻ってくるとドラムとカインが執務室に呼ばれた。カイン的には『別に僕は要らないんじゃ…』って思っていたがドラムの案件が思ったよりも重い事を知る。
「…なあ、カイン君。きみはトラブルに愛されているのかい?女神様から依頼に続き、国王陛下の依頼なんて…」
「な、何をおっしゃっているのですか。どちらも僕が望んで持ってきたわけではなく、向こうから来たんですよっ!」
「うん、そう言うのをトラブルに愛されていると言うんだよ。ドラム殿…我がトレイン侯爵家はフローリスト王国の貴族、貴方の要望通り国歌作成、トレイン侯爵家を上げて協力させてもらいます。ただ、女神様からの課題を終えてからでも良いですかな?」
「はい、それはもちろん。我々はフローリスト王国国民の前に神々の子供であるので」
カインを置いていつの間にか“国歌作成”まで協力する事になり少し不貞腐れていた。女神の課題だけでも帰れなくなっているのにと無意識でブツブツと口の中で文句を言っていた。
ドラムは安堵の表情でヤクニと一緒に先に会議室に戻って行った。カインだけはグロウに言われて部屋に残った。グロウは少し喉が渇いたとメイドにお茶の用意を指示しカインをソファーに促す。
「カイン君…他家で繋がりのない自分が言うのはどうかとも思ったけど、末席とはいえカイン君はフローリスト王国の貴族だ、陛下の依頼に対してあの態度はいただけないよ」
「はい…」
「何がそんなに不満なんだい?自分で良ければ聞くけど?」
優しく聞いてくれたグロウにカインは正直にリディアの出産が近く出来るだけ早く戻りたいので、つい愚痴が出たと打ち明けたのだった。
グロウは少し悩んだ後、カインの気持ちは分かると理解を示してくれたが、貴族としての役目を果たさなければならないと説得するのだった。カインは理性では理解が出来きるので俯きながら「はい、分かりました」と返答した。
その後メイド達が用意してくれた香茶とお茶うけのダンジョン産のストロベリーを食べる。ダンジョン産だけあって糖度が高く美味しかった。
カインはダンジョン産のストロベリーでショートケーキを作りたいと考えたら気分が上がった。その様子を見てグロウは安心するのだった。
気分が良くなったカインが会議室に戻ると作詞作業が既に始まっていて活発な意見が出ていた。特に熱い論議を交わしているのがポエムとドラムで所どころでマエトが意見を挟んでいた。
その間にアントニがベースにヴァイオリンで曲の弾き方を教えていた。ベースはとても良い笑顔で教えてもらっていたし、息子とヴァイオリンが引けてアントニも笑顔だった。
「あっ、カイン様。お話終わりました?」
ベースが部屋に入ってきたカインに気付き声をかけてきた。カインは「大丈夫」と答えアントニ達の方に向かった、カインが入ってたのにも気付かずドラム達は歌詞を考えていた。
「大分エキサイトしているね…」
「はい、ドラムさんが戻ってきて歌詞の作成に入られてからあの調子なんですよ」
「ちょっと、合わせて見てどちらの歌詞が良いか確認して決めれば良いじゃない?」
何か興奮した感じでポエムがカイン達の方を見て、口論を中断する。アントニはもう慣れたのかすぐに曲の最初の部分の演奏を始めた。
「音楽の女神ムーサ様よ♪…う〜ん?」
ドラムが音楽に合わせて歌い出したが直ぐに辞めた。そして、ポエムがアントニの方を見て再度始めから演奏をお願いする。
「讃えよ、祈れよ音楽の女神ムーサ様に♪…あれ?」
ドラムとポエムの考え着いた歌い出しの歌詞は演奏に合わせると何か物足りないない感じが伝わってきた。そして2人共、下を向いて押し黙ってしまった。しばらく気まずい沈黙が続き、カインはマエトやアントニ、ベースを見るが首を降るだけだった。しょうがなくカインは2人に思いつた事を伝える。
「2人の考えついた歌詞は両方とも女神様を讃える歌詞になっているから良いんだけど、歌って物語みたいな物だし、この世界で初めての事じゃない?だから、導入というか、ムーサ様がどの様な女神様だとかの説明を歌い出しに持ってくるのが良いんじゃない?」
「ああっ、それだ(よ)!」
ドラムとポエムはカインのアイディアに同時に同意しまた歌詞作成に没入していった。その様子をカインは見て「これは早めに出来上がるかな?」と思うのであった。
歌詞作りは深夜まで続きそうだったのでカインは先に自室に戻らせtもらったのだった。




