襲撃5
「いいか?余計なことはするなよ、さっき話した様に“ポートトレビスの盾”に籠ってしまった仲間に降伏をする様に伝えるんだ」
ラミネスがロープでしっかりと拘束した盗賊の頭、名前をデッガーと言った。に命令する。デッガーは面倒くさそうに“ポートトレビスの盾”を見つめた。
ーー
ザイン達から伝えられた面倒臭い状況にページは少しの間困っていたが、倒れているデッガーを見てあるアイディアを思いついた。
「”ポートトレビスの盾“は元々外敵からの襲撃に備え建設されたので守る方が、今は盗賊達の方が有利だ。
私達は少数精鋭のため人数も少なく、あと100数名が残り、守っている”ポートトレビスの盾“を私たち側の損耗無しで落とすのは難しいし、出来たとしても時間がかかるだろう…
そこでだ、カイン君の”機転“によりここに盗賊の頭がいる、この男に命を保証する代わりに降伏する様に説得させるのはどうだろうか?」
ページのアイディアを聞いた一同はあからさまにに表情には出さないが「それは無理だろう」と語っていた。
「…良いアイディアだと僕は思います。盗賊は捕まれば死罪か奴隷落ちが決まっています。そんな彼らに僕は奴隷落ちするとはいえ生きる選択肢を与えたい」
カインが小さい声ではあったが力強く意見を述べる。護衛の冒険者達からは「甘い」「甘すぎる」との呟きが漏れたが、雇い主の希望ならと最後には賛同してくれた。
ーー
”ポートトレビスの盾“から50mくらい離れた場所にラミネスとガーディに引き連れられたデッカーがいた。デッカーの口元には彼らが戦線布告をしてきた時に使用していた【拡声器】の魔道具が用意されていた。
「ほら、先程ページ様が仰られた様にお前の仲間達に降伏をさせるように説得しろ」
ラミネスは不服そうに口を尖らせているデッカーに「早くしろ」と少し大きな声で伝える。“ポートトレビスの盾”の方からは盗賊達が「お頭〜」とか声を掛けてきているのが聞こえていた。
「ちぃっ、面倒くせいな。分かったよ、あーあー、お前ら聞こえるか?」
ラミネスの命令を最初は無視していたデッカーであったが無視をし続けても無駄だと理解したのかデッカがーが話を始める。
「俺は、俺達は見ての通り捕まっちまった。負けたら華々しく死ぬつもりがこの様だ。お前達も降伏すれば命だけは取らないと、大甘な貴族様がおっしゃられている」
ラミネスがデッカーの自身の立場を甘く見ている言葉に後ろから膝裏に蹴りを入れ膝魔づかせた。
「い、痛えな。わ、分かったよ。分かっているって、悪かったなぁ。お前達、見ての通り俺の、俺達の生立与奪権はこの方達が握っている。
悔しくて笑いが止まらねぇ!
お前達っ!俺を助けろっ!スキル【狂乱の宴】ガーバンデウス‼️ 発動っ!」
「貴様、何を、一体何をした?」
「ラミネス!ラミネス!! 何かマズイ気がする、盗賊達の気が変わった。直ぐにカイン様達の元に戻るぞっ!」
ガーディがデッカーに殴り掛かろうとしているラミネスを抑制し”ポートトレビスの盾“の方を見ると、目を紅く光らせながら近づいてくる数十人の盗賊達がいた。
ガーディはデッカーの後頭部に意識を刈る一撃をいれて失神させ担ぐと急いでカイン達のもとに掛け戻った。
カイン達はガーディ達がいた場所から更に50m程離れた場所に待機していたが、遠目からでも”ポートトレビスの盾“の方で起きている異変に気付いていた。
「トロンさんっ!何か不味い感じがします。皆んな僕の周りに集まって下さいっ!ガーディ、こっちだ!」
カインは大声で周囲に指示を出すと、掛け戻ってくるガーディに位置を知らせる。ガーディとラミネスがカイン達の元に掛け戻って来る頃には、100数名の目を紅く染めた遠目からでも常軌を逸しているのが分かる盗賊達が近づいているのが見えた。
「【ロックフォートレス】」
カインはキューディシアとの戦いの時に使用した岩の砦を直ぐに作成する。今回は急拵えなので半径3m程の高さ6mの塔の様な形の砦を創り出した。




