大解体作業2
いつもお読みいただきありがとうございます。
「おかしい…僕は何をしているんだぁ?」
カインが不用意に呟いた言葉により現在キューディシアの解体をそっちのけでカッツオを【魔法の腕輪】から取り出し3枚に下ろしてもらって身の部分を2つに分け塩を入れた湯で煮ていた。
「カイン様?そろそろカッツオが煮えましたがこれをどうするんですか?」
ララが漁師達から借りてきた大きな鍋を優しくかき混ぜながら『この作業でなぜ美味しい食べ物出来るのですか?』と表情で訴えていた。
「ありがとう、ララ。一度全部取り出すからこの網の上に並べてもらえるかな?」
こちらも漁師達から借りてきた金網を指さしてお願いをする。この金網は朝市で浜焼きに使用している物を拝借したものだった。
ララは素直に茹で上がったカッツオの切り身を金網に等間隔で並べて行った。今回は5匹分を解体したので20個のサク状カッツオが並んでいた。
「バルビッシュ?ララと一緒に中骨を撮るの手伝って?」
カインは少し離れた場所で別作業をしているバルビッシュに声をかける。バルビッシュは「ハイっ」と短く返事をしてカインの下に駆け寄ってきた。
「カイン様、あちらもご指示通り洗った“ノリ”を細かい網の上に並べていますがあれで良いのですか?どう見ても美味しそうには見えないのですが?」
遠目でも分かる鮮やかな緑色をした岩海苔を見ながらバルビッシュが呟いた。
「大丈夫、大丈夫。後はザインさんが【風魔法】のドライを掛ければ完成だから…後で【魔法陣】にさせてもらわなくちゃ」
カインは昨日のザインとのやり取りを思い出しながら小さくため息を着いて呟く。キューディシア(たこ)焼きを食べている時にカインが呟いた“かつお節”と“青のり”があればの一言から今朝は早朝からこの作業につきっきりだった。
当初、食材を乾燥させないと食べれないと断ったのだが、ザインが「【風魔法】のドライで可能です」目を輝かせながら言うので渋々作業をすることになった。
「まあ、これで“かつお節”と“青のり”ができればあれと、あれも…そして、あれだって出来るしね。楽しみが無限大だぁ」
昨日の失敗もありカインは小声で自分だけに言い聞かせるように呟いた。しかし、自身の仲間達はその道のプロでありカインの言葉を一文字も漏らさず聞き取っていた。
茹でカッツオから中骨と血肉ぶぶんをそぎ落とし、ザインのドライの魔法でゆっくりと乾燥をさせてついに“かつお節”と“青のり”が完成した。
最初はザイン任せでドライの魔法を掛けていたが、割れたり半生だったりと不完全な物が出来たので、カインが【解析の眼鏡】で注意深く経過観測をしながら乾燥させて漸く出来上がった。
見た目は両方共に地球時代に見た“かつお節”と“青のり”だった。当然、かつお節の削り器などはなく、バルビッシュが華麗なショートソード裁きで“削り節”にして、“青のり”は皆んなで手で粉にした。
「お疲れ様でしたっ!では、試食です。先ほども説明しましたが、こちらの“かつお節“の粉?はソースと良く絡めて、”青のり“はパラパラと少量かけるくらいで最初は試して下さいね。それではいただきます!」
「「「「いただきますっ!」」」」
「「「おおー、美味しいいぃぃ」」」
カインの号令の後、ページを含めた代官屋敷に滞在している全員で試食会を開始する。どんどん増えていく試食会の参加者にカインは大きなため息を一つ着いただけで気持ちを切り替えた。
「おお、なんでこの”かつお節“は動いている?」
「ああ、”青のり“から海を感じる。美味し過ぎる」
「ソースと”かつお節“に更にマヨネーズを付けると至高の旨みに…生きてて良かった…」
それぞれとても喜んでいる様なので、カインは頑張った甲斐があったと一つキューディシア(たこ)焼きを頬張ったのだった。
ここ迄お読みいただきありがとうございます。
次回のこうしんは明後日の予定です。
宜しくお願い致します。




