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閑話 SS 新人教育2

いつもお読みいただきありがとうございます。

すみません、少し長くなってしまいました。

首に付けられた傷を押さえながらサーシャは震えていた。ララはいつでも自分に致命傷を与える事が出来たがそれをせず、首の皮を文字通り1枚だけを先程の攻防で切り裂いたのだ。両腕で自分自身を抱きしめる様にしてうずくまった。


「嬢ちゃん、もう良いだろう?」


「まだ、まだです。1番にはなれなくても次席にはなれるはず。さあ、かかって来なさい」

先程まで震えてうずくまっていた姿からは想像が出来ない程自身もみなぎらせて立っていた。


「ほぉ、いい根性だな。そういうの嫌いじゃないぞ、よし気が済むまで付き合ってやるぞぉ」

バルビッシュがサーシャの根性にやる気を見せていた。ガーディがバルビッシュを止めようと声を掛けるがバルビッシュの表情を見て何かを悟ったのか「しょうがない」と呟き一歩下がった。


「嬢ちゃん、儂はカイン様の奴隷になった時に本気を出す時はカイン様を守る時だけと誓ったのだ。すまんが、何かカイン様を害する言葉を言って貰えんか?何でもいいぞ」


「私は、嬢ちゃんじゃないわ!ふん、奴隷では致し方無いわね。良いわ、私はカイン様を殺します!」

サーシャがバルビッシュの要望に応えて少し大きめな声で言った。言い終わった瞬間、サーシャは首を切り裂かれ、心臓を突き刺され、頭をかち割られて死ぬイメージを受ける。


『はぁ、はぁ、はぁ、い、今のは何?一瞬にして3回も殺されたかと思った』

サーシャは慌てて自分の身体にダメージがない事を確認する。サーシャを攻撃できるのは目の前の3人しかいないはずだが、彼らは元の位置から一歩も動いていなかった。


「すまんな、嘘だと分かっていても抑えられなかった。約束通り本気で立ち合ってやる、これを被るのも久しぶりだな…」

バルビッシュはそう呟くと懐から黒い目の部分だけ開けたのっぺらぼうな仮面をかぶった。


「“サイレント”…久々の登場ですね。もう一戦残っているいるのですから殺しちゃダメですよ…そうでしたその仮面を被ったら何もしゃべらないのでしたね」

ララが仮面をかぶったバルビッシュを見て呟く。


「サーシャ、準備は良いかしら?全力を出さないと一瞬で終わってしまうわよ?それでは、始めっ!」

サーシャがショートソードを構えるのを見て戦闘開始の合図をする。


サーシャは一瞬も見逃さない様に目に力を入れてバルビッシュを注意深く見ていた。しかしバルビッシュがゆっくりと近付き始めると気配が薄くなると共に姿が見えなくなってくる。5歩もバルビッシュが進むと全く見えなくなってしまった。


『どこへ行った?まずい、このままでは先程と一緒だ』

「風の精霊よ、力を貸して!【ウィンドボール】」

サーシャが力ある言葉を唱えると圧縮された空気の塊がバルビッシュがいた方向に放たれる。しかし空気の塊は真直ぐすすみ木にぶつかって消える。


「おかしい、おかしい、何処へ消えたの?【ウィンドボール】【ウィンドボール】【ウィンドボール】」

サーシャはがむしゃらに四方八方に空気の塊を飛ばす。しかし空気の塊は真直ぐ飛んでいきその先にある木にぶつかるだけだった。


「こうなったら、風の精霊よ、力を貸して!【ウィンドウォー】えっ?」

サーシャが周囲全体を守るために風の壁を展開しようとしたが力ある言葉を放つ前に喉に痛みを感じ視線を下に向けるとエストックをサーシャの喉に突き立てているバルビッシュが現れた。突然現れたバルディッシュに吃驚し後ろに倒れ尻餅をつく。


バルビッシュはゆっくりとエストックを下ろしかぶっていた黒い仮面を取り外す。そして尻餅をついているサーシャに手を差し伸べた。


「あ、ありがとう」

バルビッシュの手を取ると力強い力で引き上げられてサーシャは立ち上がった。


「もっと精霊の声を聞く訓練を積んだ方が良いぞ。次はガーディだが心を今まで以上に強く持て、頑張るんだぞ」

バルビッシュは次の戦いに向けてアドバイスをすると2人が待っている位置に戻って行った。


『あの女といい、こいつといい。一体全体何なのよ!次の相手はどう見てもパワータイプ…従うのは癪だけど私の持っている全力で戦うわ。意地でも勝つんだから!』

サーシャはマジックポーチから主力武器の弓を取り出し、矢筒を腰に取り付けた。準備を終えて次の対戦相手のガーディを見るとガーディは指で泥を取り両目の下にそれぞれ塗った。


ガーディが泥を塗ると先ほどまで柔らかかった目が明らかに厳しくなり心なしか赤くなっている様に見えた。


「それでは、これで最後だから頑張りなさい。いい、心を強く持つのよ。始めっ!」

ララが2人の戦闘準備が整ったのを見て、開始の合図をする。


サーシャは戦闘開始の合図と共に速射で矢をガーディに向かって放ち、全力で後ろに下がった。真直ぐ放たれた矢は隻腕に取り付けられた小盾ではじかれる。


20mくらい下がるとサーシャは矢筒から3本の矢を取り出し3本とも弓につがえ放つ。矢は右、真ん中、左と別れてガーディに向かっていく。ガーディは前に3歩程素早く動き真ん中の矢をはじき、横からの矢を避けた。


サーシャは次々と矢をガーディに向かって放つが隻腕に付けた小盾で、体さばきでことごとく避けていく。そして少しずつサーシャに近づいてきた、近づくと共にガーディからの放たれる殺気が濃くなってきているのに気付く。


「水の精霊よ、力を貸して!【ウォータアロー】」

サーシャが力ある言葉を唱えるとサーシャの周りに8本の水の矢が現れガーディに向かって飛んでいく。8本の水の矢は狙いをたがわずガーディに当たったように見えたが、直前でガーディが「シールド」と唱えると水の矢達は弾ける様に消えた。


「そんな、シールドの魔道具なんて。それは、私達エルフの魔道具よ」

サーシャは半ば泣き叫ぶように言い放つ。しかし段々と濃くなる殺気と共にガーディが近づいてくる、効果が無いと分かっていてもありったけの矢を放ち、精霊魔法を放つが小盾ではじかれ、体さばきで避けられたりしてガーディにはダメージを与えられなかった。


取り出した片刃の大きな斧を片手で振り上げながら唸り声をあげ、走り始めると先ほど感じた錯覚を思い出しサーシャは恐怖で発狂しそうになる。


ついに眼前に獰猛な赤い目をし大きく口を開いたガーディが迫って来た、サーシャはがむしゃらに矢をガーディの顔をに放つ。ほぼゼロ距離で放たれた矢をガーディーは首をひねって躱すが、頬に矢がかすり傷を付けた。


頬に傷を受けたガーディは今まで以上の殺気をサーシャに放つ。サーシャはたまらず後ずさるが放たれている殺気に耐え切れず後ろに倒れた。倒れたサーシャに容赦なくガーディは斧を振り下ろす。サーシャは自分の死を感じ耳元で聞こえた“ザクッ”と言う音で意識を手放した。




どの位の時間が経ったのかサーシャは頬を叩かれる感触を感じ目を覚ます。

「やっと起きたわね。あなたが起きていないと結界を超えられないのよ。早く道案内をしてくれるかしら?」


ララの声で状況を思い出したサーシャは顔を両手で触り顔が割られていない事に安堵した。そしてサーシャを見守るララ、バルビッシュ、ガーディに気付き両ひざを付き両手を広げて降伏の意思を伝える。


「生意気な事を言って申し訳ございません、2度と逆らいませんので命だけは、命だけはお助け下さ…」

先程までの恐怖を思い出したのか両目から涙を流しながら命乞いをサーシャがする。


「もう、新人教育だとしても厳しすぎよね。大丈夫、誰もあなたを傷つけたりしないわ。さぁ、そろそろ戻らないと明日起きるのが辛くなるからね」

サーシャの涙をハンカチで拭きながらララが優しく言うとサーシャは小さく「はい」と返事をして立ち上がった。

此処までお読みいただきありがとうございます。

ガーディが使用しているのは、前回手に入れたシールドの魔道具です。

一度しか魔法を防げないので、その後の魔法は全て避けています。伝わったでしょうか。

明日の12日は『異世界領地改革 ~土魔法で始める公共事業~』コミック第7話が更新されています。さくら夏希先生の描くカインがとっても優秀でとても良いです。是非ともご覧ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] ガーディってそんなに強いのなら何で庭師なんかやってたの?
[一言] 今までキャラの薄かった家臣達が今度は異常なくらいに濃い設定のキャラになってしまったなぁ
[気になる点] エルフの護衛、別に必要なかったんじゃ…(笑)
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