土魔法を使おう
「これで、よし。それじゃ朝ごはん前だけど、魔法を使ってみようか」
カインが一番聞きたかった言葉をベンジャミンが言った。
「はいっ!」
カインは、ガッツポーズをしながら答えた。
「私の教え方は、少し特殊だけど先々を考慮するといいと思っていて、サンプルを増やしているんだ」
ベンジャミンは、不敵な笑みを再び浮かべた。
『なんだ、あのやばい笑顔は?いきなり羅刹モードは勘弁なんだけど』
カインは、ドン引きしながら話を聞いている。
「【土魔法】を授かった時に呪文は、頭に浮かんでいるね。通常はその呪文を唱えて”魔法”を発動させるんだけど。私の方法は、慣れるまで”魔力操作”を行った後、”集中” → ”循環” → ”維持”をしてから呪文を唱える。”集中”で”魔力”を集めて、”維持”で留めて呪文を唱えるように」
「まず、私が行うから見ていて」
ベンジャミンは、カインとは反対の方向を向いて、静かに”集中” → ”循環” → ”維持”を行った。
『おおっ、”魔力”が下腹に溜まっているのを感じる』
「我が、意思に従い、集いて顕現せよ。アイスウォール!」
ベンジャミンが力ある言葉を唱えると、庭の真ん中に幅 1mx高さ2mx厚さ50㎝の氷壁が出現した。
「すごいです。おおっ、冷たい!本物の氷だぁ」
出現した氷壁をカインはベタベタとさわりながら言った。
「次は、カインの番だよ。【土魔法】の「ストーンバレット」をこの氷壁に向かって唱えてみて」
カインは、”集中” → ”循環” → ”維持”で魔力を練った後、呪文を唱えた。
「わが、いにしたがい、てきをうて。ストーンバレット!」
氷壁に向かって開いた手のひらの先から、ピンポン玉くらいの石礫3粒 氷壁に飛んで行った。
”カッカッカッ” 石礫は、氷壁に当たり弾き返される。
「やったぁぁぁー! ”魔法”が使えたぁぁぁー‼」
カインは、飛び跳ねて喜んだ。異世界に転生し初めて【魔法】が成功した瞬間だった。
「すごいな、カインは。普通こんなにすんなりと【魔法】が発動しないんだけど。【土魔法】と相性でもいいのかな?」
ベンジャミンは、顎に手を当てながら考えている。
「その辺の考察は後にするか。カイン、次はもう少し”循環”を長くして唱えてみて」
カインは、言われた通りさっきの倍の”循環”を行って、呪文を唱えた。
「・・・ストーンバレット!」
”ガッガッガッ” さっきより、一回り大きな石礫 3粒が氷壁に当たり、氷壁に傷がつく。
「おおっ、威力が上がった? あ、あれ?」
カインは、めまいがして座り込んでしまった。
「拡大まですんなり出来るなんて、授かったのが【土魔法】なのが悔やまれる。あ、ごめんカイン”魔吸器”でMPを20に制限してたからMP切れになったんだね」
カインに駆け寄り、ベンジャミンは、カインを抱き上げた。
「今朝の訓練は、これでお終いだね。朝ごはんの後”瞑想”を教えて少し【魔法】について説明しようかな」
ベンジャミンは、手を横に振り氷壁を消しカインを抱きかかえながら屋敷に戻った。
カインは、ふらつく頭でこれからの事を考えていた。
『次は、どの呪文を唱えてみようかなぁ』




