おばあちゃんのお願い3
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「おい、貴様!カイン様は成人前だが士爵位を頂いた貴族だ。初対面でなんだその口調は!」
バルビッシュがカインの前に出て、エルフの男性に向かって強い口調で言い放つ。
「これは、失礼しました。ご容赦ください、つい長年の願いが叶うかと思って先走りました」
エルフの男性は、バルビッシュの反応にすぐに対応し口調を改めた。
「私は、この魔道具屋で修理や魔道具を作成しておりますザインと申します。ご無礼何卒ご容赦願います」
エルフの男性は、ザインと名乗ると片手を前に出し優雅に挨拶をする。
「初めまして、カイン=サンローゼ=サンシャムロックです。シールズ辺境伯様より士爵位を頂いていますが、まだ成人前なのでそんなに畏まらなくてもいいですよ」
カインはバルビッシュを「まあまあ」と抑え、にっこりと笑いながら謝罪を受け取り、自らも名乗った。
「本日は、大量のお湯を沸かす事が出来て、必要魔力が少ない魔道具か魔力消費を抑える魔道具がないか探しに来ました」
カインが来店の目的をザインに説明をする。
「なかなか、面白い魔道具をお探しですね。しかし、そんなに大量のお湯を何に使われるのですか?」
「そうですよね、気になりますよね。実は浴場の為のお湯を大量に作りたくて、一回に500リットルくらい」
カインがお湯を使う目的を話すと、イケメンの顔が崩れるほど目を見開いてびっくりしていた。カイン達はその表情を見て必死に笑いをこらえていた。
「お、お見苦しい所を。戦争とか集団戦とかに使用するとかと予測していたので、使用用途が予想の斜め上だったので…長生きをすると色々な考えの方と出会えて面白いですね」
一瞬にしてイケメンに戻ったザインは、崩れ顔を誤魔化す様に呟いた。
「普通は、ビックリしますよね。でも皆で簡単にいつもお風呂に入れれば、衛生面でも精神的にも生活が改善すると思うのです。でも今サンローゼ家で行っている方法だと他家や領民に広げる事が難しくて」
魔道具を求める理由を正直にカインは説明した。
「分かりました、ぜひご協力させて頂きます。でも技術的に秘匿な事項になるので、言いにくいのですが、対価を頂きたいのですが?」
「えっと、そんなに多くを支払えませんが…いくらですか?」
カインは恐る恐る値段を確認する。
「いえいえ、貨幣ではなく魔力を頂きたいのです。ある魔道具を起動する為多くの魔力が必要なのですが、なかなか用意が出来なくて。半ばあきらめていた時にカイン様がいらっしゃった」
ザインは目をキラキラとさせながら語った。
「魔力をですか?そんなに大量の魔力が必要な魔道具なんて、危険な魔道具なのでは?」
カインが怪しみながら、確認をする。
「うーん、使い方によっては危険な魔道具になると思いますが、私はそのような使い方をしたいわけでは無いですね。ここで誤魔化しても悪くなる一方だと思いますので、実物を見て頂きましょう」
ザインはそう言うと「少々お待ちください」と言い残し店の奥に入って行った。
「カイン様、大丈夫なのですか?あのエルフ?」
バルビッシュが小声で確認をしてくる。
「今の所大丈夫だと思うけど、僕が魔力の提供を断ったら分からないかな?」
カインはちょっと上を見ながら答える。バルビッシュは「その時は、お任せください」と伝えてきた。
「お待たせしました、こちらの魔道具になります、これは大分昔に作られた物で転移の魔道具です」
ザインが持ってきたのは、短めのワンドで先端にこぶし大の青色をした魔石がはめ込まれていた。そして、さらっと凄い事を言い放った。
「えっ、転移の魔道具!!どこが危険じゃないんですか?存在自体が危険ですよ!」
カインは思いっきり突っ込む。
「しかし、私は故郷に帰りたいだけなのです。ですから私の使い方は危険ではないです」
ザインはドヤ顔で答える。カインはイケメンのドヤ顔はドヤ顔でもカッコいいと思った。
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