おじいちゃんとおばあちゃん
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シールズ辺境伯と笑顔で再会したカインは、執務室でサンローゼ領に戻ってからの事をあれこれ話をした。シールズ辺境伯は、最初こそ「ふむふむ」と聞いていたが、街壁の建設の話のあたりから少しずつ表情が険しくなり、地下下水道の説明を聞いているあたりでは頭痛がするのか、こめかみを抑えながら話を聞いていた。
「ふー、カインよ。少々頑張りすぎじゃ、もう少し自重も覚えんとな。まあ、実際に現場を見なければ信じがたい内容だから大丈夫だと思うがな」
顎鬚を撫でながら、ゆっくりとした口調でたしなめる。
「はい、自重します…」
上司からたしなめられたカインは、少々やりすぎたかと反省をする。
「ま、まぁ、まだ、儂が擁護できる範囲じゃから、そんなに落ち込まんでもよい。行っている事は全部領民の為になっておるのじゃから。一つだけ助言だが、もう少し時間を掛けて行えば問題になるまい」
可愛い孫が落ち込む姿に焦ったシールズ辺境伯は、慌ててフォローをした。
「はい!お祖父様ありがとうございます。頑張ります!」
一瞬でカインは復活しとびっきりの笑顔を振りまく。その姿をみてシールズ辺境伯は満足気にうなずく。カインの従者2人は、こっそりとため息をつく。
「今夜は、内輪だけだがカインの歓迎会を行うからの、楽しみにしておれよ」
「はい、ありがとうございます。お祖父様」
二人共ニコニコと笑顔でいつもまでも笑っていた。だいぶ経って執事が小さく咳をし、2人を現実に引き戻す。その後、カインはルークからの書簡を手渡し執務室より退出した。
退出したカイン達を執事が滞在中に宿泊する部屋に案内をしてくれた。前回の様な客間ではなく、他家からの使者等が使う部屋だと案内してくれた。部屋の大きさは少し小さいが大きなベッドと執務用の机があり、カインとしては十分だった。
ちなみに、バルビッシュ達はシールズ辺境伯家の使用人達が住んでいる寮の一室を割り当てられた。少々カインの滞在する部屋と離れてしまうが、安全は保障されているので問題無いと説得され2人は領の方に移動していった。
夕食の少し前にメイドがカインを呼びに来た。早目の夕食なのかな?と思いながらメイドの後を付いて行くと客間に通された。客間の扉を開けると、笑顔のアイシャがカインを待っていた。
「お帰りなさい、カイン。出迎えられなくてごめんなさいね、丁度用事があって外に出ていたから」
アイシャはニコニコと微笑みながら、ソファーに座る様に手招きをする。
「お祖母様、お元気そうで何よりです。お忙しいのですから、お気になさらずに。こうしてお時間を頂けただけで、カインは嬉しいです」
本当にリディア母さまによく似ているなぁと、いやリディア母さまが似ているのか?とか思いながらカインはソファーに座った。
「リディアからの手紙でカインが色々頑張っていると聞いているわ。でも、無理はしすぎちゃ駄目よ。昨日もリディアから手紙が届いて、くれぐれも無理をさせない様にとお願いがされていたわ。あなたは、賢いけど大人の様に働くと嘆いてもいたから」
優しく微笑みながら釘を刺されたカインだった。
「そうそう、先日アリスから手紙が来てね、騎士学院で頑張っていると言っていたわ。なんでもとても尊敬できる先輩を見つけたとかで、手紙からも嬉しさが溢れていたわね」
ふふふっと頑張っているアリスを想像してかとても楽しそうにアイシャが笑う。
「そうなんですか?僕の所には手紙なんて来てなかったので…」
「そうなの?アリスの事だから、自分から書くのが恥ずかしいのかしら?明後日くらいに返事を書くから一緒に送ってあげるわ。アリスに手紙を書いてみなさいな」
カインはアイシャからの提案に「はい」と元気よく返事をした。
話がひと段落した所でメイドがアイシャに近づき、何かを伝えた。
「カイン、お夕食の準備が整ったそうよ。今日はカインの歓迎会だから楽しんでね」
「はい、ありがとうございます」
元気いっぱいにお礼を伝えるカインだった。
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