夫婦の日5
予定より長くなってしまいました。ルークの頑張っている姿が伝われば幸いです。
ルークがケーキを完成させた頃には、周りの参加者達も半数以上が作り終えていた。完成品を互いに見せ合い、見た目が良いとか、悪いとか言っている。
「はい、皆さん。次の作業に移りますよー。作ったケーキをそのままの状態で渡す為に、特製の袋を作りますからね。一人三枚作業台の端に置いてある、この葉っぱを使って下さい下さい」
若い料理人は、これから使用する笹より少し幅広で40cm前後の葉っぱを手に持ってひらひらさせながら説明をする。
「この三枚を使って、この様に少し重ねる様に使って巾着袋を作り、ケーキの上で紐を使って留めて下さい」
若い料理長は実演しながら説明を行った。
ルークも説明通りに葉っぱを使い袋を作ったが、紐を使って留めるのに苦労していた。ルークのがっしりとした大きな手には難しい作業だ。
「父さま、お手伝いしましょうか?」
「カイン、ありがとう。だか、気持ちだけ貰っておく。最後まで私自身で行った方が、思いもより込められると思うしな」
ルークは照れて赤い顔を隠す様に、ケーキを見ながら言った。
『父さま、かっこいいです!』
「そうですね、頑張ってください」
頑張っているルークを応援するカインだった。
◇
「皆さん、お疲れ様でした。慣れない作業で疲れたと思いますが、その分奥さんや相手の方への感謝の気持ちも込められたと思います。さて、片付けながらですが、自分でどんな物を作ったか味見をしてみましょう。味見ですので見た目が多少悪いのは、ご了承願います」
若い料理人が説明をすると、プレーンケーキの型抜きで余った切れ端が3つ、4つの載った皿が参加者へ配られた。
「お皿は受け取りましたでしょうか。そうしましたら、残っている泡立てた生クリームを載せて、フルーツの余りも載せてください。出来ましたか?」
参加者は、木のボールに残っているホイップクリームと盛り付けで残ったフルーツを載せた。ルーク達も同じように自分用のケーキ?を作る。
「では、どうぞ。…いかがですか?」
「「「うまい」」」「「「甘い」」」「「「初めて食べる」」」
各作業台からは、色々な感想が聞こえてきた。ルークも一口食べて目を見開きながら、カインを見て
「カイン、これは凄い!リディアもきっと喜んでくれるはずだ!ありがとう」
「いえいえ、僕は”勇者様のレシピ”を伝えただけで、本当に凄いのはロイド料理長です」
ルークの作業を近くでサポートしていたロイド料理長を見る
「ありがとう、ロイド。今年は去年よりもリディアにきっと喜んで貰えるはずだ!」
「ルーク様、お役に立てて本当に嬉しいです。でもルーク様やカイン坊ちゃんのおかげで、今日の参加者全員も同じように思っていると思いますよ」
ロイド料理長は、参加者の方へ視線を動かす。参加者がいつの間にかルークの方を見て、頭を下げていた。
「「「お館様、カイン様。ありがとうございます」」」
参加者から感謝が伝えられた。
「私も皆が喜んでくれて嬉しい。今夜の夫婦の日を楽しく過ごしてほしい」
「「「はい」」」
『いやー、上手く行って良かった。これで我が家は家庭円満かな?』
味見の試食会が終わり、片付けをしてケーキ作成は終了した。参加者は頑張って作ったケーキを大事そうに抱えて帰っていった。
「ガーディ!手伝えなくてごめんね。上手に出来たかな?」
ケーキ作りに参加していた、ガーディに声を掛けた。
「あ、カイン様。はい、片手では出来ない部分は、他の参加者や料理人に手伝って貰いました。多少見た目は悪いですが喜んで貰えると思います」
ニッコリとガーディが微笑んだ。
「そうだよね、絶対ノエルは喜んでくれるよ!」
カインもガーディの笑顔につられて微笑んだ。
◇
夕食が終わり、カインは自室へ戻って来た。今夜は夫婦の日なのでルークもリディアも早めに自室へ戻ったし、屋敷の使用人達も多くは早々に帰宅して行った。まだまだ夜も大分寒いが、カインは窓を開け放ち月が夜空に浮かんでいる事を確かめた。しばらく月を眺めた後、窓際にベッドの横で使っているサイドテーブルを運びこっそり作っていたケーキを載せた。
「リノール母さま、夫婦の日おめでとうございます。僕から感謝を込めて、ケーキを作りましたので召し上がってください」
この異世界に影膳があるかは不明だが、気持ちの問題として行ってみた。
「リノール母さま、今年からアリス姉さまが騎士学院へ行ってしまったので少し寂しいです。でも優しいアリス姉さまも同じように寂しさを我慢しながら頑張っていると思うので、僕も頑張ります。だって同じリノール母さまの子供ですから」
しばらく夜空に浮かぶ月を眺めてから窓を閉めた。そして、ケーキを食べて歯を磨きベッドに入った。
『まだ、子供だから寝る前に食べても大丈夫だよねー』
◇
次の朝、カインは毎朝の訓練を終えて食堂に向かった。食堂には笑顔のリディアがすでにテーブルに着いていた。カインはリディアに近づき朝の挨拶をした。
「おはようございます、リディア母さま‼」
「あら、おはようカイン。毎日頑張っているわね、カインが息子で誇らしいわ」
リディアはそう言うとカインを優しく抱きしめる、そして耳元で言った。
「カイン、ありがとう。ケーキとっても美味しかったわ。ルークの気持ちも沢山詰まっていたしね」
「喜んで貰えて、僕もとっても嬉しいです」
『父さま、上手くいった様ですね。リディア母さまにも笑顔が戻ったし、いつもよりキラキラしている。これからも、皆が少しでも笑顔になれる様に頑張ろう!』
リディアに抱きしめられながら、カインは改めて心の中で宣言した。
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