街道整備をしよう2
カイン達が野営地で野営の準備をしていると、程なくしてリディア達が到着した。予定より少しだけ早かったが、石畳の道を進んできているので、もう少し早めに着く予定のはずだった。何かあったのか心配になり、カインはリディア達が乗っている馬車に駆け寄った。
カインが馬車の扉の前に着くと、ララを先頭にリディアとアリスが降りてきた。2人はカインを見つけると走り寄って抱き付いて来た。
「カイン、この道は凄いわ! 今までの半分くらいの揺れしかないし、スピードも出せてとても快適だったわ」
リディアが興奮を抑えきれない様子で、カインに話し出す。
「カイン、ありがとう。この道なら私もゆっくり休めたし、本も読めたわ」
アリスがこちらも興奮しながら、カインに話し出す。
「ちょ、ちょっと、落ち着きましょう。リディア母さま、アリス姉さま。喜んで頂いたのは分かりましたから、一人づつお願いします。同時に言われても、僕には聞き取れません」
カインは、2人を優しく離し落ち着かせる。
「まずは、リディア母さまからお願いします。でも一つだけ。もう少し早めに着く予定ではなかったですか?何かあったのですか?」
「ごめんなさいね、まずは予定より遅くなった理由からね。本日のお昼前に着く予定だった、お兄様達が遅れてしまって出発が遅れたの。2時間くらい遅れてしまったのだけど、この時間に着くんだからカインが作った道が凄すぎるわ! 早くルークにこの事を教えてあげたいわ」
そう言うとリディアは、色々な事を考え始めたのか独り言を言い始め、顎に手を当てて自分の世界に入っていった。
「今度は私の番ね。カインの作った道のおかげで、途中気分が悪くなる事もなかったわ。実は行きは正直辛かったの。ありがとう、これで御祖母様の所に行く為の障害がなくなって本当に嬉しい」アリスは、もう一度カインに抱き付いて来た。
リディアとアリスとの感動の再会を終えた後、野営地での恒例の壁を作り始めた。ドートン達は初めてだったのでかなり驚いていた。明日もリディア達より数時間早く出発し作業を始めるが、多分途中で追い越される見込みだ。一緒に進む案も出たが作業が遅れてしまった場合、リディア達も野営地にたどり着けないと懸念された為だ。
---
次の日も太陽の昇る前に準備を始め、周りが明るくなり始めて直ぐに出発をした。途中までは順調に作業が進んだが、道幅が狭くなる部分があり、1度に作業する距離を短くして行った。お昼前位にリディア達と合流し、昼食をとり再度作業を再開した。
「カイン様、ここからは長い上り坂になります。作業距離はどうしましょうか?」
バルビッシュが地図と坂道を見ながらカインに確認をする。
「途中で止まるのは大変だから、上りきるまで頑張ってみるよ。それに上り坂だから、揺れが増えるかもしれないけど石の表面を粗くざらつかせておくね」
カイン達先発隊は、先に坂の頂上まで進んだ。距離として約800mくらいあり何とか旗が見える距離だった。カインはゆっくりじっくり循環をし、続けて十分に【魔力】を道に通し【魔法】を行使した。いつもよりゆっくりと”石畳”化が進み、終了する。ドートン達が旗を振り正常に”石畳”化が終了したようだ。その後も、順調に作業が進み日が完全に落ちる前に野営地に到着した。
---
2日後、夕日が沈む1時間前くらいにサンローゼ領街が見える所まで来た。カインを含め作業メンバーの疲れが濃くなっていたが、サンローゼ領街が見えた事により士気が上がり、最後まで笑顔で作業を続けた。城門前には、衛兵や領民達がカイン達を出迎えてくれた。最後の【魔法】行使時はいつもの大合唱が上がったほどだ。
「終わったぁー、皆さんお疲れ様でした!」
カインが言い終わると歓声が上がった。かなり大変だったけど、こんなに喜んで貰える仕事は道雄の時にも経験がなかった。この達成感は癖になりそうだとカインは思った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。




