リアル内政チート? 島根県 海士町!
少子高齢化、人口減少が話題になる昨今。人手不足に後継者不足、さらに人口減少が続くほどにデフレも続くなど、問題点は多い。
これで日本の先行き暗いってのがよくある話。
それで人が少なくなったから移民を迎えよう、とか、外国人労働者を増やそう、とかいう政策もあるわけだが。
それでは少産化に高齢化は解決しないだろうなー、とも。なんだかケガをしてるのにキズも塞がず輸血するような、そんな無茶な応急手当てにも見えてくる。
じゃあ、どうすりゃいいのか?
いや、それが簡単に解ったら問題になってないし、話題にもなってないし。
栄枯盛衰は世の常で、やがて日本で日本人が少なくなっていって、移民の国になるのも仕方無い、なんていうおじいさんもいる。
ところがそんな中で、人口減少にストップをかけた地域が日本にあるじゃないか。
島根県、海士町。
アニメ『鷹の爪』の自虐PRで年寄りばかりの島根県とネタにされたり、マンガ『かみあり』の舞台となったりする昔ながらの自然豊かな島根県。
その島根県で、過疎化と人口減少の最先端なんて呼ばれもした地域。
人口減少進み過ぎて存続すら危ぶまれた町、島根県隠岐諸島の中ノ島にある海士町。
この海士町は少子高齢化による人口減少が進んでいたものの、2010年以降は、ほぼ変動無し。そして2012年以降は人口が増加しているという。
過疎化最先端で危機感から気合い入れて改革したそうで、この挑戦が実を結んだということで、現在、他の地域もこの海士町の政策を真似しよう、となっている。
人口が増える過疎地域という謎の島。
百億円を越える借金を抱え、唯一の高校も廃校寸前。過疎化極まり消滅の危機から、大胆な政策に挑戦して見事に復活。
地方再生、というかコレ、領民を増やす内政チートをリアルにやりやがったぜ海士町! 異世界じゃなくて日本の島で! すげえ!
何をやった?
まずは、海産物のブランド化。五億円もの費用をかけてCASシステムとかいう当時最先端の冷凍保存技術を導入。
これで借金増やして背水の陣。海産物の輸出で利益を出せ。
ブランド岩がき『春香』が都市部や海外で人気得て、数年後には黒字化に成功。
行政に続いて民間も、やるぜ町のブランド化。お次は『隠岐牛』だ。
有限会社『隠岐潮風ファーム』起業、畜産業にチャレンジ。
ミネラル分を多く含んだ草を食べて育つ隠岐牛は、松坂牛に匹敵する高い評価を受けてここでも成功。
次は教育、掲げる目標は『人材の自給自足』
自給自足と言うと農作業スローライフが浮かぶところだけど、人材もまた自給自足できたらいいね。若者とか子供が増えたらいいね。そしてその土地で暮らすことができれば、少子高齢化に歯止めもかかる、と。
島で唯一の高校は生徒数が少なくなり統廃合寸前。この高校が無くなれば、子供が更に島の外へと。学校の消滅は島の未来の消滅。
三町村合同で『隠岐島前高等学校の魅力化と永遠の発展の会』を設立。
地域の課題は産業衰退、若者流出、後継者不足。これを変えるには『人材育成』しか無い。
島が必要とする人材を島前高校で育成する。育った人材が新たな産業を起業する。
仕事があれば若者は定住する。
教育を変えることで島は生き延びる。
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり、と言ったのは武田信玄だが、これをマジにやろうってことらしい。
『仕事がないから帰れない』から『仕事をつくりに帰りたい』への大胆改革。
島外から進学する生徒を受け入れる『島留学』制度の導入、教育寮の設置、地域と連携した探究学習の導入、学校地域連携型公立塾の開設などが次々と行われた。
この島唯一の高校、隠岐島前高校は平成2009年91人だった生徒数が、2018年は179人へと増加。
しかも国内だけでなく、海外からも生徒が『島留学』する高校へと変貌を遂げるという。
隠岐島前高等学校の魅力化プロジェクト、その結果は?
ピコン!
受賞歴
2016.03.09
隠岐國学習センターのICTの取り組みが、地域情報化大賞2015(アドバイザー賞)を受賞しました。
2016.01.03
隠岐國学習センターのICT(遠隔授業)の取り組みが、第2回朝日みらい教育賞(デジタル賞)を受賞しました。
2015.03.31
隠岐島前高校が、文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定されました。
2013.07.25
海士町による取り組み「魅力ある学校づくり × 持続可能な島づくり ~島前高校魅力化プロジェクトの挑戦~」が、第1回プラチナ大賞(大賞・総務大臣賞)を受賞しました
隠岐國学習センターという塾ではIT機器を導入しての授業。そして高校ではシンガポール大学にて、地域課題解決学習を英語でプレゼンテーションと。
地方から発信するグローバル、グローカル最先端の教育施設のある町、海士町。
今じゃ隠岐島前高等学校は、全国から志願者が集まる人気校のひとつになっている。
ただ、これは離島の海士町ならではの奇跡で、日本の他の地域で真似しても上手くいくのかどうか。
島根県、海士町は日本の中では特別なのかもしれない。
現在の生活に満足しているかどうか、というアンケートで、海士町では『満足している』の回答が約75%。
これが全国調査の結果は約55%。
全国と比較しても海士町では生活に満足している人が多い。
生活費についても海士町では『満足している』が約56%。
全国の結果は約37%。
離島であるため島で生産できないものは全て本土から『輸入』しなくてはならないため、物価が安いわけでも無い。
しかし、生活満足度や生活費についての満足度は本土に比べて高い。
理由として考えられるのは、食料自給率の高さ。おすそ分け、などによる相互扶助といった非貨幣経済活動が活発であること。
言ってみれば、『本土で何があろうと、俺たちゃこの島で生きていける』という逞しさが育まれているからではなかろうか?
3000年ほど前には大都市だったという島根。出雲人たちの文化が継承されていて社会が成熟されているという。
その地から現代の人口減少問題解決の切っ掛けが産まれている。
他の日本の過疎地域でも食料自給率が高く、相互扶助の活発なところでは、海士町の真似をして上手くいく可能性がある。
これまで国内で使える人を育てるよりも、海外で人件費の安い人を雇う、という考えで海外自社工場が増えたりしたわけだが。
その結果は国内での偽装の増加に製造業の低迷。
従業員の教育をおざなりにして増えたバイトテロ。終身雇用の崩壊。広まる45歳定年制に非正規雇用。働く意欲を無くして増える引きこもり。
これからは個人で起業できる人材を育てる時代になるのかもしれない。または地域社会を支え、非貨幣経済活動で暮らせる技術の担い手を育てる時代なのかもしれない。
島根県、海士町から日本が活気づき、地方から日本が元気になっていくとおもしろい。
次のリアル内政チートは、何処の過疎地域だ? 遠慮しないで、異世界じゃなくて日本でやってくれていいんだぜ?