最初の夢落ち
宜しくお願い致します。
夢を見た。
前後の脈絡なんてさっぱり分からず、ただただそこに自分がいるのだが、不思議な事に違和感が少しも湧いてこない……まあ大抵の夢なんてそんなもの。
分かるのはココがどこかの森の中、そして目の前に綺麗な泉、そして中央に聳え立つのは見事な彫刻があしらわれた石碑。
その前に俺は『彼女』と一緒に手を繋いで一緒に立っていた。
すでに苦楽を共にした仲間達との別れを済ませ、恩師への最後の墓参りも終えた。
こっちでやり残した事は無い。
万感の思いで彼女と共に石碑を見つめると、その内に石碑は眩いばかりの光を放ち始めて中から現れたように美しい銀髪の女性が現れた。
『本当に、ありがとうございました異界の勇者と大魔導士。貴方方のおかげで世界は救われました。感謝の言葉もありません』
ワケの分からない事を、本当に感謝をしている笑顔で言う女神に対して俺たちは首を振って見せる。
「気にすんなって言うのはアレだけどよ。今となっちゃ、この世界は俺たちにとっても他人事じゃないからな」
「私たちにとっても必要だったから協力した……それで良いんじゃない?」
俺たちがそんな事を言うと女神は『最後まで貴方たちは変わりませんね』と呟いてクスリと笑うと、静かに瞳を閉じて居住まいを正した。
途端にさっきまでの親し気で軟らかい雰囲気だったのが、それだけで神々しさが増す。
『5年前の約定に従い、全て元に戻させていただきます。契約通りに世界救済の礼を一つだけ携えて……』
そう言うと女神が片目だけ薄く開いた。
『どちらもすでにお決めのようですが……本当に“ソレ”でよろしいのですね?』
念を押す女神に俺たちは小さく、しかし迷いなく頷く。
女神はそれを確認すると今度は両目をカッと見開いた。眩いばかりの光を称えて……。
『よろしい……では“ムソウの勇者”“ワスレズの魔導士”……己が存在しうる世界への帰還を』