第7話 アテナ渾身の……
「へーんだ。僕を追放しようったって、そうはいかないよう。代わりに、第7話からペルセウスを追放だー」
さてと。
今回は本文の冒頭を死守した語り部でございます。
それでは早速、続きを語ってまいりましょう。
ここはオリュンポス山の上、美の女神アフロディテの館。
香水やら何やら、男神を惑わせる様々な代物が部屋に高級感を……、と申したいところではありますが、残忍な戦争の神アレスのおぞましいイビキのせいで、それはほとんど台無しになっていたのでございました。美の女神がここにいるとなれば、話は別なのですが……。
ばりーんっ。
「……ん?」
アレスが目を開けると、目の前には、にこやかな顔をしたアテナ女神が立っていました。
「おはよう、アレス」
「お、お前っ……」
「ねえアレス、私のお願い、聞いてくれなあい?」
「ど、どうしたんだよ、いきなり」
アレスが驚くのも無理はありません。というのも、彼はいつも、アテナに会うたびに小突き回されているのですが、その女神が今、見たこともないような色気を振りまいて、迫ってくるのですから。
アテナの掌が、男神の肌へと触れます。
……男神は両の目をつむります。
ああ……、こいつの掌は、こんなに柔らかかったのか……
意識するまでもなく、唇が動き出します。
ああ……、それなら、こっちも……
「グビュウッ……」
なにが起こったのかともうしますと……、アテナ女神の手が男神の顔をガッチリとつかみあげ、呵責容赦なく力を込めはじめたのでございました。
「バーカ、何期待してんだよ」
アテナが手を離すと、アレスの身体は大理石の壁へと飛んでいきました。
どばーん……。
***
「……で、頼みってなんだよ」
甘い香りの紅茶を差し出しながら、アレスは訊くのでありました。
「アフロディテを説得してほしいの」
「……はあ?」
「いやあね、彼女、お妃の言いつけでヘルメスを見張ってるのよ。あんた、アフロディテの愛人ナンバーワンでしょ。だから、彼女を説得してヘルメスを自由にしてあげてほしいのよ」
「あいつ、俺のいないところでヘルメスなんかと会ってるのか」
「ヘラ女神の言いつけでね」
「あ、そうか。ならいいや」
「良くないのよ、私にとっちゃ」
「……お前、いいのか?」
「何が?」
「いや、妃に逆らったりして」
「……」
「心配してくれてるの?」
「……まさか……」
「ラブバード」
「……え?」
「ほら、窓の外」
「ああ……、インコか……」
「私は、大丈夫だから。だってーー」
ーーアレスは私の味方でしょっ。
黄昏系女子の園にほど近い、西の孤島で。
「ねえ、アフロディテ、僕もう、ずっとこうしていたいなあ」
「そうね。それが許されるならいいのにね」
「グヒョエーエ……」
ぼちゃーん……。
「何か、飛んできた?」
「誰か、かもね。ふふふ」
はい。
前書きの呪い、恐るべしですね。次回もお楽しみに。
「ラブバードって、ヒッチコックの映画に出てきたよね。ヘルメス・ムービー・シアターで観た記憶があるよ」
「だから、ヘファイストスだっちゅうのっ」
「うん、だろうね」
「キーッ……」