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47. クリスマスについて考えるネコミミ

 4年2組の教室、12月になり寒さも本格したころ教室の中央にはストーブが置かれ、赤々と燃料を消費しながら室内を暖めていた。

 登校してきた生徒たちは、寒さに凍えた手をかざして暖を取っていた。


「おー、さぶさぶ、あったまるわ~」


 生徒たちはストーブの近くで固まっているせいか、いつもよりその距離は近かった。

 そんな中で、黒川はユキと肩がくっつくほどの距離で座っていた。


「ユキちゃん、あったかいね~」


「あの、もう少し距離を……」


 ユキは困った顔で教室に視線をさまよわせ、ストーブをはさんだ向かい側にいる高坂と目が合った。

 高坂が自分で何とかしろと目で語っていると、後ろから誰かに抱きつかれた。


「高坂~、おっはよー!!」


「貝塚か、重たいからどいて」


 登校してきた貝塚がランドセルを背負った状態のまま、高坂の背中に寄りかかっていた。

 高坂が振り落とそうとすると、貝塚は抵抗するように高坂のほおに手を伸ばした。


「さむかったよぉ~。高坂のほっぺたはやわらくてあったかいねぇ~」


「ひぃぃ、つめたっ!!」


 高坂がその冷たさに悲鳴をあげたところで、担任の安田が入ってきた。


「高坂さん、どうしたの?」


「な、なんでもありません」


 高坂は気恥ずかしさを感じながら自分の席に座った。


 

 昼休みになり生徒たちは、寒い中でも元気に校庭で遊ぶものや、教室の中でゆっくり過ごすもので別れていた。

 貝塚と高坂は、教室の中で向かい合ってすわりながらおしゃべりをしていた。


「ねえねえ、高坂、最近不思議なことがあってさ。ちょっと聞いてくれる?」


「なによ?」


「それがさぁ、家に帰るとあたしの部屋に紙が落ちてるんだよ。これぐらいの大きさのやつ」


 貝塚は手で名刺ぐらいの大きさを示した。


「別に紙ぐらいどこにでもあるじゃない。気づかないうちに床に落ちたんでしょ」


「あたしも最初そう思ってゴミ箱にぽいって捨てておいたんだよ。でもさあ、次の日も、そのまた次の日もまた同じ紙が落ちてるんだよ。しかも、最近じゃ、その数も増えてきた!!」


「だ、だれかのイタズラでしょ」


 高坂は不安そうな顔をしながら、貝塚の話を聞いた。


「でもさ、うちには父さんと母さんしかいないし、そんなことするような人いないんだよ」


「じゃ、じゃあ、誰かが忍びこんで……」


 高坂は貝塚のうちに誰かが泥棒にはいってきたのかと想像して身震いした。


「いや、毎日はいってきてなにもとらずにゴミだけおいていくとか? なにがしたいんだよ、そいつ」


「それも、そうね」


「でさ~、今朝、とうとうその原因をつきとめたんだ」


「ああ、それで今日は時間ギリギリにきたのか」


「うん、ぎりぎりまで粘って自分の部屋の様子を見張ってたんだ。なんとなく今日来そうな予感がしてたんだよ」


 高坂はいつも一緒に登校する貝塚が、今日は先に行くようにいわれたことを思い出していた。


「で、見ちゃったんだ……」


 貝塚はもったいぶるように言葉を切った。


「紙がなにもないところから、突然でてくるところを!! これって超常現象だよね!!」


「……気のせいよ、気のせい。そんなオカルトなことなんてあるわけないでしょ。まったく、心配して損した」


「なんだよぉ~、動画にとってネットに上げてみようぜ~。なんか面白い反応くるかもしれないし」


「いやよ、めんどくさい」


 貝塚は高坂にせがむが、高坂はため息をついていた。



「ねえ、ユキちゃんはクリスマスっておうちで過ごすの?」


 黒川とユキも教室に残っており、黒川の質問にユキは首をかしげた。


「はて、クリスマスとは?」


「クリスマスは12月25日にサンタさんがやってきて、子供にプレゼントを配ってくれる日なんだ。その前の日のクリスマスイブには、クリスマスを祝ってパーティーを開いたりするんだよ」


「はあ、そのサンタとやらは何が目的でそのようなことを……。スラムなどで配給をおこなう慈善事業のようなものでしょうか?」


「えっと、ちがくて、サンタさんの正体は、その……、ただのいい人だよ」


 クラスに聞いている人がいるかもという配慮から、黒川はサンタの正体をにごした。


「でね、クリスマスイブの日が空いてたら、えっと、一緒にどうかな~って思ってさ」


「初めての経験ですが、できることがあるならお手伝いさせていただきます」


「ほんと? やったあっ!! プレゼントはなににしようかなぁ~。やっぱり手作りの何かがいいのかな、そうだ、帰ったらすぐに作らないと~」


 黒川はユキの返事を聞いて、その場でくるくると踊りだし、その意識はクリスマスに向かい黒川は一人の世界に入っていた。


「プレンゼントはサンタとやらが配るのでは? えっと、春奈?」


「なにがいいかなぁ、マフラー? 手袋? 帽子はむずかしいだろうし……」


 トリップした黒川の意識が戻ってこなかったが、とりあえず黒川がプレゼントを用意するようなので自分もそうしようとユキは考えた。

 

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